海外安全対策情報
平成29年10月11日
【平成29年1月~3月】
1 治安情勢
(1)テロ情勢
ア 国際テロ
治安当局は,スリランカ国内へのイスラム過激派の浸透はなく,イスラム過激派組織は把握していないとしている。
しかし,昨年末から今年にかけて,宗教間の軋轢が表面化したり,イスラムの解釈を巡って,ムスリムコミュティー内部において衝突事案が発生するなど,個別の事案が発生している。昨今のインターネットの普及と相まって,これら宗教間又は宗派間の対立を背景に,「ローンウルフ」型テロや「ホームグローン」型テロの発生を招く危険性は排除できない。
イ サイバー攻撃
1月,保健省のホームページが「Muslim Cyber Army」を名乗る者によってハッキングされ,約1日半に亘って閲覧不能になる事案が発生した。
「Muslim Cyber Army」は,インドネシアに所在する過激ムスリム団体であるとされているが,本件が,当該団体の犯行であるか否かについては,現在まで判明していない。しかし本件によって,当地のサイバーセキュリティーの脆弱性が明らかになったことから,同種又はより高度な攻撃を受ける危険性は排除できない。
ウ LTTE
2月,北部州内にLTTE再興の動向が見られる,との報道がなされた。本件につき,治安当局は,タミル人コミュニティーの中に,現政権に不満を抱く者のグループがあり,その中の一つのグループが,政府要人や政治家を殺害することを計画した形跡があるものの,LTTEの再興を目的としたものではなく,現在までそのような動向は見られない,としている。
(2)銃火器使用犯罪情勢
銃火器を使用した犯罪や,銃火器の発見が連日報道されているところ,2月には,有名な犯罪組織のリーダーが乗った護送バスが,裁判所に向かう途中で銃撃に遭い,刑務所職員2名を含む7名が死亡,5名が負傷する事案が発生した。
政府は,銃火器の適正な取締りを行うため,公共の場所における銃火器使用禁止規定の設置や,銃火器所持者の適格性審査基準の改善,罰則・罰金の見直しなどを内容とした銃器取締法(Firearms Ordinance)の改正を検討している。
(3)薬物犯罪情勢
当地は,主に違法薬物の密輸経由地として利用されているとみられている。これまでの主要な違法薬物はヘロイン及び大麻であったところ,昨年からコカインの大量押収が続いている。
ア 2015年中の違法薬物犯罪(警察統計による。)
(ア)ヘロイン
認知件数147件,押収量約22.6キログラム,逮捕者201名
(イ)大麻
認知件数26件,押収量約196.3キログラム,逮捕者28名
(ウ)コカインの検挙事例なし。
イ 2016年中の違法薬物犯罪(同上。)
(ア)ヘロイン
認知件数154件,押収量約147.07キログラム,逮捕者224名
(イ)大麻
認知件数21件,押収量約108.03キログラム,逮捕者24名
(ウ)コカイン
認知件数7件,押収量約1,486.3キログラム,逮捕者6名
また,違法薬物犯罪で逮捕された外国人数は,2015年中は130名,2016年中(9月末日現在)は74名で,逮捕された外国人の主な国籍は,多い順に,インド(17名),パキスタン(16名),モルディブ(15名),ナイジェリア(11名),イラン(10名)である。
(4)外国人による犯罪
2016年中(1月1日から12月31日までの間)に,退去処分を受けた外国人は370名で,これらの外国人の主な国籍は,多い順に,インド(154名),中国(54名),パキスタン(47名),ネパール(33名),タイ(25名)であった。
また,当地を来訪した外国人が列車の車両に落書きをして身柄を拘束されたり,高度警戒対象施設である首相官邸を写真撮影しようとして身柄を拘束されるなど,当地の規範・規則への理解を欠く行為は現に慎む必要がある。
(5)外国人の被害
今期も,外国人が被害者となる各種事件,事故が発生している。
特に,外国人女性が被害者となる事件の増加が懸念されているところ,国連人口基金(UNFPA)が,2015年中に,スリランカ人女性に対して行った調査によれば,公共交通機関を利用する女性の,90%がセクシャルハラスメントを受けたことがある,と回答した。被害を受けた女性のうち,警察に訴え出たのは4%,74%の女性は,被害の届出先又は相談先を知らなかった,と回答した。
このような被害を避ける方法として,治安当局は,セクシャルハラスメントは刑法で処罰される犯罪である事を広く知らせると共に,観光客に対しても,服装や態度に注意するよう呼びかけている。また,被害に遭った場合には,すぐに「119(警察緊急電話)」に通報するよう指導している。
(6)邦人が関係した事件・事故,その他事案
ア 邦人男性観光客が観光名所であるシーギリヤロックで写真撮影したところ,撮影禁止エリアであるとして管理事務所に身柄を拘束された(軍事施設,公安施設,空港,港等の立ち入り禁止区域はもちろんのこと,寺院等の文化財保護区域も写真撮影などが禁止されているハイセキュリティーゾーンに指定されているので注意が必要)。
イ 日本語で話しかけてきたトゥクトゥク(三輪タクシー)に乗車しコロンボ市内の周遊観光をしたところ,多額のタクシー代金を請求された(同種の事案が多発しており注意が必要。日本語で話しかけられた場合は警戒すること)。
ウ 邦人女性観光客がキャンディ市内を旅行中,バスを降車したところでひったくりに遭い,旅券等の入った鞄を奪われる(コロンボ市内のみでなく,地方都市でも窃盗等の犯罪が発生しているので中が必要)。
エ 当地を個人旅行するに当たって,本邦で知り合ったスリランカ人を通して紹介してもらった観光ガイドに案内してもらったところ,法外な値段を請求された(詐欺事案)。
オ 日系大手旅行代理店を通じてスリランカの個人旅行をしていた邦人男性観光客が,日本語堪能な運転手兼ガイドに金を貸したところ,その後返金されない(詐欺事案。同様の事案は散見されるので,十分な注意が必要)。
カ 知り合ったスリランカ人パートナーとともにスリランカにおいて個人事業を始めたものの,出資金詐欺に遭った(同様の詐欺被害が散見されるので,会社設立などの際は顧問弁護士を立てるなどして慎重を期すこと)。
キ 邦人男性観光客がスリランカを個人旅行中,海でおぼれて死亡(旅行者は「たびレジ」登録を行うとともに,海外旅行傷害保険に必ず加入すること)。
2 対日感情
良好
3 日本企業の安全にかかる諸問題
直接的に進出日本企業の安全に影響を及ぼす事案は発生していない。
しかし,当国南部に所在するハンバントタ港においては,小規模ながら,港湾労働者による抗議活動が継続しており,今後の動向には注意を要する。
また,ソマリア沖において,スリランカ船員が乗船していた外国船籍のオイルタンカーがシージャックされる事案が発生している。本件は,スリランカそのものを標的としたものではなく,日本権益とは直接の関わりがないものの,2012年以来初めて発生した事件であり,企業活動の安全を考える上で参考になるものと考えられる。
4 その他邦人安全対策のためにとった具体的措置
以下のとおり在留邦人及び「たびレジ」登録者に対して注意喚起(当館ホームページ掲載及びメールマガジンによる配信)を行った。
1月6日 バンダラナイケ国際空港の一部閉鎖に伴う注意喚起
1月23日 デング熱等感染症に対する注意喚起
2月23日 デング熱等に対する注意喚起