当国情勢
平成28年8月1日
2016年7月1日 - 7月31日
1 内政
(1)新中央銀行総裁の就任
2日,シリセーナ大統領が,著名なエコノミストのインドラジット・クマラスワミー氏を新中央銀行総裁に任命する旨を発表。クマラスワミー氏は,英国ケンブリッジ大学卒業後,英国サセックス大学で博士号を取得。中央銀行及び財務省で勤務した後に,英国ロンドンにある英連邦事務局で経済問題担当部長(Director of Economic Affairs)を務めた人物。ロイヤル・カレッジではウィクラマシンハ首相の一学年後輩であり,ラグビーでスリランカ代表選手として活躍した経験も持つ。新中央銀行総裁の任命を巡っては,ナンダラール・ウィーラシンハ中央銀行副総裁を推薦していたシリセーナ大統領と,チャリタ・ラトワッタ元財務省次官を推薦していたウィクラマシンハ首相の間で意見対立があり,揉めていた。
(2)UNPとSLFPの統一内閣を巡る動き
ウィクラマシンハ首相は21日,国会で,統一国民党(UNP)とスリランカ自由党(SLFP)の連立による統一内閣は,次の5年間,継続されると述べた。同日,ディサナヤケSLFP幹事長及びハシムUNP幹事長は,合同記者会見で,同じく,統一内閣は次の5年間継続されるとの見解を示し,2大政党は強い協力関係にある旨を強調した。
(3)コロンボ・ポートシティーを巡る動き
ウィクラマシンハ首相が,コロンボ・ポートシティー建設計画再開に向け,当初の計画より2ヘクタール広い,計262ヘクタールの土地の埋め立てを提案する計画を閣議に提出した。追加の2ヘクタールは,新政権が工事を差し止めていたために損害が生じたとして中国企業側から請求されていた1億千3百万ドルの賠償金を相殺するためのもの。
(4)中国のハンバントタ港開発関与を巡る動き
易先良(Yi Xianliang)駐スリランカ中国大使が,ウィクラマシンハ首相の4月の中国訪問のフォローアップの一貫としてハンバントタ港を訪れ,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣及びアムヌガマ特別事業大臣と,ハンバントタ港開発への中国企業の関与及びスリランカ政府の中国政府への負債の一部を経営権(equity)に変更させる可能性等につき協議を行った。易中国大使一行のハンバントタ港訪問後,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,サンデーオブサーバー紙に対し,中国政府が「一帯一路」に基づき,特別経済地域(Special Economic Zone: SEZ)設置に向け,ハンバントタの計1万5千エーカーの土地を要請した,同要請に関しては,来週スリランカを訪れる中国代表団が協議を行う,ローンを組むと,多額の借金の返済に追われることになるため,中国政府から投資の形での支援を期待していると述べた。現在スリランカは,中国から計80億ドルの借金を抱えている。同代表団は,中国・スリランカ自由貿易協定についても協議を行う予定。サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣によると,同自由貿易協定は,茶,宝石,ゴム、ココナツ及びスパイス等に焦点をあてる由。
(5)ETCAに向けた協議の開始
サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣によると,印との経済技術協力合意(ETCA)の起草に向けた協議が,8月9日~10日にコロンボで開催される。本件で協議を行うスリランカ側の交渉団は,今後,シンガポールや中国との自由貿易協定に関する協議にも参加する。また,8月2日~4日にかけて,スリランカ・中国自由貿易協定に関する協議を行うため,中国から政府代表団が来訪を予定している。
(6)モラガハカンダ・ダムの完成
25日,シリセーナ大統領とウィクラマシンハ首相は,モラガハカンダ・カルガンガ潅漑開発プロジェクトの一貫として建設されていた主要ダムの開幕式典に出席した。同プロジェクトはシリセーナ大統領が農業大臣を務めていた2007年に開始され,2012年に完成を予定していたものの,現在は2018年に完了を予定している。同プロジェクトが完成した暁には,トリンコマリー,ポロンナルワ,マータレ,アヌラーダプラの計82,000ヘクターの土地への水の供給が可能となり,乾燥地域の慢性腎臓疾患問題の解決にも貢献すると期待されている。
(7)デング熱の流行
デング熱が流行しており,ここ6ヶ月の間で,患者数が2万2千799名に到達。その内,40名が死亡した。患者数の47%は西部州に集中しており,コロンボでは,患者数が7千369名。当局は蚊の駆除を強化している。
2 ラージャパクサ前政権関係者を巡る動き
(1)統一野党が陰の内閣を発足
7日,統一野党は,50名で構成される陰の内閣(shadow cabinet)を発足した旨発表した。ラージャパクサ前大統領が陰の首相・国防大臣・仏法大臣に任命され,陰の内閣の長となった。この他にも,ディネーシュ・グナワルダナ人民統一戦線(MEP)党首が陰の国家政策・経済大臣,チャマル・ラージャパクサ元国会議長が陰の交通・航空大臣,ナマル・ラージャパクサSLFP議員が陰の外務大臣,ウダヤ・ガンマンピラ・ピヴィトル・ヘラ・ウルマヤ(PHU)議員が陰の治安大臣,ドゥラス・アラハッペルマSLFP議員が陰の教育・国会大臣,クマラ・ウェルガマSLFP議員が陰の港湾・海運大臣,バンドゥーラ・グナワルダナSLFP議員が,陰の財務大臣,ウィマル・ウィーラワンサ国家自由前線(NFF)党首が,陰の住宅・エンジニア大臣,ラメッシュ・パティラナSLFP議員が陰の保健・伝統医療大臣,パヴィトラ・ワンニアラッチSLFP議員が陰の社会進出促進大臣,及びギータ・クマラシンハSLFP議員が陰の環境大臣に任命された。
しかしながら7日,ラージャパクサ前大統領は,統一野党の陰の首相・国防大臣・仏法大臣として任命されたことにつき,自身は関心がないとして,自身の名前をはずすように要請した。
(2)シリセーナ大統領と統一野党所属のSLFP議員との協議
アマラウィーラ統一人民自由連合(UPFA)幹事長によると,シリセーナ大統領は,25日夜に統一野党議員と協議を行い, SLFPを分裂させるような行動を慎むよう,伝えた。また,統一野党に所属するSLFP議員に対し,SLFPを支持しないのであれば,地区責任者の地位を解任する,地方選挙の前に,SLFP内を再編成すると伝えた由。
(3)統一野党による反政府デモ
ア 27日,キャンディー治安判事は,統一野党がキャンディー市内で計画している反政府デモに関し,同日に同市内でUNPが党集会を開催する予定であるとして,双方の衝突を避けるべく,反政府デモはキャンディー市郊外から行うように指示した。
イ 28日,統一野党がキャンディー郊外からコロンボに向かう反政府デモを開始。ラージャパクサ前大統領も参加し,現政権は,VATの引き上げなど,公約を守らずに,国民の負担になる政策ばかりを行っている,警察も独立性を失いつつあるとして強く批判した。
(4)ナマル・ラージャパクサ議員の逮捕・保釈
11日,ラージャパクサ前大統領の長男である,ナマル・ラージャパクサSLFP議員が逮捕された。同議員には,2013年に,ラグビー・トーナメントのために使用されるはずであった7千万ルピーを,私的に流用した疑いがかかっている。同議員は18日に保釈された。
(5)バシル・ラージャパクサ前経済開発相の起訴
15日,コロンボ高等裁判所は,保釈中のバシル・ラージャパクサ前経済開発相(ラージャパクサ前大統領の弟)を,3千3百万ルピー相当の農村開発用資金を昨年1月の大統領選挙資金として流用した疑いで,起訴した。これを受けて18日,警察財務犯罪捜査局(FCID)がバシル前経済開発相を逮捕した。
(6)ウダヤ・ガンマンピラ統一野党議員の保釈
1日,ウダヤ・ガンマンピラ統一野党議員が保釈された。同議員は、偽装した文書を用いて、豪富豪のブライアン・ジョン・シャディック氏の資産の一部を売却し,そこから得た利益を着服した疑いで,6月18日に逮捕されていた。
3 国民和解
(1)ジョージ・マスターの釈放
4日,コロンボ治安判事長(Chief Magistrate)は,LTTEのテロ活動を支援したとして拘留されていたヴェルピライ・ダヤニティ(通称:ジョージ・マスター)の釈放を命じた。同人物はLTTEで通訳を務めていた。
(2)閣議が証人保護法の修正を承認
6日,閣議は,2015年に可決された証人保護法を修正し,被害者及び証人が通信・映像機器を通して国外から証言を行うことを可能とすることを決定した。同法は5月16日にすでに施行されている。
(3)シリセーナ大統領の発言
8日,シリセーナ大統領は,内戦中の人権侵害疑惑の追及に関し,外国人判事の参加を認めない姿勢を改めて強調し,スリランカの自由、独立及び領土を脅かすいかなる試みも許さないとの姿勢を示した。これを受け,ドゥジャリック国連事務総長広報担当官は13日,人権侵害疑惑の追及に関し,国際社会とスリランカの間で合意された内容が尊重されることを望むと述べた。
(4)サマラウィーラ外相の発言
6日,サマラウィーラ外相は,第32回人権理事会出席後の記者会見で,スリランカ政府は,真実和解委員会を設置した後に,人権理決議で指摘された紛争中の人権侵害事案にかかる責任追求に取り組む,2017年1月か2月までには責任追及メカニズムのあり方について,国内での意見統一を図ることが可能だと考えると述べた。また,現政権は,和解が開発において一番重要な要素であると認識していることもあり,人権理決議案の共同提案国となったことで,スリランカ政府が和解に関するメカニズムの制度設計を自ら行うことが可能となったと述べた。
(5)ウィクラマトゥンガ元サンデー・リーダー紙編集長の暗殺を巡る動き
15日,2009年のウィクラマトゥンガ元サンデー・リーダー紙編集長暗殺に関与した疑いで,軍諜報員が逮捕され,27日までの拘留が決定した。同諜報員には,ウィクラマトゥンガ元編集長の運転手を誘拐し,勾留した疑いがかけられている。
(6)トリンコマリー県クマラプラム地区のタミル住民殺害事件の判決
27日,アヌラーダプラ高等裁判所は,1996年に東部州トリンコマリー県クマラプラム地区で24名のタミル住民を殺害したとして起訴されていた,6名の元スリランカ軍伍長に無罪判決を言い渡した。同事案を巡っては,計107名が証言を行っており,6名は計101回起訴されていた。
4 外交
(1)サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣の印訪問
4日~5日の間,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣がシタラマン印商業・産業大臣の招待を受け,印を訪問。シタラマン印商業・産業大臣,スワラージ印外相,プラダン印石油・天然ガス大臣,シンハ印鉄道大臣及び印トップ企業のCEOと協議を行った。シタラマン印産業・商業大臣との協議では,二国間の貿易強化につき協議を行い, ETCAに向け,継続して調整を進める旨で合意した。
(2)王毅中国外相の来訪
8日から3日間の予定で,王毅中国外相がスリランカを来訪。8日,王毅中国外相とサマラウィーラ外相は外相会談を実施した。会談にはスリランカ側からカルナナヤケ財務相,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易相及びパリハッカラ前北部州知事・元外務次官ほかも同席した。会談後,両外相は,共同記者会見を実施。王毅外相は,共同記者会見で,中国・スリランカ協力は,いかなる第三国をもターゲットにしておらず,中国・スリランカそれぞれの対外関係にも影響を与えない旨確約した。
8日,王毅外相による表敬を受けたシリセーナ大統領は,中国政府が,腎臓病患者のための特別病院を建設してくれていることに謝意を表し,このような善意の措置は,両国関係を一層緊密にする旨述べた。王毅外相は,コロンボ・ポートシティ建設計画再開に向けたシリセーナ大統領のリーダーシップに謝意を表した。シリセーナ大統領は,中国による公的・民間投資を歓迎しつつ,開発協力の重要性を表明した。翌9日,王毅外相は,ウィクラマシンハ首相を表敬した。
(3)ウィジェグナラトナ海軍司令官の米国訪問
ウィジェグナラトナ海軍司令官が米国カルフォルニア州で11日~14日に,開催された太平洋水陸両用軍司令官連携シンポジウム(Pacific Command Amphibious Leaders Symposium: PASL)に出席した。
(4)ビスワル米国務次官補の来訪
12日,ビスワル米国務次官補がスリランカに到着。サマラウィーラ外相との共同記者会見で,スリランカと米国の二国間関係はこれまでで一番強い時期に来ている,米国は,継続してスリランカ政府の人権及び正義の分野での取組を支持し,同時に経済開発促進に向け,協力する,特に,農業,エンタープライズ開発,保健,エネルギー,天然資源及び人道活動の分野で投資を行う心づもりであると述べた。
13日,ビスワル米国務次官補は,ウィクラマシンハ首相と首相官邸で協議を行い,二国間の貿易及び投資の強化を約束。その後,サンパンタン野党代表が率いるタミル国民連合(TNA)一行とも,憲法改正や人権理決議の実施について協議を行った。同日夜,ビスワル米国務次官補は,ゴールフェースホテルでレセプションを開催し,スリランカ政府が,和解、良い統治及び自由の促進に尽力していることを称え,スリランカは,政治改革と経済発展が同時に進行できる例を世界に示していると述べた。
14日,ビスワル米国務次官補及び,同じく来訪中のマリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は,東部州トリンコマリー県で東部州首席大臣と協議を行い,首席大臣は,タミル及びムスリムは住民は,シリセーナ政権を信頼していると述べつつも,国内避難民や再定住者への支援の必要性を訴えた。
(5)マリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補の来訪
当地を来訪したマリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は12日,サガラ・ラトナヤケ治安・南部開発大臣を表敬し,二国間関係の重要性や,正義、人権及び和解について協議を行った。
13日夜,マリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は,ヘッティアーラッチ国防次官と二国間関係の重要性につき協議を行った。
(6)ウィクラマシンハ首相のシンガポール訪問
ウィクラマシンハ首相が17日夕方に,3日間の公式訪問のため,シンガポールに到着した。翌18日,ウィクラマシンハ首相は,第3回南アジア・ディアスポラ協議会で,スリランカは,シンガポールとの自由貿易協定締結に向けた協議を行っている,南アジア地域内で,印・シンガポール自由貿易協定, ETCA及びスリランカ・シンガポール自由貿易協定が締結された暁には,シンガポール,南インド及びスリランカのみで,5千億ドル相当の経済地域を創出することができる,ETCAは,スリランカを南アジア内の経済ハブ(geo economic centre)に導くであろうと述べた。なお,中国とも自由貿易協定を結ぶための協議も開始している,中国の海上シルクロード構想にスリランカが含まれていることを不安視する声が聞かれるが,中国がスリランカに関与するのは今回が初めてではない,スリランカの歴史では,スリランカの資源を求めて中国が来訪し,これに続く形でアラブ商人,そして西洋諸国が来訪した経緯があることを思い出して欲しいと述べた。
同日,ウィクラマシンハ首相及び李・星首相立ち会いのもと,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣と,イシュワラン星貿易・産業大臣が,自由貿易協定締結に向けた協議を開始するとの共同声明に署名するとともに,西部州メガポリスの開発に向け,投資や経済分野での2国間関係強化に向けた覚書を締結した。
ウィクラマシンハ首相には,サマラウィーラ外相,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣,ミトラパーラ司法・仏法副大臣が同行した。
(7)第20回EU・スリランカ合同委員会協議の開催
19日,ブリュッセルで,第20回EU・スリランカ合同委員会(EU-Sri Lanka Joint Commission)が開催され,ワギシュワラ外務次官及びウィエガンド欧州対外行動局アジア太平洋部部長代理が共同議長を務めた。
(8)ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣の来訪
3日間の公式訪問のために,21日に当地を来訪したザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣は同日夜に,シリセーナ大統領を表敬し,二国間関係強化に向けた協議を行い,スリランカ人のマレーシアでの雇用創出を推進することで一致した。同日,ザヒド副首相は,アベイワルダナ内務大臣とアトゥコーララ海外雇用大臣とも協議を行った。
22日,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣はサマラウィーラ外相と協議を行い,二国間関係の重要性,特に貿易,観光,教育及び雇用の分野で意見を交わした。サマラウィーラ外相は,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣に対し,ハンバントタ経済地域及びコロンボ・ポートシティー計画といった開発事業への参加を呼びかけた。同日,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣は,ウィクラマシンハ首相及びカルナナヤケ財務大臣とも協議を行った。
(9)ディオン加外相の来訪
ディオン加外相が27日に,2日間の公式訪問のため,スリランカを来訪。加外相のスリランカ訪問は13年ぶり。28日,ディオン加外相は,シリセーナ大統領を表敬し,民主主義,法の統治,和解及び経済開発の促進に向けたシリセーナ大統領の取組を,加政府として,可能な限り支援する旨伝えた。シリセーナ大統領は,加外相に対し,第19次憲法修正や憲法委員会の設置など,過去18ヶ月の間に行った自らの取組を説明。また,スリランカ開発への支援を要請し,これに対し,加外相は,企業支援の一貫としてサナサ開発銀行を通した新たな銀行システムへの支援及び,太陽光発電設置に向けた支援を行うと述べた。
同日,ディオン加外相は,サマラウィーラ外相と二国間協議を行い,開発や和解の分野での協力につき話し合った後,共同記者会見を開き,スリランカで人権理決議案に基づき,和解の分野で進展が見られることを歓迎すると述べつつ,課題も残るとして,加政府は特に国内避難民への支援を行う準備があると述べた。一方で,サマラウィーラ外相は,加にいるスリランカ・ディアスポラに対し,スリランカの和解及び開発を支援するように呼びかけた。また,加のような友好国が技術支援,貿易,投資を通してスリランカを支援してくれることを望むと述べた。
29日,ディオン加外相は北部州を訪れ,クーレイ北部州知事と国内避難民の再定住に関し,協議を行った。また,同外相は,シンハラ語及びタミル語を教えることのできる教員の育成、及び内戦の影響を受けた女性への支援を申し出た。また,和解に向け,「統一国家」(unitary sate)か「連邦国家」(federalism)という名称だけについてのみ協議を行うべきではない,実質的に多民族間の共存が達成できる現実的な方法について協議を行うべきだと述べた。
(10)ジャヤスーリヤ国会議長のシンガポールからの帰国
治療のためにシンガポールを訪れていたジャヤスーリヤ国会議長が27日にスリランカに帰国した。医師のアドバイスにより,今後2週間は安静にする。
(11)日・米・オマーン海軍艦船のコロンボ港親善寄港
23日,海上自衛隊艦船「イナズマ号」及び「スズツキ号」,米海軍艦船の「ニューオーリンズ号」,そして,オマーン海軍艦船の「カサーブ号」,計4隻がコロンボ港に親善寄港した。米艦船の「ニューオーリンズ号」は29日に出港した。
(12)露海軍船艦の親善寄港
27日,露海軍船艦「イゴー・ベルソフ号」がコロンボ港に親善寄港した。同船艦は30日に出港した。
(13)ラオ印IT・市政・都市開発・産業大臣の来訪予定
8月11日~12日の間,第1回スリランカ人材資源サミットに出席するため,ラマ・ラオIT・市政・都市開発・産業大臣がスリランカを訪問予定。同サミットは,スリランカ政府が世界銀行,アジア開発銀行及び国際労働機関と共同で開催準備を進めている。
(14)仏ニースのトラック突入事件を受けた弔意
仏ニースで革命記念日の花火大会を見物していた人々の間にトラックが突っ込み,計84名が死亡したことを受け,シリセーナ大統領が弔意を表明。テロと戦った経験のある国として,いかなるテロ活動をも非難する,平和と安全への脅威に国際社会は協力して立ち向かわなければならない旨を再度強調するといった内容が記されている。
(15)トルコのクーデター未遂を受けたウィクラマシンハ首相の声明
トルコでクーデター未遂が起こったことを受け,ウィクラマシンハ首相は17日,トルコ大統領及び首相が,民主主義政権を死守できたことを嬉しく思う,スリランカはトルコ政府及び国民を支持するとの声明を発表した。
(16)スワイア英国外務担当国務大臣の発言
7日,ヒューゴ・スワイア英国外務担当国務大臣は,英国国会のスリランカに関する討論の場において,内戦中の人権疑惑の追及には,国際社会の関与が必要であるとの見解を示した。
(17)米国国務省による人身売買報告書(Annual Trafficking in Persons Report)の発表
米国国務省が毎年発行している人身売買報告書の最新版が発表された。これを受けて6月30日,ケリー米国務長官は,スリランカ政府は国連人身売買防止条約(Protocol to Prevent, Suppress and Punish Trafficking in Persons, especially Women and Children)を締結し,閣議で人身売買撲滅に向けた行動計画を承認するなど,前向きな取り組みを見せているが,まだ取り組みが不充分であると述べた。
(18)英外務省の人権報告書(British Foreign Offices Human Rights Priority Country Update)の発表
英外務省の人権報告書が発表され,スリランカでは,過去6ヶ月で,市民社会及び人権活動家を取り巻く環境に好転が見られるが,北部州及び東部州ではまだ課題が残っている,ただし,新憲法起草に向けた動きは,スリランカが人権保護の強化を図るにあたり,良い機会である,英国は継続して,国際基準に見合う形でのテロ防止法(PTA)の見直しを求める,などと記されている。
(1)新中央銀行総裁の就任
2日,シリセーナ大統領が,著名なエコノミストのインドラジット・クマラスワミー氏を新中央銀行総裁に任命する旨を発表。クマラスワミー氏は,英国ケンブリッジ大学卒業後,英国サセックス大学で博士号を取得。中央銀行及び財務省で勤務した後に,英国ロンドンにある英連邦事務局で経済問題担当部長(Director of Economic Affairs)を務めた人物。ロイヤル・カレッジではウィクラマシンハ首相の一学年後輩であり,ラグビーでスリランカ代表選手として活躍した経験も持つ。新中央銀行総裁の任命を巡っては,ナンダラール・ウィーラシンハ中央銀行副総裁を推薦していたシリセーナ大統領と,チャリタ・ラトワッタ元財務省次官を推薦していたウィクラマシンハ首相の間で意見対立があり,揉めていた。
(2)UNPとSLFPの統一内閣を巡る動き
ウィクラマシンハ首相は21日,国会で,統一国民党(UNP)とスリランカ自由党(SLFP)の連立による統一内閣は,次の5年間,継続されると述べた。同日,ディサナヤケSLFP幹事長及びハシムUNP幹事長は,合同記者会見で,同じく,統一内閣は次の5年間継続されるとの見解を示し,2大政党は強い協力関係にある旨を強調した。
(3)コロンボ・ポートシティーを巡る動き
ウィクラマシンハ首相が,コロンボ・ポートシティー建設計画再開に向け,当初の計画より2ヘクタール広い,計262ヘクタールの土地の埋め立てを提案する計画を閣議に提出した。追加の2ヘクタールは,新政権が工事を差し止めていたために損害が生じたとして中国企業側から請求されていた1億千3百万ドルの賠償金を相殺するためのもの。
(4)中国のハンバントタ港開発関与を巡る動き
易先良(Yi Xianliang)駐スリランカ中国大使が,ウィクラマシンハ首相の4月の中国訪問のフォローアップの一貫としてハンバントタ港を訪れ,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣及びアムヌガマ特別事業大臣と,ハンバントタ港開発への中国企業の関与及びスリランカ政府の中国政府への負債の一部を経営権(equity)に変更させる可能性等につき協議を行った。易中国大使一行のハンバントタ港訪問後,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,サンデーオブサーバー紙に対し,中国政府が「一帯一路」に基づき,特別経済地域(Special Economic Zone: SEZ)設置に向け,ハンバントタの計1万5千エーカーの土地を要請した,同要請に関しては,来週スリランカを訪れる中国代表団が協議を行う,ローンを組むと,多額の借金の返済に追われることになるため,中国政府から投資の形での支援を期待していると述べた。現在スリランカは,中国から計80億ドルの借金を抱えている。同代表団は,中国・スリランカ自由貿易協定についても協議を行う予定。サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣によると,同自由貿易協定は,茶,宝石,ゴム、ココナツ及びスパイス等に焦点をあてる由。
(5)ETCAに向けた協議の開始
サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣によると,印との経済技術協力合意(ETCA)の起草に向けた協議が,8月9日~10日にコロンボで開催される。本件で協議を行うスリランカ側の交渉団は,今後,シンガポールや中国との自由貿易協定に関する協議にも参加する。また,8月2日~4日にかけて,スリランカ・中国自由貿易協定に関する協議を行うため,中国から政府代表団が来訪を予定している。
(6)モラガハカンダ・ダムの完成
25日,シリセーナ大統領とウィクラマシンハ首相は,モラガハカンダ・カルガンガ潅漑開発プロジェクトの一貫として建設されていた主要ダムの開幕式典に出席した。同プロジェクトはシリセーナ大統領が農業大臣を務めていた2007年に開始され,2012年に完成を予定していたものの,現在は2018年に完了を予定している。同プロジェクトが完成した暁には,トリンコマリー,ポロンナルワ,マータレ,アヌラーダプラの計82,000ヘクターの土地への水の供給が可能となり,乾燥地域の慢性腎臓疾患問題の解決にも貢献すると期待されている。
(7)デング熱の流行
デング熱が流行しており,ここ6ヶ月の間で,患者数が2万2千799名に到達。その内,40名が死亡した。患者数の47%は西部州に集中しており,コロンボでは,患者数が7千369名。当局は蚊の駆除を強化している。
2 ラージャパクサ前政権関係者を巡る動き
(1)統一野党が陰の内閣を発足
7日,統一野党は,50名で構成される陰の内閣(shadow cabinet)を発足した旨発表した。ラージャパクサ前大統領が陰の首相・国防大臣・仏法大臣に任命され,陰の内閣の長となった。この他にも,ディネーシュ・グナワルダナ人民統一戦線(MEP)党首が陰の国家政策・経済大臣,チャマル・ラージャパクサ元国会議長が陰の交通・航空大臣,ナマル・ラージャパクサSLFP議員が陰の外務大臣,ウダヤ・ガンマンピラ・ピヴィトル・ヘラ・ウルマヤ(PHU)議員が陰の治安大臣,ドゥラス・アラハッペルマSLFP議員が陰の教育・国会大臣,クマラ・ウェルガマSLFP議員が陰の港湾・海運大臣,バンドゥーラ・グナワルダナSLFP議員が,陰の財務大臣,ウィマル・ウィーラワンサ国家自由前線(NFF)党首が,陰の住宅・エンジニア大臣,ラメッシュ・パティラナSLFP議員が陰の保健・伝統医療大臣,パヴィトラ・ワンニアラッチSLFP議員が陰の社会進出促進大臣,及びギータ・クマラシンハSLFP議員が陰の環境大臣に任命された。
しかしながら7日,ラージャパクサ前大統領は,統一野党の陰の首相・国防大臣・仏法大臣として任命されたことにつき,自身は関心がないとして,自身の名前をはずすように要請した。
(2)シリセーナ大統領と統一野党所属のSLFP議員との協議
アマラウィーラ統一人民自由連合(UPFA)幹事長によると,シリセーナ大統領は,25日夜に統一野党議員と協議を行い, SLFPを分裂させるような行動を慎むよう,伝えた。また,統一野党に所属するSLFP議員に対し,SLFPを支持しないのであれば,地区責任者の地位を解任する,地方選挙の前に,SLFP内を再編成すると伝えた由。
(3)統一野党による反政府デモ
ア 27日,キャンディー治安判事は,統一野党がキャンディー市内で計画している反政府デモに関し,同日に同市内でUNPが党集会を開催する予定であるとして,双方の衝突を避けるべく,反政府デモはキャンディー市郊外から行うように指示した。
イ 28日,統一野党がキャンディー郊外からコロンボに向かう反政府デモを開始。ラージャパクサ前大統領も参加し,現政権は,VATの引き上げなど,公約を守らずに,国民の負担になる政策ばかりを行っている,警察も独立性を失いつつあるとして強く批判した。
(4)ナマル・ラージャパクサ議員の逮捕・保釈
11日,ラージャパクサ前大統領の長男である,ナマル・ラージャパクサSLFP議員が逮捕された。同議員には,2013年に,ラグビー・トーナメントのために使用されるはずであった7千万ルピーを,私的に流用した疑いがかかっている。同議員は18日に保釈された。
(5)バシル・ラージャパクサ前経済開発相の起訴
15日,コロンボ高等裁判所は,保釈中のバシル・ラージャパクサ前経済開発相(ラージャパクサ前大統領の弟)を,3千3百万ルピー相当の農村開発用資金を昨年1月の大統領選挙資金として流用した疑いで,起訴した。これを受けて18日,警察財務犯罪捜査局(FCID)がバシル前経済開発相を逮捕した。
(6)ウダヤ・ガンマンピラ統一野党議員の保釈
1日,ウダヤ・ガンマンピラ統一野党議員が保釈された。同議員は、偽装した文書を用いて、豪富豪のブライアン・ジョン・シャディック氏の資産の一部を売却し,そこから得た利益を着服した疑いで,6月18日に逮捕されていた。
3 国民和解
(1)ジョージ・マスターの釈放
4日,コロンボ治安判事長(Chief Magistrate)は,LTTEのテロ活動を支援したとして拘留されていたヴェルピライ・ダヤニティ(通称:ジョージ・マスター)の釈放を命じた。同人物はLTTEで通訳を務めていた。
(2)閣議が証人保護法の修正を承認
6日,閣議は,2015年に可決された証人保護法を修正し,被害者及び証人が通信・映像機器を通して国外から証言を行うことを可能とすることを決定した。同法は5月16日にすでに施行されている。
(3)シリセーナ大統領の発言
8日,シリセーナ大統領は,内戦中の人権侵害疑惑の追及に関し,外国人判事の参加を認めない姿勢を改めて強調し,スリランカの自由、独立及び領土を脅かすいかなる試みも許さないとの姿勢を示した。これを受け,ドゥジャリック国連事務総長広報担当官は13日,人権侵害疑惑の追及に関し,国際社会とスリランカの間で合意された内容が尊重されることを望むと述べた。
(4)サマラウィーラ外相の発言
6日,サマラウィーラ外相は,第32回人権理事会出席後の記者会見で,スリランカ政府は,真実和解委員会を設置した後に,人権理決議で指摘された紛争中の人権侵害事案にかかる責任追求に取り組む,2017年1月か2月までには責任追及メカニズムのあり方について,国内での意見統一を図ることが可能だと考えると述べた。また,現政権は,和解が開発において一番重要な要素であると認識していることもあり,人権理決議案の共同提案国となったことで,スリランカ政府が和解に関するメカニズムの制度設計を自ら行うことが可能となったと述べた。
(5)ウィクラマトゥンガ元サンデー・リーダー紙編集長の暗殺を巡る動き
15日,2009年のウィクラマトゥンガ元サンデー・リーダー紙編集長暗殺に関与した疑いで,軍諜報員が逮捕され,27日までの拘留が決定した。同諜報員には,ウィクラマトゥンガ元編集長の運転手を誘拐し,勾留した疑いがかけられている。
(6)トリンコマリー県クマラプラム地区のタミル住民殺害事件の判決
27日,アヌラーダプラ高等裁判所は,1996年に東部州トリンコマリー県クマラプラム地区で24名のタミル住民を殺害したとして起訴されていた,6名の元スリランカ軍伍長に無罪判決を言い渡した。同事案を巡っては,計107名が証言を行っており,6名は計101回起訴されていた。
4 外交
(1)サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣の印訪問
4日~5日の間,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣がシタラマン印商業・産業大臣の招待を受け,印を訪問。シタラマン印商業・産業大臣,スワラージ印外相,プラダン印石油・天然ガス大臣,シンハ印鉄道大臣及び印トップ企業のCEOと協議を行った。シタラマン印産業・商業大臣との協議では,二国間の貿易強化につき協議を行い, ETCAに向け,継続して調整を進める旨で合意した。
(2)王毅中国外相の来訪
8日から3日間の予定で,王毅中国外相がスリランカを来訪。8日,王毅中国外相とサマラウィーラ外相は外相会談を実施した。会談にはスリランカ側からカルナナヤケ財務相,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易相及びパリハッカラ前北部州知事・元外務次官ほかも同席した。会談後,両外相は,共同記者会見を実施。王毅外相は,共同記者会見で,中国・スリランカ協力は,いかなる第三国をもターゲットにしておらず,中国・スリランカそれぞれの対外関係にも影響を与えない旨確約した。
8日,王毅外相による表敬を受けたシリセーナ大統領は,中国政府が,腎臓病患者のための特別病院を建設してくれていることに謝意を表し,このような善意の措置は,両国関係を一層緊密にする旨述べた。王毅外相は,コロンボ・ポートシティ建設計画再開に向けたシリセーナ大統領のリーダーシップに謝意を表した。シリセーナ大統領は,中国による公的・民間投資を歓迎しつつ,開発協力の重要性を表明した。翌9日,王毅外相は,ウィクラマシンハ首相を表敬した。
(3)ウィジェグナラトナ海軍司令官の米国訪問
ウィジェグナラトナ海軍司令官が米国カルフォルニア州で11日~14日に,開催された太平洋水陸両用軍司令官連携シンポジウム(Pacific Command Amphibious Leaders Symposium: PASL)に出席した。
(4)ビスワル米国務次官補の来訪
12日,ビスワル米国務次官補がスリランカに到着。サマラウィーラ外相との共同記者会見で,スリランカと米国の二国間関係はこれまでで一番強い時期に来ている,米国は,継続してスリランカ政府の人権及び正義の分野での取組を支持し,同時に経済開発促進に向け,協力する,特に,農業,エンタープライズ開発,保健,エネルギー,天然資源及び人道活動の分野で投資を行う心づもりであると述べた。
13日,ビスワル米国務次官補は,ウィクラマシンハ首相と首相官邸で協議を行い,二国間の貿易及び投資の強化を約束。その後,サンパンタン野党代表が率いるタミル国民連合(TNA)一行とも,憲法改正や人権理決議の実施について協議を行った。同日夜,ビスワル米国務次官補は,ゴールフェースホテルでレセプションを開催し,スリランカ政府が,和解、良い統治及び自由の促進に尽力していることを称え,スリランカは,政治改革と経済発展が同時に進行できる例を世界に示していると述べた。
14日,ビスワル米国務次官補及び,同じく来訪中のマリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は,東部州トリンコマリー県で東部州首席大臣と協議を行い,首席大臣は,タミル及びムスリムは住民は,シリセーナ政権を信頼していると述べつつも,国内避難民や再定住者への支援の必要性を訴えた。
(5)マリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補の来訪
当地を来訪したマリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は12日,サガラ・ラトナヤケ治安・南部開発大臣を表敬し,二国間関係の重要性や,正義、人権及び和解について協議を行った。
13日夜,マリノフスキー米民主主義・人権・労働担当次官補は,ヘッティアーラッチ国防次官と二国間関係の重要性につき協議を行った。
(6)ウィクラマシンハ首相のシンガポール訪問
ウィクラマシンハ首相が17日夕方に,3日間の公式訪問のため,シンガポールに到着した。翌18日,ウィクラマシンハ首相は,第3回南アジア・ディアスポラ協議会で,スリランカは,シンガポールとの自由貿易協定締結に向けた協議を行っている,南アジア地域内で,印・シンガポール自由貿易協定, ETCA及びスリランカ・シンガポール自由貿易協定が締結された暁には,シンガポール,南インド及びスリランカのみで,5千億ドル相当の経済地域を創出することができる,ETCAは,スリランカを南アジア内の経済ハブ(geo economic centre)に導くであろうと述べた。なお,中国とも自由貿易協定を結ぶための協議も開始している,中国の海上シルクロード構想にスリランカが含まれていることを不安視する声が聞かれるが,中国がスリランカに関与するのは今回が初めてではない,スリランカの歴史では,スリランカの資源を求めて中国が来訪し,これに続く形でアラブ商人,そして西洋諸国が来訪した経緯があることを思い出して欲しいと述べた。
同日,ウィクラマシンハ首相及び李・星首相立ち会いのもと,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣と,イシュワラン星貿易・産業大臣が,自由貿易協定締結に向けた協議を開始するとの共同声明に署名するとともに,西部州メガポリスの開発に向け,投資や経済分野での2国間関係強化に向けた覚書を締結した。
ウィクラマシンハ首相には,サマラウィーラ外相,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣,ミトラパーラ司法・仏法副大臣が同行した。
(7)第20回EU・スリランカ合同委員会協議の開催
19日,ブリュッセルで,第20回EU・スリランカ合同委員会(EU-Sri Lanka Joint Commission)が開催され,ワギシュワラ外務次官及びウィエガンド欧州対外行動局アジア太平洋部部長代理が共同議長を務めた。
(8)ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣の来訪
3日間の公式訪問のために,21日に当地を来訪したザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣は同日夜に,シリセーナ大統領を表敬し,二国間関係強化に向けた協議を行い,スリランカ人のマレーシアでの雇用創出を推進することで一致した。同日,ザヒド副首相は,アベイワルダナ内務大臣とアトゥコーララ海外雇用大臣とも協議を行った。
22日,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣はサマラウィーラ外相と協議を行い,二国間関係の重要性,特に貿易,観光,教育及び雇用の分野で意見を交わした。サマラウィーラ外相は,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣に対し,ハンバントタ経済地域及びコロンボ・ポートシティー計画といった開発事業への参加を呼びかけた。同日,ザヒド・マレーシア副首相兼内務大臣は,ウィクラマシンハ首相及びカルナナヤケ財務大臣とも協議を行った。
(9)ディオン加外相の来訪
ディオン加外相が27日に,2日間の公式訪問のため,スリランカを来訪。加外相のスリランカ訪問は13年ぶり。28日,ディオン加外相は,シリセーナ大統領を表敬し,民主主義,法の統治,和解及び経済開発の促進に向けたシリセーナ大統領の取組を,加政府として,可能な限り支援する旨伝えた。シリセーナ大統領は,加外相に対し,第19次憲法修正や憲法委員会の設置など,過去18ヶ月の間に行った自らの取組を説明。また,スリランカ開発への支援を要請し,これに対し,加外相は,企業支援の一貫としてサナサ開発銀行を通した新たな銀行システムへの支援及び,太陽光発電設置に向けた支援を行うと述べた。
同日,ディオン加外相は,サマラウィーラ外相と二国間協議を行い,開発や和解の分野での協力につき話し合った後,共同記者会見を開き,スリランカで人権理決議案に基づき,和解の分野で進展が見られることを歓迎すると述べつつ,課題も残るとして,加政府は特に国内避難民への支援を行う準備があると述べた。一方で,サマラウィーラ外相は,加にいるスリランカ・ディアスポラに対し,スリランカの和解及び開発を支援するように呼びかけた。また,加のような友好国が技術支援,貿易,投資を通してスリランカを支援してくれることを望むと述べた。
29日,ディオン加外相は北部州を訪れ,クーレイ北部州知事と国内避難民の再定住に関し,協議を行った。また,同外相は,シンハラ語及びタミル語を教えることのできる教員の育成、及び内戦の影響を受けた女性への支援を申し出た。また,和解に向け,「統一国家」(unitary sate)か「連邦国家」(federalism)という名称だけについてのみ協議を行うべきではない,実質的に多民族間の共存が達成できる現実的な方法について協議を行うべきだと述べた。
(10)ジャヤスーリヤ国会議長のシンガポールからの帰国
治療のためにシンガポールを訪れていたジャヤスーリヤ国会議長が27日にスリランカに帰国した。医師のアドバイスにより,今後2週間は安静にする。
(11)日・米・オマーン海軍艦船のコロンボ港親善寄港
23日,海上自衛隊艦船「イナズマ号」及び「スズツキ号」,米海軍艦船の「ニューオーリンズ号」,そして,オマーン海軍艦船の「カサーブ号」,計4隻がコロンボ港に親善寄港した。米艦船の「ニューオーリンズ号」は29日に出港した。
(12)露海軍船艦の親善寄港
27日,露海軍船艦「イゴー・ベルソフ号」がコロンボ港に親善寄港した。同船艦は30日に出港した。
(13)ラオ印IT・市政・都市開発・産業大臣の来訪予定
8月11日~12日の間,第1回スリランカ人材資源サミットに出席するため,ラマ・ラオIT・市政・都市開発・産業大臣がスリランカを訪問予定。同サミットは,スリランカ政府が世界銀行,アジア開発銀行及び国際労働機関と共同で開催準備を進めている。
(14)仏ニースのトラック突入事件を受けた弔意
仏ニースで革命記念日の花火大会を見物していた人々の間にトラックが突っ込み,計84名が死亡したことを受け,シリセーナ大統領が弔意を表明。テロと戦った経験のある国として,いかなるテロ活動をも非難する,平和と安全への脅威に国際社会は協力して立ち向かわなければならない旨を再度強調するといった内容が記されている。
(15)トルコのクーデター未遂を受けたウィクラマシンハ首相の声明
トルコでクーデター未遂が起こったことを受け,ウィクラマシンハ首相は17日,トルコ大統領及び首相が,民主主義政権を死守できたことを嬉しく思う,スリランカはトルコ政府及び国民を支持するとの声明を発表した。
(16)スワイア英国外務担当国務大臣の発言
7日,ヒューゴ・スワイア英国外務担当国務大臣は,英国国会のスリランカに関する討論の場において,内戦中の人権疑惑の追及には,国際社会の関与が必要であるとの見解を示した。
(17)米国国務省による人身売買報告書(Annual Trafficking in Persons Report)の発表
米国国務省が毎年発行している人身売買報告書の最新版が発表された。これを受けて6月30日,ケリー米国務長官は,スリランカ政府は国連人身売買防止条約(Protocol to Prevent, Suppress and Punish Trafficking in Persons, especially Women and Children)を締結し,閣議で人身売買撲滅に向けた行動計画を承認するなど,前向きな取り組みを見せているが,まだ取り組みが不充分であると述べた。
(18)英外務省の人権報告書(British Foreign Offices Human Rights Priority Country Update)の発表
英外務省の人権報告書が発表され,スリランカでは,過去6ヶ月で,市民社会及び人権活動家を取り巻く環境に好転が見られるが,北部州及び東部州ではまだ課題が残っている,ただし,新憲法起草に向けた動きは,スリランカが人権保護の強化を図るにあたり,良い機会である,英国は継続して,国際基準に見合う形でのテロ防止法(PTA)の見直しを求める,などと記されている。