当国情勢

平成29年2月3日

2017年1月1日 - 1月31日

 1 内政
(1)ハンバントタ港開発に関する動き
ア スリランカ・中国流通・産業地区のオープニング・セレモニー開催
7日,ハンバントタでスリランカ・中国流通・産業地区(Sri Lanka-China Logistics and Industrial Zone)のオープニング・セレモニーが,ウィクラマシンハ首相,駐スリランカ中国大使らの出席の下行われ,中国大使は今後3~5年で50億ドルの投資が行われる見込みであり,既に55の企業がコミットしている,これらは最大10万の雇用を生み出す等述べた。一方,裁判所による周辺でのデモ・集会の禁止命令が出ていたにもかかわらず周辺で仏教僧を含む統一野党らによるデモ活動が行われ,警察との間で衝突が発生し,22人が病院に運ばれ,52名が逮捕された。
イ ラージャパクサ前大統領と駐スリランカ中国大使の会談
11日,ラージャパクサ前大統領は駐スリランカ中国大使と会談した。前大統領は会談について記者に対し,会談でハンバントタの人々の先祖代々の土地を取り上げることについて話をしたところ,同大使は熱心に聞いていた,抗議活動は中国に対するものではなく人々の住んでいる土地を奪おうとする政府に対するものである旨述べた。
(2)開発法案を巡る動き
 9日,ウィクラマシンハ首相は国会に,持続可能な開発審議会設置のための法案を提出した。同審議会は持続可能な開発省,国家政策省,環境省の次官など17人から成り,議長は大統領が指名する。審議会は関係機関や9州評議会とも協議しながら持続可能な開発についての国家政策を策定するため国内・国際的な調整を行う権限を持つことになる。
(3)地方議会選挙を巡る動き
 17日,地方議会選挙の選挙区割り見直し委員会のピーリス委員長は5人の委員全員の署名のなされた報告書をムスタファ州議会・地方議会大臣に提出した。
(4)中央銀行の汚職疑惑を巡る動き
 昨年の国債の売却を巡る汚職疑惑を受け,シリセーナ大統領は法務長官に対し,最高裁判事,高等裁判所判事及び上級会計検査官で構成された特別大統領委員会(SPC)を設置し,同問題をさらに詳しく調べ,同委員会の報告書を基にしかるべき法的措置を執るよう指示した。
(5)北部州ジャフナ県の外務省地域領事館の開館
 26日,サマラウィーラ外相は,北部州ジャフナ県で外務省地域領事館(Regional Consular Office of the Foreign Affairs Ministry)の開館式に出席した。
(6)統一野党の動き
ア ウィーラワンサNFF党首の逮捕
 10日,警察財務犯罪捜査局(FCID)はウィマル・ウィーラワンサ国家自由戦線(NFF)党首を,前政権下で国所有の車40台を違法に使用し政府に9千万ルピーの損害を負わせた疑いで逮捕した。
イ ラージャパクサ前大統領と州首席大臣の協議
 22日,スリランカ自由党(SLFP)所属の北中部州を除く6州の州首席大臣(注:北部州及び東部州の首席大臣は別の党所属)が,ラージャパクサ前大統領と協議を行い,同前大統領が地方議会選挙でSLFPを支持するよう求めたが,合意はなされなかった。同協議はシリセーナ大統領が承認したもの。
ウ 統一野党による反政府集会の開催
 27日,統一野党は, 西部州ヌゲゴダで反政府集会を開催し,現政権は,地方議会選挙を先延ばしにし,国を二分化する憲法を導入しようと試み,生活費を高騰させ,野党議員に対する「魔女狩り」を行い,国営企業を売却し,中央銀行の国債を巡る汚職疑惑で沈黙を保っていると批難した。また,同集会で,ラージャパクサ前大統領は,シリセーナ政権の失策が,政治からの引退を考えていた自ら(前大統領)の政治復帰をもたらした,シリセーナ大統領は,実権を有する大統領制を廃止し,同実権を国会に与えると公約し,選出されたのであって,海外のLTTE同情者といわゆる国際社会のニーズを反映した国を二分化する憲法を導入するために選出された訳ではない,民族問題があるのであれば,解決されなければならないが,多くの英雄の犠牲の引き替えに勝ち取った勝利を脅かしてはいけないとして政府を厳しく批判した。
 
2 国民和解
(1)失踪者家族によるハンガーストライキの実施
 北部州ワウニア県で23日から失踪者家族がハンガーストライキを行っていたが,26日にウィジェワルダナ国防担当国務大臣が同県を訪問し,2月9日に首相府官邸で全関係者を招いた協議を行うことを約束したため,同日,終了した。
(2)拘留者によるハンガーストライキの実施
 26日,テロ防止法に基づき逮捕され,コロンボ及びアヌラーダプラ県で拘留されている容疑者がそれぞれのケースの進展を求めてハンガーストライキを開始。
(3)スマンティランTNA報道官の暗殺計画の発覚
テロ捜査局(TID)は,北部州ジャフナ県で,スマンティラン・タミル国民連合(TNA)報道官を2016年12月12日及び2017年1月13日に暗殺する計画があったとして,4名の元LTTE兵士を逮捕した。同計画は,ノルウェーに拠点を持つペリンバナヤガム・シヴァパラン(通称ネヂヤヴァン)が率いる国外のLTTE一派(LTTE faction)が関与している。これらの暗殺計画は,アクシデントによって失敗に終わった由。これを受け,スマンティランTNA報道官は特別なセキュリティー管理下に置かれ,シリセーナ大統領及びウィクラマシンハ首相は,TNA議員の身の安全が犯されたことに関し,懸念を表明した。
 
3 外交
(1)チャンドラバブ・ナイドゥ・アンドラプラデシュ州首相の来訪
 8日,インドのチャンドラバブ・ナイドゥ・アンドラプラデシュ州首相が,シリセーナ大統領の就任2周年記念式典に出席した。その後,同州首相はシリセーナ大統領のアレンジにより,NSBM緑の大学都市を訪問。
(2)ウィクラマシンハ首相他のダボス会議出席
ア ウィクラマシンハ首相がスイスで開催されたダボス会議に出席するため,16~23日の日程でスイスを訪問。ダボス会議では,5千億ドルの市場へのアクセスをもたらす,インド南部5州との個別の協定も視野に入れている,我々は日本とのFTA,パキスタンとの追加的FTAについても協議していると述べた。滞在中の17日には習中国国家主席と面会し,ハンバントタの投資地域及びファイナンシャル・シティーを含む中国によるスリランカへの投資について議論した。その他,セルビア共和国首相,スイス大統領,AIIB総裁及びゼイド国連人権高等弁務官とも会談した。
イ 同じくダボス会議に出席したサマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,今年6月までに中国,シンガポール,インドとのFTAが締結される,それはスリランカが25億人の市場にアクセスが可能になることを意味すると述べた。
(3)外相のスウェーデン訪問
 18日,サマラウィーラ外相はスウェーデン外相の招きでスリランカの外相として31年ぶりに同国を公式訪問し,スウェーデン外相との間で外相会談を実施し,二国間関係強化やGSPプラス等について協議した他,ITや漁業等の分野での協力を要請した。サマラウィーラ外相はスウェーデン副首相を表敬した他,国会議長と会談し,「スマートシティーと持続可能な開発」をテーマとしたラウンドテーブル会合に出席した。
(4)カルナナヤケ財務大臣及びサマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣のベルギー訪問
カルナナヤケ財務大臣とサマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣がベルギーを訪問し,20日,カルナナヤケ財務大臣とマクドウェル欧州投資銀行(EIB)副代表の間で,コロンボのゴミと水管理事業に向けた5千万ユーロの財務合意(Financing agreement)が締結された。カルナナヤケ財務大臣はまた,オヴェルトヴェルド・ベルギー財務大臣と,スリランカの格付けを上げる可能性につき協議を行い,スリランカの公務員を訓練する技術的支援を要請した。一方,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,クレム・ベルギー対外貿易担当国務長官と,ベルギーが支援している事業につき協議を行った。そして両大臣は,ミミツァ欧州委員会国際協力・開発担当委員と,欧州資金による現行事業につき協議を行い,SMEセクターやグリーン・エネルギー事業への支援を求めた。
(5)シリセーナ大統領の,春節メッセージ
 22日,シリセーナ大統領は,2017年が,中国とスリランカの国交樹立60周年であり,また,二国間の関係構築に寄与した米・ゴム協定締結から65周年の節目にあたる,当地の中国大使館は春節に関する多くのイベントを計画しており,これらを通して二国間の友好が深まるであろうとの春節メッセージを発表した。
(6)閣議でマリの国連平和維持軍への派兵を承認
 24日,閣議決定により,マリの国連平和維持軍にスリランカ軍兵士を派兵し,これに必要な備品を購入するための融資をロシア貯蓄銀行から受けることが承認された。