当国情勢

平成28年11月1日

2016年10月1日‐10月31日

1 内政

(1)汚職捜査を巡る動き

 ア 大統領による汚職捜査当局に対する不満表明
12日,大統領が,軍人に住宅・土地を提供する式典において,「警察犯罪捜査局(CID),財務犯罪捜査局(FCID)及び収賄・汚職疑惑捜査委員会(CIABOC)が政治的意図に基づいて捜査を行うなら,自分は是正措置を取ると首相や閣僚に伝えた。CIABOCによる起訴を受けて9月30日にゴタバヤ・ラージャパクサ前国防次官や元海軍司令官らが法廷に召喚されたことは受け入れられない」などと発言したことを受けて,18日,ディルクシ・ディアス・ウィクラマシンハCIABOC局長が大統領に辞表を提出した。翌19日,大統領は,同辞表を受理するとともに,ジャヤシンハCIABOC副局長を局長に任命した。

 イ マヘンドラン前中央銀行総裁の汚職疑惑
21日,国会国営企業監視委員会(COPE)の協議が開かれ,計14名が出席。内,人民解放戦線(JVP)及び統一人民自由連合(UPFA)の8名の議員は,マヘンドラン氏が中央銀行総裁であった当時,国債の入札において深刻な不正が行われ,中央銀行に重大な損失が生じたとの内容のCOPE委員長の報告書を承認。
 28日,COPEは,昨年2月27日に行われた国債の売却は,透明性に欠ける形で行われ,中央銀行の信頼低下に繋がった,マヘンドラン前中央銀行総裁は同事案に直接介入しており,これに対する法的処置及びこのような事案の再発防止のためのメカニズムの設置を勧告する,また同事案において,国債を買い占めて巨大な利益を得た「Perpetual Treasuries社」への捜査を求めるとの内容の最終報告書を国会に提出した。
 31日,統一野党は, CIABOCに対し,マヘンドラン前中央銀行総裁及び同総裁を任命したウィクラマシンハ首相に対する捜査を求めた。

(2)ハンバントタ港開発計画
 スリランカ政府は,南部州ハンバントタ港の開発に関し,中国企業の招商局港口(China Merchants Holdings)に港の80%の株式, ひいては港の運営権を与える官民連携に基づく合意を結ぶ旨決定した。同港開発のために約14億万ドルの中国融資が投入されたが,その内,約11億万ドルは,招商局港口への株式(equity)に切り変えられる。

(3)新大統領警備顧問の任命
 5日,ニマル・ルキ元警察特別タスクフォース(STF)司令官・元北部州方面警察総監が,新大統領警備顧問として任命された。

(4)統一野党による大規模反政府集会の開催
 8日,サバラガムワ州ラトナプラ県で,統一野党による大規模反政府集会が開催され,ラージャパクサ前大統領が出席した。前大統領は聴衆に対し,現政権は,国を二分化しようとしており,我々の権利を無視する憲法を改正しようとしている,このような政府を一緒に倒そうと呼びかけた。

(5)付加価値税(VAT)関連法案の可決
 26日,国会はVAT関連法案を,賛成112票,反対46票,棄権65票で可決した。統一野党及び人民解放戦線(JVP)が反対票を投じ,サンパンタン野党代表を含むタミル国民連合(TNA)議員は棄権した。

2 国民和解

(1)ラサンタ・ウィクラマトゥンガ元サンデーリーダー紙編集長暗殺を巡る動き
 14日,ラサンタ・ウィクラマトゥンガ元サンデーリーダー紙編集長が暗殺された事件を巡り,容疑者として勾留中の人物とは別の元軍諜報部職員が,編集長の暗殺を自供し,勾留中の容疑者の釈放を求める文書を残し,自殺した。

(2)LTTE容疑者を射殺した少佐に賠償命令が下される
 18日,裁判所は,1998年10月26日にLTTE関与疑惑で勾留中であったロバート・ウェリント氏が,北部州ジャフナ県の軍基地から逃走しようとした際に射殺された事件で,殺人容疑で有罪判決を受けていたウィマル・ウィクラマージェ少佐に,ウェリントン氏の遺族に対し,計200万ルピーの補償を支払うよう命じた。

(3)警察によるジャフナ大学学生射殺事件
 21日,2名のジャフナ大学学部生がパーティー出席後にモーターバイクで帰宅途中,警察の一時停止の合図を無視したことで発砲を受け,死亡した。同事件を受け,22日,タミル国民連合(TNA)は,サンパンタンTNA代表がシリセーナ大統領に善処を申し入れたとの声明を発表。同日,同事件に関与したとされる5名の警察官が逮捕された。
24日, CID及び国家警察委員会(National Police Commission: NPC)が同事案調査のため,ジャフナに向けて出発。
25日,北部州でハルタルが行われた。また,ジャフナ大学学生が,ジャフナ県役場の前で抗議集会を開いた。なお,同日,北部州キリノッチ県で警察官が,ジャフナ大学学部生死亡事件を受けて抗議を行っていた集団を解散させようとしたところ,割れたボトルで攻撃を受けた。

3 外交

(1)ウィクラマシンハ首相のニュージーランド訪問
 9月30日~10月3日の日程でウィクラマシンハ首相がニュージーランドを訪問。1日,ウィクラマシンハ首相はキー首相と会談し,相互に大使館を設置することに合意したほか,経済・貿易を促進するとともに,酪農に関する技術協力を強化することで一致した。同日,ウィクラマシンハ首相は,オークランド動物園を訪問し,スリランカから寄贈された象のアンジェリーを視察。また,スリランカ・ニュージーランド・ビジネス会議で講演し,スリランカへの投資を呼びかけた。さらに,ウィクラマシンハ首相は,オークランドでスリランカ・コミュニティーと交流した。

(2)ウィクラマシンハ首相の印訪問
 4~6日にかけて,ウィクラマシンハ首相が印を訪問。5日にはスワラージ印外相,ガカリ印道路交通・ハイウェー・海運大臣及びプラダン印石油大臣と協議を行い,ムカルジー印大統領を表敬した。翌6日にモディ印首相を表敬。その後,ウィクラマシンハ首相,サマラウィーラ外相,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣,フェルナンド通信・デジタルインフラ大臣は印経済サミットに出席し,スリランカへの投資を呼びかけ,また,印との経済技術協力合意(ETCA)を今年中に締結させる旨をモディ印首相と確認した,ETCAはスリランカ経済発展において重要である旨述べた。
 ウィクラマシンハ首相には,首相夫人,エカナヤケ首相府次官,ラトワッテ首相上級顧問,アタウダヘッティ首相府次官補,パナボッカ外務省東アジア・大洋州局課長が同行した。

(3)シリセーナ大統領のアジア協力対話サミット出席
 7日朝,シリセーナ大統領は8日~10日の間,バンコクで開催されるアジア協力対話サミット(Asia Corporation Dialogue Summit:ACDサミット)に出席するため,タイに到着し,空港でウィラ・ローポチャナラット・タイ文化大臣による出迎えを受けた。
 翌8日,シリセーナ大統領はチャンオチャ・タイ首相を表敬。チャンオチャ首相は,シリセーナ大統領のACDサミットへの出席に謝意を示し,貧困撲滅に向けたアジア地域の協力の必要性を述べた。これに対し,シリセーナ大統領は,二国間関係は,両国が信仰する小乗仏教でより確固たるものとなっている,自然災害時のタイからの支援に感謝すると述べた。なお,チャンオチャ・タイ首相は,シリセーナ大統領の汚職撲滅及び和解促進に向けた姿勢を歓迎する旨を示し,スリランカの経済発展に向け協力すると述べた。
 10日,シリセーナ大統領は,ACDサミットで,アジア地域は近い将来新たな金融ハブとなる,新興国のスリランカは,高所得国となるべく尽力しており,経済開発を促進すべく,多くの大規模プロジェクトを実施していると講演。同日,シリセーナ大統領は,ハサン・ロウハーニー・イラン大統領と協議を行い,友好に基づいた二国間関係強化に意欲を示し,近々イランを訪問したい旨述べた。

(4)クリスタ・マルクワルデール・スイス連邦大院議長の当地来訪
 マルクワルデール・スイス連邦大院議長が当地を来訪し,7日,国会を訪問し,ジャヤスーリヤ国会議長を表敬した。その後,マルクワルデール議長は,サンパンタン野党代表を表敬した。同議長は8日と9日にキャンディーを訪問し,10日にスリランカを出発した。

(5)ヘッティアーラッチ国防次官の中国訪問
 9日,第7回アジア・太平洋地域安全保障フォーラム(Xiangshan Forum:10日~12日)及び第2回中国・スリランカ防衛協力ダイアローグ(12日~15日)に出席するため,ヘッティアーラッチ国防次官が中国に向けて出発。第2回中国・スリランカ防衛協力対話では,二国間関係における防衛関係の重要性につき協議が行われ,対話終了後,中国からスリランカに対し,1億2千万中国元相当の軍事支援及び沖合警備艇の贈呈を行う旨の合意が締結された。

(6)リタ・イザック国連少数問題特別報告者の来訪
 10日~20日にかけ,イザック国連少数問題特別報告者が,民族的・宗教的・言語的少数民族の現況を調査するために当地を来訪。
 20日,イザック国連少数者問題特別報告者は,スリランカ政府に対し,短期的提案として,独立した少数民族権利保障メカニズムの設置,憲法改正を行い,少数民族の権利を明記する,国家人権委員会,国民和解局及び和解調整事務局の強化を提言した。また,政府の和解へのコミットメントとして,土地の解放、政治犯の釈放,軍の権限の縮小につき言及した。同特別報告者の最終報告書は来年3月の人権理事会に提出される。

(7)ジャヤスーリヤ国会議長,サンパンタン野党代表他の中国訪問
 10日,中国政府の招待を受け,ジャヤスーリヤ国会議長,サンパンタン野党代表,カルナティラカ国会改革・マスメディア大臣,プレマジャヤンタ科学・技術・研究大臣,ハキーム都市計画・上水大臣,デヴァナンダ・イーラム人民民主党(EPDP)党首が中国に向けて出発した。

(8)シリセーナ大統領のBRICS会議出席
 15日,シリセーナ大統領は,印ゴアで開催されるBRICSアウトリーチ会合出席のため,コロンボを出発。
 16日,シリセーナ大統領はモディ印首相と二国間協議を行い,モディ首相は,スリランカとの関係強化に意欲を見せた。同日,シリセーナ大統領は,スーチー・ミャンマー国会最高顧問と協議を行い,スーチー国会最高顧問のこれまでの民主主義への戦いに敬意を示した。これに対し,スーチー・ミャンマー国家最高顧問は,スリランカの民主主義における変化を称え,シリセーナ大統領が主導する政治改革に期待していると述べた。同じく同日,シリセーナ大統領はプラチャンダ・ネパール首相と協議を行い,プラチャンダ首相は,スリランカのネパールにおける仏教寺院の建設等への支援に謝意を示した。シリセーナ大統領はトブゲー・ブータン首相とも協議を行い,トブゲー首相は,スリランカとブータンの友好関係は,仏教的哲学が基礎となっている,ブータンは,仏教教育の分野での支援を期待していると述べた。これに対し,シリセーナ大統領は,トブゲー首相を,来年のヴェサックに招待した。
 17日,シリセーナ大統領は習近平中国国家主席と協議を行い,スリランカは中国と,国際問題及び地域問題について連絡・調整を強化したい旨伝えた。これに対し,習国家主席は,二国間の関係は深まりつつある,中国は今後も継続してスリランカとの伝統的な友好関係を維持すると述べた。また,特に,貿易,港運営,インフラ,港周辺地区の産業地域開発,生産能力強化及び国民生計向上の分野で協力関係を深めることを求めた。同日,シリセーナ大統領はプーチン露大統領とも協議を行い,プーチン露大統領は,スリランカへの継続的な支援を約束した。これに対し,シリセーナ大統領は,露のこれまでの支援及び国連人権理事会でのスリランカの立場への支持に謝意を表し,二国間関係強化の重要性を指摘した。

(9)ウィクラマシンハ首相のベルギー訪問
 15日~20日にかけ,EUによる一般特恵制度(GSP)プラスの復活について交渉するため,ウィクラマシンハ首相がベルギーを訪問。17日には,ロラン・ベルギー皇子を表敬し,ドナルド・トゥスク欧州理事会議長と協議を行った。
 18日,ウィクラマシンハ首相はフェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表と,スリランカ政府の和解政策及び国連人権理事会決議の実施にむけた取組・成果に関する協議を行った。同上級代表は,現政府の功績及び改革を称え,GSPプラス復活への申請を歓迎した。同日, EUはスリランカへの開発援助として2020年までに計2千万ユーロを拠出する旨を発表。これは,2007年から2013年の間にEUからスリランカに拠出されていた支援額からの50%増しである。
19日,ウィクラマシンハ首相はジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長を表敬。同委員長は,スリランカの連立政府は民主主義及び良い統治促進に向け,正しい方向に進んでいる,和解や平和促進も行われており,GSPプラス復活には様々な方法があると述べた。ウィクラマシンハ首相は現政権の民主主義的権利の保障に向けた取組を説明した。
20日,ウィクラマシンハ首相はシャルル・ミシェル・ベルギー首相を表敬し,現政権のこれまでの取組を説明した。これに対しミシェル首相は,ここ数年,弱まっていた二国間関係強化に努める,多くのベルギー投資家は民主主義,社会正義及び人権強化への道を進んでいるスリランカに興味を示している,また,スリランカのGSPプラス復活を支援すると述べ,一方でベルギーが国連安全理事会非常任理事国に立候補するとして支持を求めた。

(10)セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣他のパレスティナ訪問
 セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣(スリランカ・パレスティナ友好連盟代表)率いる国会議員の一行がパレスティナを訪問し,リヤド・アル=マルキ・パレスティナ外相と協議を行った。アル=マルキ外相は,スリランカのパレスティナに対する支持,また,コロンボのパレスティナ大使館の修繕に向けた金銭的支援及び土地の提供を受けたことに謝意を表した。

(11)ジャイシャンカル印外務次官の当地来訪
 22日からジャイシャンカル印外務次官が3日間の公式訪問のため,当地を訪問した。目的は印ビジネス及び投資促進。

(12)ジャヤセカラ・スポーツ大臣の訪日
 ジャヤセカラ・スポーツ大臣が東京で開催されたスポーツ・文化に関する世界フォーラムに出席し,21日には,松野文部科学大臣を表敬した。

(13)サマラウィーラ外相のインドネシア訪問
 環インド洋地域協力連合(IORA)閣僚級会合に出席するためにインドネシアを訪問したサマラウィーラ外相は26日,ルトノ・マルスディ・インドネシア外相と協議を行い,二国間の政治的及び経済的関係を強化することで一致した。

(14)シリセーナ大統領のタイ訪問
 30日,シリセーナ大統領は,先日,プミポン・タイ国王が死去したことを受け,弔問のために,タイを日帰りで訪問した。シリセーナ大統領には,ラージャパクサ司法・仏法大臣が同行した。

(15)スリランカ海軍船艦の印親善寄港
 スリランカ海軍沿岸警備艇2隻が22日に訓練を兼ねた親善訪問のために印コーチン港に寄港し,28日に出港した。

(16)バングラデシュ沿岸警備艇の親善寄港
 25日,バングラデシュ沿岸警備艇二隻が,コロンボ港に親善寄港し,27日に出港した。

(17)シリセーナ大統領のグテレス新国連事務総長へのメッセージ
 グテレス新国連事務総長が選出されたことを受け,シリセーナ大統領は,2015年1月の大統領選挙以降,スリランカは国連との意義のある関係修復・強化に向け尽力してきた,その結果,スリランカと国連の間では実りのある協力関係が築かれており,この関係は,新国連事務総長の下でも維持されることを期待しているとの内容の声明を発表。

(18)中国科学アカデミーとの覚書の締結
 保健・栄養・伝統医療省と中国科学アカデミーとの間で,慢性的腎臓疾患の原因究明において協力するとの覚書が締結された。