モルディブ情勢

平成27年1月29日

1.最近の出来事

2014年7月1日 - 8月31日

2014年5月1日 - 6月30日

2014年3月1日 - 4月30日

2014年1月1日 - 2月28日

過去の出来事

2011年12月~2013年12月

モルディブ2014年7~8月主な動き

1 内政
1)司法・ジェンダー省の新設を含む省庁再編
ア 7月1日,ヤーミン大統領は,司法・ジェンダー省を新設した。同省は,家族,児童,女性,障害者及び人権問題を所掌する。従来,これらの事項は,保健・ジェンダー省が所掌していた。新設の司法・ジェンダー省は,アニル司法長官が統括する。
イ 同日,大統領は,保健・ジェンダー省を保健省に改名した上で,シャキーラ保健・ジェンダー相を保健相に任命した。保健省は,保健部門を所掌する。一方,8月11日,国会でシャキーラ保健相の就任が否決されたため,翌12日,大統領は同大臣を解任した。以来,保健相ポストは空席のままとなっている。
(2)他のイスラム国における内戦への参加に関する宗教問題相の見解
最近のモルディブ人義勇兵によるシリアでの戦死報道を受けて,7月2日,サイード宗教問題相は,最近のイスラム諸国における内戦は正式なジハードではなく,モルディブ人は,他のイスラム国における内戦に参加すべきでない旨の声明を発出した。
(3)モルディブ進歩党(PPM)による国会での単独過半数確保
7月9日,モハメド・アブドゥラ議員が野党共和党(JP)から与党PPMに移籍したため,PPMは国会85議席中,43議席,即ち過半数を確保することになった。また,モルディブ開発連合(MDA)と合わせた連立与党としての議席数は48に達した。対する野党モルディブ民主党(MDP)の議席数は23,JPの議席数は12。
(4)選挙管理委員会による少数政党の再登録
本年2月,選挙管理委員会は,党員数3000人を政党の要件とするとの最高裁の命令を受けて,党員数3000人以下の8政党を解散させたが,7月3日,同委員会は,最高裁の新たな命令を受けて,解散させた政党を再登録した。
(5)独立記念式典の開催中止
7月14日,大統領府は,支出削減の観点から,本年の独立記念式典を中止する旨発表した。
(6)大統領による検事総長の任命
7月22日,大統領は,前日の国会での承認を受けて,ムシン刑事裁判所判事を検事総長に任命した。なお,大統領はムシン刑事裁判所判事と,自身の甥に当たるハミード弁護士の両名を検事総長候補として国会に提案していたが,後者については国会独立機関監督委員会の審査で能力不足と判定された。検事総長ポストは,昨年11月にムイズ検事総長が辞任して以来,空席となっていた。
(7)モルディブ・日本友好議員連盟会長の選出
7月23日,今期国会開会後,初のモルディブ・日本友好議連総会が開催され,アハメド・シアム・モルディブ進歩党(PPM)議員が会長に選出された。
(8)独立記念日に際するヤーミン大統領の声明
英国による植民地支配からの独立記念日(7月26日)を前に,25日夜,大統領は国旗掲揚式において演説して,数年に及ぶ政治的混乱が収束して,人々はようやく平和な日々をおくり始めたが,一部野党は再び騒乱を引き起こそうとしている,各政党は国民調和を最優先に考えてほしいなどと訴えた。また,各種開発事業を進めて,雇用創出や経済の自立を目指したいとも述べた。
(9)断食月明けの祝日(イード)に際する大統領のメッセージ
7月27日,大統領は,イードの到来を祝うとともに,パレスチナの人々の窮状を憂い,イスラエルによる非人道的な攻撃を非難するメッセージを発出。 
(10)大統領による公安委員会委員の任命
8月13日,大統領は,国会による承認を受けて,ファティマト・サリーラ・アリ・シャリーフ委員長ほか計3名の公安委員会委員を任命した。前任の委員らの任期は7月で終了していた。
(11)野党系オンラインメディア記者の行方不明事件
ア 8月8日未明以来,ミニヴァン・ニュースのアハメド・リルワン記者(フルマレ島在住)が行方不明になっており,警察が行方を追っているが,発見にいたっていない。同記者の家族やミニヴァン・ニュース,モルディブ人権委員会は,同記者は行方不明になる前に脅迫や圧力にさらされていたと主張。
イ 8月20日,国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は,本件事件は,最近のモルディブでのギャング抗争を取材した多数の記者らが何者かに脅迫されているさなかに発生しており,懸念している旨の声明を発出した。
(12)野党モルディブ民主党(MDP)の役員選挙
8月29日,MDPの役員選挙が行われ,ナシード元大統領が党首(President)に再選された。またアリ・ワヒード元国会議員が会長(Chairperson)に選出された。

2 経済
(1)経済特区法案に係る国会審議
政府提案の,海外投資誘致や輸出促進のための経済特区設置・運営に係る法案が,7月14日以来,国会で審議された。野党モルディブ民主党(MDP)及び共和党(JP)は,政府の汚職に繋がる,あるいは外国企業に土地の所有を認めているのは問題であるなどと反発して,断続的に審議をボイコットするなどしたが,同法案は,8月17日に国会経済委員会で,また27日に国会本会議で賛成多数により可決された。9月1日,大統領が同法案を承認して,正式に成立した。 
(2)独探査船による海底油・ガス田探査開始
シャイニー漁業相によれば,8月12日,独探査船「ソンネ」号が,ラーム環礁及びカーフ環礁沖で油・ガス田探査を開始した由。同探査船からの報告書は来年3月までに政府に提出される予定。
(3)政府による財政法修正案の国会提出
8月21日,政府は,政府による借入れに係る国会の事前承認を不要として,90日以内の事後報告のみで足りるとする,財政法の修正法案を国会に提出した。

3 外交
(1)我が国
7月30~31日,高村日本スリランカ・モルディブ議連会長一行がモルディブを訪問した際,マシーハ国会議長,マニク国会副議長及びシヤム・モルディブ日本議連会長らと会談。双方は,議員交流を強化していくこと一致した。
8月25日,モルディブを訪問中の参議院ODA調査団はヤーミン大統領と会談。同調査団の団長である榛葉議員は,日本のODA政策についてブリーフした。これに対して大統領は,同国の社会・経済開発政策について説明した。
(2)スリランカ
7月1日,ザヒヤ・ザリール新駐スリランカ大使が,ラージャパクサ大統領に信任状を奉呈した。同大使は,ガユーム政権下で保健相や教育相を歴任した。
8月6~10日,ワヒード警察長官がスリランカを訪問した。同長官は,滞在中,イランガクーン・スリランカ警察長官らと会談した。
8月25日,W. G. N. H.ディアス新スリランカ大使がヤーミン大統領に信任状を奉呈した。
(3)ロシア
ア 7月5日,モルディブ当局は,クレジットカード詐欺容疑で米国に指名手配されていたロシア人のセレズニョフ容疑者を逮捕して米当局に引き渡した。9日,大統領は,米国の情報機関がモルディブ国内で逮捕したとの報道は誤りであり,インターポールの赤手配書に基づきモルディブ当局が逮捕した旨述べた。
イ 同容疑者はロシア人の有力政治家の子息であったこともあり,同政治家やロシア政府が今回のモルディブ当局の対応を問題視した。こうした事態を受けて,7月11日,マウムーン外相は,アニル司法長官とともにロシア大使館の高官と面談し,今後,同様の事態の再発を防ぐための合意を結ぶことで一致した。
(4)イスラエルによるガザ侵攻
7月12日,野党MDPが首都マレで,イスラエルによるガザ攻撃に対する非難集会を開催。
7月13日,大統領は,パレスチナ自治区のアッバス議長との電話会談で,モルディブ政府はイスラエルによる暴力に対する国際的非難を喚起するためのあらゆる努力を行う旨述べた。同日,マウムーン外相もガザ地区における衝突の即時停止を求める旨の声明を発出。
7月23日,人権理事会の特別セッションにおいて,パレスチナにおけるイスラエルによる人権侵害を受けた独立調査委員会の設置に係る決議案が可決され,モルディブは同決議案の共同提案国となった。
7月25日,政府はイスラエル製品の禁輸措置を導入した。アハメド税関局長は同日以降,全てのイスラエル製品は税関局が押収する旨述べた。
8月9日,地元メディア各社が中心となってガザの住民への募金運動(ヘルプ・ガザ募金)が立ち上げられ,政府や各政党,企業などの募金などにより,17日までに2200万ルフィア(約1億4千万円)が集まった。
(5)シンガポール
7月29日~8月4日,ヤーミン大統領夫妻はシンガポールを私的に訪問。
(6)ニュージーランド
8月7~8日,マッカリーNZ外相がモルディブを訪問した。同外相は7日,ヤーミン大統領やマウムーン外相と会談した。双方は,小島嶼国として声を上げていく必要性を強調した。
(7)中国
ア 8月14~20日,大統領は,ユース・オリンピック開会式典に出席するために南京を訪問した。
イ 16日,大統領は,南京にて習近平国家主席と会談した。習主席は,ヤーミン大統領は,「一つの中国政策」及び平和・共存五原則への支持を表明するとともに,習主席の海上シルクロード政策を賞賛した。習主席は,モルディブは海上シルクロード政策の中で重要な役割を果たし得る国であり,モルディブの港湾開発や海洋保護といった分野で協力したいとの意向を示した。
ウ その後,双方の代表団をも交えた二国間会談が実施され,続いて,マウムーン外相と高虎城中国商務大臣が,1億元(約16億円)の無償資金協力を含む経済・技術協力合意,及びモルディブ警察への150台の車両提供に係る交換書簡に署名した。
(8)南アジア地域協力連合(SAARC)
8月19~22日,新たにSAARC事務局長に就任したタパ前ネパール外務次官がモルディブを訪問した。同事務局長は21日に大統領やマウムーン外相と会談して,11月のSAARC首脳会議(於 ネパール)に向けた準備状況などを説明した。
(了)

 


モルディブ2014年5~6月主な動き

1 内政
(1)シャミーム副検事総長による辞任
ア 昨年11月,ムイズ検事総長が,自身に対する不信任決議案が国会に提出される直前に辞任したが,これに続いて,5月5日には,シャミーム副検事総長が,自身を検事総長代理として認めず,一向に刑事案件の審理を再開しようとしない刑事裁判所の対応を不服として辞意を表明した。
イ 一方,最高裁は,5月15日,刑事裁判所からの照会に対して,「必要性の原則」から,たとえ検事総長と副検事総長が不在であっても,その時点で検察庁の最高位の者が任命するいかなる検察官も裁判で検察庁を代表することができるとの見解を示した。
(2)検事総長ポストの再公募
5月7~15日,政府は,昨年11月以来,空席となっている検事総長ポストの再公募を実施した。6月2日,ヤーミン大統領は,応募のあった7名の内,ムフタズ・ムシン刑事裁判所判事及び自身の甥にあたるマームーン・ハミード弁護士を検事総長候補に選出して,国会に承認を求めた。ただし,ハミード弁護士については,4月に一度,大統領が検事総長候補に指名したものの,国会で否決された経緯がある。
(3)性的嫌がらせ法案の成立
5月13日,ヤーミン大統領は,4月27日に国会で可決された性的嫌がらせ法案,性犯罪法案を承認し,これらの法案が成立した。
(4)新国会の開会
ア 5月28日,第18期国会が開会した。3月の選挙で新たに選出された85人の国会議員が,アハメド・ファイズ最高裁長官の立会いの下,就任宣誓を行った。
イ その後,国会議長,副議長の選出が行われ,最大与党モルディブ進歩党(PPM
)公認のマシーハ議員が43票を獲得して議長に就任した。連立与党共和党(JP)のガーシム党首は野党モルディブ民主党(MDP)議員らの支援を得たものの39票と一歩及ばなかった。また副議長については,野党MDPのマニク議員が42票を獲得して,PPMのアブドッラ議員を1票差で下した。
ウ 6月9日,マシーハ国会議長は,ニハン最大与党PPM議員団長を与党院内総務に,また,ソリ最大野党MDP議員団長を野党代表に任命した。
(5)最大与党モルディブ進歩党(PPM)による共和党(JP)との連立解消
ア 5月28日に開会された国会で,連立与党の公認候補がほかにいるにも関らず,ガーシムJP党首が国会議長に立候補したことを受けて,同日,PPMは,これは連立合意違反であるとしてJPとの連立解消を発表した。
イ 5月29日,アハメド副大統領は「PPMとJPは反MDPということで連立を組んできたが,今回,ガーシムJP党首は国会議長になろうとしてMDPと手を結んだ,JPが連立から抜けても政権運営にまったく問題はない」旨述べた。
ウ 5月29日,ヤーミン大統領は,JP出身のアミーン・イブラヒム運輸・通信相のほか,同じく同党出身のアドナン国防担当国務相,ズベイル運輸・通信担当国務相,アリ・ハミード外務副大臣らを更迭した。
エ 一方,6月4日と16日,それぞれ共和党(JP)出身のイブラヒム環境・エネルギー相とサイード経済開発相がPPMに移籍した。また,無所属議員1名とJP所属国会議員2名,さらには野党MDP所属国会議員1名がPPMに鞍替えしたことにより,6月末時点で,PPMは,国会の全85議席の内41議席を,またMDAの5議席とあわせて連立与党として45議席を占めることとなった。対する野党MDPの議席数は1議席減の24議席,JPの議席数は2議席減の13議席となった。
(6)ガユーム政権による民主化プロセス開始10周年
マームーン外相は,当時のガユーム政権が民主化プロセスを開始して10周年にあたる6月9日,政府は,国民とともに民主制度強化に取組んでいく旨の声明を発出した。
(7)ナシール内務相に対する裁判
ナシール内務相は,2012年2月7日の反政府デモに際して,デモ参加者を扇動して国防軍司令部に押し入らせた容疑で起訴されているが,6月17日,刑事裁判所で,同大臣の出席の下で公判が開かれた。同公判において同大臣の弁護団は,本件裁判の棄却を求めたが,裁判所側はこれを認めず,次回公判を7月1日とした上で,一旦,休廷した。
(8)各種国会常設委員会の与野党構成を巡る議論
ア 6月16日,国会の各種常設委員会のメンバー構成を決める選定委員会が設置され,与野党間での協議が開始された。政府与党案では,各種常設委員会において連立与党が過半数を占めることとされたため,野党モルディブ民主党(MDP)や共和党(JP)は強く難色を示したものの,最終的には,各委員会で与野党の構成比は変えないものの,各委員会の委員数を与野党ともに拡大することで決着が図られた。
イ これを受けて,6月30日には,各常設委員会毎の投票により,各委員会の委員長・副委員長が選出されたが,野党MDP議員が行政監督委員会副委員長と請願委員会副委員長に選出された他は,全ての委員会の委員長・副委員長ポストを連立与党が独占した。
(9)運輸・通信省の廃止
6月19日,ヤーミン大統領は,運輸・通信省を廃止した。これに伴い,国内空港は観光省の管轄下に,その他の運輸部門は経済開発省の管轄下に,また,通信部門は内務省の管轄下に置かれることになった。5月29日にヤーミン大統領がイブラヒム運輸・通信相を更迭して以来,運輸・通信相は空席のままであった。
(10)野党モルディブ民主党(MDP)の総裁選挙
6月24日,MDPの総裁選挙への立候補が締め切られ,ナシード元大統領・MDP暫定党首と,アリ・ワヒード元国会議員の2名が届け出を行ったことが発表された。本件総裁選挙は8月29日に実施される。
(11)アリ・ハミード最高裁判事に対する婚外性交渉疑惑
昨年,アリ・ハミード最高裁判事とされる人物が婚外性交渉を行っている映像がネット上にリークされたことを受けて,司法部門委員会(JSC)が調査を行っていたが,6月25日,JSCは,警察当局は本件映像に移っていた男性をハミード最高裁判事と断定することはできなかったとして,同判事に対して何らの措置も取らないことを決定した。
(12)ラマダン(断食月)の開始
6月28日,ヤーミン大統領は,ラマダンの開始を受けて,聖なる月を信心深く過ごすように呼びかける国民向け声明を発出した。

2 経済
(1)マレ島におけるクリーン・エネルギー促進計画の完成式典
5月14日,日本の支援によるマレ島におけるクリーン・エネルギー促進計画の完成式典がタリク環境大臣出席の下で,執り行われた。同計画の下,幾つかの政府官舎に太陽光パネルが設置された。
(2)世銀による世界経済の見通しに関する報告書
世銀が6月10日に発表した報告書によれば,本年のモルディブの経済成長率は,中国人観光客の更なる増加などにより,昨年の3.7%から4.5%に増加する見通しである由。
(3)5月末までの歳入状況
6月14日に発出されたモルディブ歳入庁の統計によれば,観光物品・サービス税(T-GST)の増税などにより歳入が増加して,本年5月末で44億ルフィア(約290億円)に達した由。前年同時期の歳入は37億ルフィア(約244億円)。
(4)政府によるインド企業GMRとのマレ空港運営委託契約破棄問題
2012年11月にワヒード政権(当時)がインド企業GMRとのマレ空港運営委託契約を期間半ばで破棄したことに関して,6月18日,シンガポールに設置された仲裁法廷は,政府とGMRとの契約は当初から有効なものであったが,モルディブ側が政治的な動機によりこれを破棄した旨裁定した。一方,同法廷はモルディブ側に課される賠償金額についてはいまだ決定していない。
(5)マレ島・フルマレ島間橋梁建設事業
6月24日,サイード経済開発相は,本件事業に関して,中国企業3社が詳細な計画案を提出したと述べた。今後,同3社の間で競争入札が行われる予定。
(6)本年5月末までの観光客数
7月1日,観光省が発表した統計によれば,本年5月末までに51万8千人の観光客がモルディブを訪れ,前年同月比で11.9%増を記録した。また,同期間中,日本からは1万4千人が訪問した。

3 外政
(1)日本
5月13日,粗大使がマームーン外相と会談した。マームーン外相は,4月の大統領による訪日時に示されたホスピタリティに謝意を表した。
(2)インド
ア 5月8日,来訪中のビクラム・シン・インド陸軍司令官がヤーミン大統領を表敬した。
イ 5月26~27日,ヤーミン大統領は,モディ新首相の就任式に出席するためにインドを訪問した。26日,大統領は,南アジア各国首脳らとともにモディ新首相の就任式に出席した。翌27日,大統領はモディ新首相と会談した。同会談で大統領はモルディブの外交政策を立案する際,インドの利益に最大限の敬意を払う旨述べた。同日,大統領はムカジー・インド大統領とも会談した。
(3)スリランカ
ア 5月19日,ヤーミン大統領は,国会の承認を受けて,ザヒヤ・ザリール元教育相を駐スリランカ大使に任命した。
イ 6月25~27日,ラージャパクサ大統領がモルディブを公式訪問した。25日,両国大統領のテタテ会談に続き,代表団をも交えた公式会合が開かれた。その後,両国間で,保健分野に係る協力,スリランカ投資庁とモルディブ経済開発省との協力,及び遭難者の捜索・救援に関する覚書が署名された。同日夜にはヤーミン大統領夫妻主催晩餐会が催された。
翌26日には,合同記者会見が実施され,両国外相が15日にスリランカ南西部で発生した宗派間暴動などについて発言した。
(4)中国
ア 5月18日付ハヴィールオンライン記事によれば,最近のシハブ・マレ市長の訪中に際して,マレ市と広東省深せん市との間で姉妹都市協定が結ばれた。
イ 6月4~9日,アハメド副大統領は第2回中国-南アジア展示会・開会式及び第9回中国-南アジア・ビジネスフォーラム(於 雲南省)に出席するために訪中した。副大統領は,6日,汪洋中国副首相と,また8日,Li Jiheng雲南省知事とも会談した。
(5)パキスタン
ア 5月19日,大統領は,国会の承認を受けて,ジャリール元国防軍司令官(少将)を駐パキスタン大使に任命した。
イ 6月2日,サイヤド・サイル・アッバス新パキスタン大使がヤーミン大統領に信任状を奉呈した。
ウ 6月11日,アリ大統領府報道官は,10日から予定されていた大統領によるパキスタン訪問が延期された旨述べた。11日付パキスタン紙は,治安状況の悪化を受けて,モルディブ大統領は訪問をキャンセルした旨報じた。
(6)シリア
ハヴィール・オンラインによれば,5月25~26日にかけて,シリアで反政府武装集団とともに戦っているモルディブ人グループ「ビラド・アル・シャム・メディア」のメンバー2名が戦闘で死亡した由。
(7)米国
ア 6月20日,米国務省が発出した人の密輸年次報告書において,モルディブが「レベル2監視対象」から「レベル2」に格上げされた。
イ 6月22日,ケシャップ国務省次官補代理がモルディブを訪問した。同次官補代理はマームーン外相やマシーハ国会議長と会談した。
(8)国連
ア 5月6日,外務省と在マレ国連事務所は,国連事務所の建物に構造的な欠陥が見つかったために,国連各機関は4月末をもって同建物から退出して,マレ市内に分散して業務を継続している旨の声明を発出した。
イ 5月29日,アハメド・サリール国連代大使は,国連待機制度への貢献に係る覚書に署名した。これにより,モルディブは軍事監視要員や平和維持要員を派遣することが可能になる。
(9)EU
6月3日,クカンEU選挙監視団長がマームーン外相を訪問して,3月22日の国会議員選挙に関する最終報告書を提出した。
(10)第17回非同盟諸国(NAM)外相会議
5月26~29日,アルジェリアで開催された本件会議に,アリ・ナシール・モハメド外務次官が出席した。
(11)イスラム諸国会議機構(OIC)外相会議
6月18~20日,OICの第41回外相会議(於 ジッダ)が開催され,マームーン外相が出席した。
(12)アジアサッカー連盟(AFC)チャレンジカップ
モルディブが5月19~30日にホストした本件サッカー・トーナメントでは,モルディブは3位と健闘した。
 (了)

 


モルディブ2014年3~4月主な動き

1 内政
(1)ヤーミン大統領による国会演説
3月1日,大統領は,憲法規定に従い,本年最初の国会審議で演説して,経済の建て直し,財政状況の改善,若者の雇用創出などに取組む意向を示した。
(2)最高裁による選挙管理委員会(選管)委員長に対する禁固刑判決
ア 2月中旬に,最高裁が4人の選管委員を召喚し,法廷侮辱罪及び判決不履行の嫌疑をかけたのに続き,3月9日,最高裁は,同判決不履行を理由にタウフィーク選管委員長に対して3年間の執行猶予付きで6か月間の禁固刑を言い渡した。また,同委員長とファヤズ副委員長の委員資格を取り消した。
イ これに対して,3月10日,シャヒド国会議長とナジム副議長は,憲法上,選管委員は国会の多数決によってのみ解任されうるのであり,今次判決は違法である旨の書簡を大統領,最高裁長官及び検事総長宛に発出した。また,米,英,加,インド,国連,EU,英連邦など主要各国・機関も,今次判決は選管の独立性を侵害するもので,来る国会議員選挙プロセスにも悪影響を及ぼしうるとの懸念を表明した。
(3)新選管委員の任命
最高裁が選管委員長及び副委員長の委員資格を取り消したために,選管の定足数が満たされなくなり,政府が,代わりの選管委員候補を複数指名して国会の承認を求めていたところ,3月12日,国会はハビーブ元選管事務局長の選管委員就任を全会一致で承認した。翌13日,ハビーブ氏は大統領により正式に選管委員に任命された。これで選管委員は3名となり,定足数は満たされた。
(4)国会議員選挙の実施
ア 3月22日,国会議員選挙の投票が概ねスムーズ且つ平和裏に行われた。29日の選管による最終結果発表によれば,モルディブ進歩党(PPM),共和党(JP)及びモルディブ開発連合(MDA)からなる連立与党が過半数(43議席)を遙かに上回る53議席を獲得した。一方,野党モルディブ民主党(MDP)は伝統的に同党が強い都市部で議席を減らし,26議席に留まった。
イ 有権者数は240,652人,総投票数は189,642票(男性95,744票,女性93,898票)で,投票率は78.08%であった。首都マレ市の投票率は65%を下回り,他の地域に比べてかなり低かった。
ウ 候補者302人の内,188人が党の公認候補者で114人が無所属候補者であった。また女性候補者23人の内,5人が当選した。
エ 3月23日,アハメド副大統領は,連立与党による勝利は,国民によるヤーミン政権への信任を意味すると述べた。一方,24日,野党MDPのナシード元大統領は,同党の敗北について自身及び党幹部に一定の責任があることを認め,新たな党幹部を迎えて党を強化する必要があるとした。
(5)当選した国会議員による党籍変更
3月27日,無所属で当選した議員2名が与党PPMに入党した。また,31日,さらに1名の無所属議員及び野党MDPの公認候補として当選したムスタファ氏がPPMに移籍した。これにより同党の議席は37に,また連立与党の議席は57となり,全85議席の3分の2に達した。一方,野党MDPの議席は1議席減の25となった。今次選挙の当選者らは,5月28日に開会する国会に出席する。
(6)イスラム政党正義党(AP)の動向
3月25日,ザヒールAP報道官は,APからは12名が立候補したが当選したのは1名のみであった,APは連立与党の一員ではないが,今後も政府を支持していく旨述べた。 
(7)国会議長職を巡る連立与党内の不和
3月25日,連立与党共和党(JP)党首のガーシム議員が,国会議長に立候補すると発表したのに対して,翌26日,アディーブ観光相兼連立与党PPM副党首が,PPMも候補者を擁立すると発言した。本件を巡る両党間の調整は4月下旬に入っても進まず,4月28日,ガーシムJP党首は野党MDPのナシード元大統領と会談して,自身の国会議長就任に向けて協力を要請した。
(8)野党MDPの党首交代
4月1日,MDPの中央評議会が開催され,選挙での敗退の責任を取ってマニク党首が辞任し,ナシード元大統領が暫定党首(Interim President)に就任した。同党は6月6~7日に党総会を開催し,新党役員を決定する。
(9)新刑法案・マネーロンダリング対策法案の可決
4月1日,国会で,新刑法案及びマネーロンダリング対策法案が賛成多数により可決され,さらに13日には大統領が同2法案を承認し,正式に成立した。
(10)国会における新検事総長候補の否決
4月14日,大統領のいとこにあたるハミード弁護士による検事総長就任が国会で否決された。何人かの連立与党議員が海外訪問中であったために,連立与党は,承認に必要な過半数の票を集めることができなかった。
(11)アリ・ハミード最高裁判事に対する婚外性交渉疑惑
昨年,婚外性交渉の映像が何者かによりリークされたハミード判事について,4月14日,司法部門委員会(JSC)は,本件映像に関して調査する第三者委員会を設置した。また,汚職対策委員会(ACC)は,その前の週に2223ルフィア(約1万5千円)の公金を使い込んだ容疑で同判事を刑事訴追した。
(12)死刑実施規則の公示
4月27日,捜査及び死刑実施に関する規則が公示され,ナシール内務相は,同日以降死刑が実施される旨述べた。これに対して国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)やEUが,人道的観点からモラトリアムの維持を促す声明を発出した。
(注:モルディブでは死刑制度は存在するも,1953年以来,実施されていない。)
(13)今期国会の終了
4月28日,シャヒド国会議長は,第17次国会の最終日に際して会見を行い,5年間の会期中に266法案を審議し,115法案を可決したと述べた。

2 経済
(1)フルマレ島における住宅建設
3月1日,政府は,都市部の住宅問題解消に向けて,マレ島近郊のフルマレ島に1100戸住宅を建設するとして,入居希望の受付を開始した。1100戸の内,385戸はインド輸銀からの融資で,残りは中国輸銀からの融資で建設される予定。
(2)年金の支給
3月3日,年金庁は,大統領の公約どおり,65歳以上の国民への年金を月額2300ルフィア(約1万5500円)から5000ルフィア(3万3600円)に引き上げて支給したと発表した。また,28日,大統領は,漁師に対する月1万ルフィア(約66000円)の補助金支給に向けた準備を進めていることを明らかにした。
(3)政府とインド企業GMRとの調停
一昨年末のモルディブ政府によるGMRとの契約破棄を受けた,両当事者間の第1回目の調停審議が4月10~16日,シンガポールの調停裁判所で行われた。GMRは政府に対して14億ドルの損害賠償を請求している。
(4)新中央銀行総裁の就任
4月14日,国会は,アダム中銀副総裁による総裁就任を承認した。前任のナジーブ総裁は本年1月,個人的な理由で同職を辞していた。国会の承認を受けて,20日,大統領は,アダム女史を新総裁に任命した。
(5)イブラヒム・ナシール(マレ)国際空港拡張計画
4月20日,経済閣僚会議の共同議長であるガフール観光大臣は,シンガポールのチャンギ空港グループが本件空港の拡張計画を統括することになるとの見通しを示した。また同大臣は,滑走路の拡張は中国関係者と協議が行われており,新ターミナルの建設については日本企業と契約を結ぶ計画であると述べた。
(6)シンガポールでのモルディブ投資フォーラムの開催
4月25日,シンガポールにおいて,ヤーミン大統領の出席の下,モルディブ投資フォーラムが開催された。翌26日,大統領は,外国投資家の最大の関心は空港への投資であった,また,多くの企業がモルディブ北部での積荷積替港の開発にも関心を示したと述べた。
(7)空港サービス料の値上げ
4月27日,国会は外国人訪問客に対する空港サービス料を18米ドルから25米ドルに値上げする法案を賛成多数で可決した。同法案は5月5日に大統領が承認して成立した。この値上げは7月1日から実施される。
(8)統計局の設置
4月28日,大統領は,財務省の下に統計局を設置した。またこれに伴い,運輸・通信省傘下の国家情報技術センター及び国家文書資料館が統計局の下に移設された。同様に内務省傘下の国民登録局も統計局下に移設された。
(9)観光客数の増加
4月29日の観光省の発表によれば,1~3月までの観光客数は前年同月比で9.4%増の321,561人に達した。その内,最も多かったのは中国人観光客で前年同月比24%増の87,530人が来訪した。

3 外政
(1)米国
3月1日に発出された米国務省の国別人権状況報告書は,昨年の最も重要な人権問題は,最高裁による大統領選挙プロセスへの介入であったとした。
(2)人権理事会
マームーン外相は,3月3日,第25回人権理事会(ジュネーブ)のハイレベルセグメントで演説し,モルディブによる民主化努力を強調した。また3日にバン・ギムン国連事務総長と,4日にマダニ・イスラム諸国機構(OIC)事務局長,ピレー人権高等弁務官及びアニファ・マレーシア外相と会談した。
(3)シンガポール
ア 3月5~8日,ヤーミン大統領は非公式にシンガポールを訪問した。
イ 4月25日,投資フォーラムに出席するため,シンガポールを訪問中のヤーミン大統領は,シャンムガム・シンガポール外相の表敬を受けた。
(4)インド・スリランカ・モルディブ3か国海洋安保協力会合
3月6~7日,ニューデリーで本件会合が開催され,モルディブからナジム国防相が出席した。3か国は,海上監視協力,海賊対策,海上事故,海洋汚染に繋がる事故に際する協力,海上犯罪取締りなどについて協議した。
(5)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書に対するコメント
4月1日,IPCCの最新報告書が発出されたことを受けて,マームーン外相は,本報告書が,9月のNYでの気候変動サミットに向けて,必要な取組を加速するための推進力となるべきである旨述べた。
(6)サウジアラビア
4月4~10日,ヤーミン大統領夫妻は,ウムラ巡礼(断食月以外のメッカ巡礼)のために非公式にサウジアラビアを訪問した。
(7)スリランカ
ア 4月14日,国会は,ザヒヤ・ザヒール元教育相による次期駐スリランカ大使就任を承認した。
イ マームーン外相は4月25日から27日までスリランカを訪問。25日,ピーリス外相と会談して,1月のヤーミン大統領による同国訪問のフォローアップを行った。また26日にはラージャパクサ大統領を表敬した。
ウ 4月26日,スリランカを訪問中のガユーム元大統領及びマームーン外相は,英連邦議長であるラージャパクサ大統領が主催した英連邦の文化的多様性を祝う行事に出席。
エ 4月29日,デラ駐マレ・スリランカ大使が,ヤーミン大統領に離任表敬を行った。
(8)中国
4月10日,マームーン外相と王福康(Wang Fukang)中国大使は農業調査計画に係る協力合意に署名した。同合意に基づき,中国は,モルディブの農業セクターのために100万元(約1600万円)を贈与する。
(9)パキスタン
4月15日,パキスタン政府はモルディブ警察に対して,47のコンピューターシステムを供与した。
(10)我が国
ア 4月8日,マレを訪問中の粗大使は,マームーン外相を表敬した。双方は,両国間の協力をさらに強化する方途について意見交換した。
イ 4月14~17日,ヤーミン大統領が日本を公式訪問した。滞在中,大統領は,天皇陛下との御会見,安倍総理との首脳会談・安倍総理主催夕食会,主要閣僚による表敬,日・モルディブ議連主催朝食会,在日モルディブ人との交流といった行事を精力的にこなした。
ウ 首脳会談では,環境,防衛・海洋安保,漁業・観光業,インフラ開発,通信・放送,人的資源開発と青年の人材育成,防災・気候変動,貿易・投資といった分野について話し合われ,会談後には共同声明が発出された。
エ 経済面では,大統領は,日立社長,JBIC総裁,JICA副理事長と会談したほか,モルディブ投資フォーラムやモルディブ観光促進レセプションにも出席。
オ 大統領には,マームーン外相,シャリーフ大統領府付大臣,サイード経済開発相,アブドゥル・ガフール観光相らが同行した。
(了)

 


モルディブ2014年1~2月主な動き

1 ヤーミン新政権の動向
(1)外交政策の発表
1月20日,ヤーミン大統領は,同政権の外交政策を発表した。同政策では,モルディブの国家主権及びイスラム国としてのアイデンティティを守ることに主眼が置かれている。また,各国平等の原則に基づき,あらゆる国々と相互尊重に基づく友好関係を構築するとしている。
(2)歳入法案の可決
2014年度予算執行の前提となる各種歳入増加策に係る法案を可決させるため,政府は1月14日の閉会中審査を皮切りに野党モルディブ民主党(MDP)との折衝を本格化させた。その結果,2月4日,国会において「観光法」修正案及び「物品・サービス税法」修正案が可決された。これらの修正法案は2月6日,ヤーミン大統領が署名して成立し,これにより,観光ベッド税の11月までの徴収継続,12月からの観光関連物品・サービス税の増税といった歳入増加策が導入されることになった。
(3)国民医療費支援制度の導入
2月24日,ヤーミン大統領は,選挙公約に従い,国民の医療費を無制限に支援する新制度フスヌバ・アサンダを立ち上げた。これまでのナシード政権やワヒード政権は,支援額に限度を設けたり,本件制度の適用を国立病院での治療に限定したりするなど一定の制限を設けていた。
(4)ヤーミン政権発足100日記念式典
2月25日,ヤーミン政権就任後100日を記念する式典が開催され,ヤーミン大統領や閣僚らが出席した。同式典では,上述の国民医療費支援制度の導入など,ヤーミン政権が100日間の間に達成した成果が強調された。

2 地方評議会選挙
(1)1月18日に全国の環礁・島/市評議会議員を選出する地方評議会議員選挙が実施された。前回同様,マレ市やアッドゥー市など都市部では,野党モルディブ民主党(MDP)が勝利したが,大半の環礁・島評議会では連立与党が勝利した。一方,投票率は約50%と,昨年11月の大統領選挙時と比べてかなり低かった。
(2)2月26日,地方評議会選挙で選出されたマレ市評議会議員らが就任宣誓を行った。その後の第1回市評議会会合において,シファブ・モハメド元教育相がマレ市長に選出された。

3 国会議員選挙
(1)3月22日の国会議員選挙に向けて,1月29日から2月11日まで立候補が受けつけられた。国会85議席に対して無所属も含めて合計316人が立候補を届け出た。連立与党及び野党MDPはそれぞれ全85選挙区に候補者を擁立した。また連立与党と候補者の調整がつかず単独で選挙を戦うイスラム政党正義党(JP)は13人の候補を登録した。
(2)2月17日,選管は最終的な有権者名簿を公表した。今次選挙の有権者数は約24万人。選管は2月18~28日,職場付近の投票所など,有権者名簿に登録された場所以外で投票を希望する人々からの投票先変更希望を受け付けた。

4 刑事裁判所による裁判案件の受理停止
(1)昨年11月のムイズ検事総長の辞任を受けて,ヤーミン大統領は,自身のいとこにあたるマームーン・ハミード弁護士をその後任に指名して国会の承認を求めていた。憲法上,新検事総長は前任の辞任から30日以内に任命される必要があるが,国会はこれを承認しないまま,12月末から2月末まで閉会してしまった。このような事態を受けて,1月8日,刑事裁判所は,全事件に係る審理を一時停止する旨発表した。
(2)その後,同裁判所は,最高裁の命令を受けて既に受理した件の審理を再開したが,新たな件の受理は依然拒否している。2月13日,シャミーム副検事総長は,犯罪容疑者を起訴することができず,196人の容疑者が勾留されたままとなっていると述べた。

5 選挙管理委員会(選管)に対する法廷侮辱罪容疑
2月12日,最高裁は,タウフィーク選管委員長ほか全選管委員を召喚し,法廷侮辱罪の嫌疑をかけるとともに,同嫌疑について説明するように命じた。最高裁は,選管が同裁判所を批判し,その名誉を汚すような発言を繰り返していると指摘した。また,最高裁の命令に背いて,選管が党員1万人未満の少数政党を解散させたことも問題として挙げた。2月25日,在スリランカEU代表部は,今次最高裁の動きは選管の独立性を侵害し得るとして懸念を表明した。

6 野党モルディブ民主党(MDP)議員に対する裁判
2月20日,刑事裁判所は,MDPのジャビル国会議員に対して懲役1年の判決を下した。今回の判決は,同議員が2012年11月に飲酒容疑で逮捕された後,尿検査を拒否したことに対するもの。2月26日,同議員は,これを不服として高裁に控訴した。なお,1年以上の懲役刑が確定した場合,同議員は3月の国会議員選挙への立候補資格を失うことになる。

7 ワヒード前大統領の転身
1月19日,ワヒード前大統領は,シンガポールの国立リー・クワンユー行政政策大学から客員フェローとして招かれたところ,同招きを受けることにしたと明かした。前大統領は,今後1年間,毎月約1週間は同大学で教鞭をとる由。

8 有力政治家らによる党籍変更
(1)リヤズ・ラシード・モルディブ国民党(DQP)党首代理:1月9日,リヤズ・ラシード議員・DQP党首代理が,与党PPMに入党した。同氏はDQP出身の唯一の国会議員であったため,これによりDQPの議席は消滅した。
(2)リヤズ前警察長官:1月30日,リヤズ前警察長官がJPに入党した。リヤズ前長官はJPの公認候補として3月の国会議員選挙に立候補している。

9 アフラシーム・アリ・モルディブ進歩党(PPM)国会議員殺害事件
2012年10月1日にアリ議員がマレの自宅近くで刺殺された事件に関して,1月16日,刑事裁判所はフマーム容疑者に死刑判決を下した。同容疑者は昨年5月の第1回目の公判で容疑を認めたが,その後の公判では,一転して容疑を否認していた。

11 野党モルディブ民主党(MDP)議員襲撃事件
2月1日夜,アルハン・ファハミMDP議員が,マレで覆面をした集団に襲われ,背中をナイフで刺された。同議員は,2日未明のうちにスリランカの病院に移送され,治療を受けていたが,3月1日,モルディブに帰国した。本件事件に関し,警察は容疑者2人を拘束し,襲撃に使われたと見られる刃物も押収したと発表した。またMDPほか各党が襲撃を非難する声明を発出した。 

12 死刑の実施に係る閣議決定
モルディブではこれまで慣例的に死刑は執行されてこなかったが,1月にナシール内務相が刑務所・矯正局に対して死刑執行の準備を進めるように指示して以来,死刑の実施を巡る議論が再び,活発化した。慎重派と推進派がメディアを通じて意見を戦わせる中,2月9日,閣議において死刑の実施が承認されるとともに,関連手続法の立案,早期成立を目指すことが決定された。

13 マレ島・フルマレ島間橋梁建設
1月14日,サイード経済・開発相は,本件事業案の募集が12日に締め切られたところ,中国企業11社,インド企業2社を含む19社が事業案を提出した,今後さらに絞り込みを行い,8月には1社を選定して事業を開始したい旨述べた。

14  国際関係
(1)インド
ア 1月1~4日,ヤーミン大統領は就任後初の公式外国訪問としてインドを訪問した。2日にはシン・インド首相との間で首脳会談が行われ,会談後,医療目的でインドを訪問するモルディブ国民の査証免除やマレにあるインディラ・ガンディー記念病院(IGMH)の改修といった合意事項をとりまとめた共同声明が発出された。同日夜にはムカジー大統領主催晩餐会も催された。滞在中,ヤーミン大統領は,アンサリ副大統領,クルシード外相,アントニー国防相,メノン国家安全保障顧問,スワラージュ野党代表らとも会談した。
イ 2月19~21日にモルディブを訪問したクルシード・インド外相は,20日に南アジア地域協力連合(SAARC)閣僚理事会に出席した後,マームーン外相と二国間会談を実施した。双方は,1月のヤーミン大統領によるインド訪問時の合意事項の進捗を確認した。クルシード外相はまた,インドが1100万ドルをかけて建設したモルディブ国立大学観光学部校舎の引渡し式やモルディブ国防省に対する上陸艇の贈呈式にも出席した。
(2)中国
1月5~6日,劉振民(Liu Zhenmin)中国外務副大臣がモルディブを訪問した。同副大臣は6日,ヤーミン大統領を表敬して中国への訪問を招請したほか,イナヤ外務副大臣率いるモルディブ代表団と「第5回モルディブ・中国外交対話」を実施した。双方は,観光・文化交流,女性・青年育成,貿易・投資といった分野での協力強化について協議した。
イ 1月9日,在マレ中国大使館の査証部が開設され,Wang Fukang中国大使とマームーン外相の立会いの下,記念式典が実施された。
(3)スリランカ
ヤーミン大統領は,1月21~23日にスリランカを公式訪問した。22日のラージャパクサ・スリランカ大統領との首脳会談では,ヤーミン大統領から新政権の取組や課題を説明した。また,同大統領は,国際場裡でのスリランカに対する確固たる支持・支援を確約した。同会談後,両首脳の立会いの下,警察間協力やスポーツ協力に関する覚書が署名された。
(4)米国
昨年来,米国がモルディブ政府に対して,モルディブ領域内で訓練に参加する米軍の地位に関する協定(地位協定)の締結を求めていたことに関して,1月22日,スリランカを訪問中のヤーミン大統領は,記者の質問に対して,同協定を結ぶ考えはないと答えた。またシャリーフ大統領府付大臣は,インドやスリランカもモルディブが米国と同協定を結ぶことを望んでいないと述べた。
(5)アハメド副大統領による中東歴訪
1月29日~2月6日,アハメド副大統領は,カタール,クウェート及びサウジアラビアを歴訪して,財政支援やモルディブにおけるイスラム教普及に対する協力を求めた。1月30日,カタールのカリファ・アル・ターニ首相は,財政支援及びイスラム大学設置に向けた協力を確約した。また,2月2日,クウェートのサバーハ首長は,マレ国際空港拡張を支援することに強い関心を示した。
(6)パレスチナ
2月21日,マリキ・パレスチナ外相がモルディブに到着した。23日には,マームーン外相率いるモルディブ代表団との公式会談が行われ,両国関係をさらに強化する方法について話し合われた。マームーン外相は,パレスチナ問題の解決を支持・支援する決意を改めて表明した。
(7)サウジアラビア
ア 2月14日,ジッダを訪問中のナジム国防相とスゲイル民間航空局副局長が両国間の直行便就航に関する覚書に署名した。
イ 2月28日,サルマン皇太子兼首相兼国防相がマレを訪問し,ヤーミン大統領ほかと会談した。同会談では,海賊,麻薬の密輸対策,資金洗浄対策など安全保障上の協力が強調されたほか,経済・貿易交流などについて話し合われた。
(8)アジア開発銀行(ADB)
1月23日,モルディブを訪問中の張文才(Wencai Zhang)ADB副総裁がジャミール・アハメド副大統領を表敬した。双方は,現在計画中及び実施中のADBの諸案件について意見交換した。
(9)南アジア地域協力連合(SAARC)
17~20日,モルディブはSAARC閣僚理事会をホストした。今次会合のテーマ「地域的な強靭性に向けて」の下,貧困問題や域内貿易の活性化など地域横断的課題について話合われた。また,オブザーバー国との協力のあり方を含むSAARCの機構改革についても協議された。参加各国は,3月からネパールのタパ外務次官がSAARC事務局長に就任することを承認した。
(了)