当国情勢

平成29年4月1日

2017年3月1日 - 3月31日

1 内政

(1)国会内の混乱
 10日,ジャヤスーリヤ国会議長が,国会の進行の邪魔をする統一野党議員への対処を怠ったとして,キリエッラ大学教育・ハイウェー大臣兼与党院内総務及び与党議員が退席する事態が発生し,国会審議が中断された。国会審議は21日に持ち越されることになった。

(2)与野党の動き
ア スリランカ自由党(SLFP):SLFP地区責任者の変更
 21日,シリセーナ大統領は,グナワルダナ元議員を含む統一野党側の3名のSLFP地区責任者を解任し,新たな地区責任者を任命した。
イ 統一国民党(UNP)作業部会の決定
 UNP作業部会は次期選挙に向けて,フォンセカ元帥・州開発大臣をUNPの党首補佐(Assistant Leader)に任命することを決定した。
ウ 統一野党:グナワルダナ議員に対する1週間の登院停止措置
 8日,国会は,ジャヤスーリヤ議長がウィーラワンサ議員率いる国家自由戦線(NFF)がUPFAから独立して活動することはできない旨裁定した後に混乱し,キリエラ統一国民党(UNP)院内総務の動議投票後,グナワルダナ議員(MEP)の一週間の登院停止が決定された。

(3)中部高速の建設中止
 14日,閣議は中部高速のクルネーガラ・ダンブッラ間の第4工区を,これ以上,借金を増加させない観点から,一時的に中止することを決定。

(4)バシル・ラージャパクサ前経済開発相の起訴
 15日,コロンボ高等裁判所は,農村開発局(Divineguma Development Department)の資金,2900万ルピーを,ラージャパクサ前大統領の選挙公報資金に充てたとして,起訴された。

(5)閣議が中国国家発展改革委員会と覚書を結ぶことを承認
 15日,閣議は中国とのさらなる経済関係強化を図るため,中国国家発展改革委員会(NDRC)と覚書を結ぶことを承認。

(6)スリランカ人乗組員の乗る石油タンカーのハイジャック:人質の解放
 13日にソマリア沖でスリランカ人乗組員8名が乗る石油タンカーが海賊によりハイジャックされ,8名が人質に取られ,身代金を要求されていたものの,17日,全員無事に解放された。
 
2 国民和解

(1)シリセーナ大統領のジャフナ訪問
 4日,シリセーナ大統領は,訪問先の北部州ジャフナ県で,北部州の開発に向けたプログラムの必要性を強調し,北部州の開発のために,新たな戦略を用いると述べ,国民統合・和解大臣として,北部・東部州の経済開発促進の一環として,計1,785の小規模事業(micro enterprises)の設置に向けたイニシアティブを始動した。

(2)海軍関係者の逮捕
 3日,警察犯罪捜査局(CID)は2006年にコロンボで11名のタミル学生が誘拐され失踪した事件に関与したとして,2名の海軍関係者を逮捕した。

(3)軍による土地の解放
 4日,軍は,ムライティブ県プドゥックディイルップ地区で現在軍が占拠している19エーカーの内,7.5エーカーの土地を返還した。

(4)強制失踪条約
 7日,政府は,2015年12月に署名した強制失踪条約を実施するための法案を国会に提出。

(5)ジャーナリストへの暴行事件を巡り,新たに軍情報部関係者が逮捕される
 21日,CIDは,2008年5月に,ネーション紙の当時副編集者であったケイス・ノヤール氏が誘拐・暴行された事件に関し,軍情報部の伍長を逮捕した。同事件を巡り,6人目の逮捕となった。

(6)コロンボ・フォート駅爆破事件の容疑者に対する判決
 29日,コロンボ高裁は,2008年に16名が死亡したコロンボ・フォート駅でのLTTEによる自爆テロ事件を支援したとして元LTTE兵士に対し,20年の懲役を言い渡した。
 
3 国連人権理事会

(1)国連人権高等弁務官の報告書の発出 
3日,国連人権高等弁務官は,新憲法制定や和解促進に向けた取組は評価できるものの,スリランカの「移行期の正義」プロセスは遅く,過去に犯された犯罪に対する責任追及を行う包括的な戦略が欠如していることは,永続的な平和,和解及び安定の達成へのモメンタムを弱める恐れがあるとの内容の報告書を発出。

(2)決議案の提出
13日,2015年に承認されたスリランカに対する国連人権理決議のフォローアップの決議がモンテネグロ,マケドニア,英国及び米国により国連人権理事会に提出された。

(3)決議の採択
22日,デシルバ外務副大臣は,第34回国連人権理事会で,スリランカは,第30回の人権理決議の任期を2年間延長する新決議案の共同提案国になると述べ,同決議が採択された。
 
4 外交

(1)シリセーナ大統領のインドネシア訪問
ア 6日,シリセーナ大統領は2017年環インド洋連合(IORA)に出席すべく,インドネシアに向けて出発し,ジャカルタで,ジョコ・インドネシア大統領の暖かい歓迎を受けた。シリセーナ大統領に同行したサマラウィーラ外相は同日,IORA閣僚級会談に出席。
イ 7日,シリセーナ大統領は,IORAで,IORAを通して築かれた地域間の関係を強化する必要があり,さらに,SAARC及びASEANリーダー間の対話も促進されるべき,インド洋の安全を保障し,平和な海洋安全の環境を整え,お互いの利益のために海洋安全強化に向けた協力を進めることは,我々の関心分野である,ほとんどの薬物密輸は,領海の外で行われており,いかなる国の権限も及ばない,自分はこれらの懸念に対処するため,IORAが「航海の自由」原則に沿った,安定した法的秩序の構築に取り組むことを提案すると演説。
ウ 同日,シリセーナ大統領はアンサリ印副大統領と協議を行い,アンサリ印副大統領は,シリセーナ大統領の指揮の下,インド・スリランカ関係が前進していることに喜んでいる,また,スリランカの和解政策を歓迎すると述べた。その後,シリセーナ大統領はズマ・南ア大統領と二国間協議強化に向けた協議を行い,ズマ・南ア大統領は,シリセーナ大統領の持続可能な平和の構築に向けた取組を評価し,スリランカへの支援を約束。シリセーナ大統領は,ターンブル豪首相とも協議を行い,同豪首相は,エネルギー分野の開発での技術支援を約束し,経済と貿易の分野での関係強化を期待する旨述べ,また,シリセーナ大統領を豪州に招待した。さらに,シリセーナ大統領はハシナ・バングラデシュ首相と協議を行い,両首脳は2国間関係強化の重要性を強調し,シリセーナ大統領は,近く特別チームをバングラデシュに送り,二国間の経済・貿易関係強化の可能性を調査すると述べ,ハシナ・バングラデシュ首相はシリセーナ大統領をバングラデシュに招待した。
エ 8日,シリセーナ大統領はインドネシアへの訪問を公式訪問に切り替え,ジョコ・インドネシア大統領と自由貿易協定締結に向けて協議を行い,スリランカの干ばつに対するインドネシア政府の米の支援に謝意を示し,二国間関係強化に向けた意気込みを伝え,ジョコ・インドネシア大統領をスリランカに招待。協議後,海洋・漁業分野での協力及び伝統的産業のプロモーションを行うとの内容に合意し,漁業セクターのガバナンス強化の分野で合同コミュニケに署名した。

(2)ベネット・ニュージーランド食品安全大臣一行の当地来訪
 二国間の関係強化に向け,ベネット・ニュージーランド食品安全大臣が率いる,約14名から成る経済団体が,当地を来訪。

(3)ジャヤスーリヤ国会議長他のイラン訪問
 イラン議会の招待を受け,ジャヤスーリヤ国会議長と,ファウジー国民統合・和解担当国務大臣が,イランを訪問し,ラリジャニ国会議長と,二国間の関係強化につき協議を行った。

(4)パシフィック・パートナーシップ2017
 7日から,南部州ハンバントタ港でパシフィック・パートナーシップが開催され,ミャンマー,マレーシア,ベトナム,米国,日本,豪州及びカナダが参加。

(5)セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣のミャンマー訪問
 7~10日にかけて開催されている,アジア太平洋デジタル・ヘルス会議に参加するため,セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣がミャンマーを訪問。

(6)EU・スリランカ合同委員会の開催
 13~14日,コロンボで,EU・スリランカ合同委員会が開催され,ガバナンス・法の統治・人権に関する作業部会の二度目の協議が行われた。合同委員会のために当地を来訪したEUの一行は,ウィクラマシンハ首相を表敬し,首相は同作業部会がカバーしている分野で進展を見せるとの政治的コミットメントを示した。EU側は,現政権の和解政策に対する取組を評価した。

(7)伊韓国外相の来訪
ア 15日,スリランカと韓国の国交樹立40周年を記念し,伊韓国外相が当地を来訪。同日,伊韓国外相は,首相府官邸でウィクラマシンハ首相と協議を行い,韓国で出稼ぎを行うスリランカ人労働者の韓国への貢献を称え,また,スリランカのITや教育分野及びメガポリス事業への投資に関心があると述べた。また,現政権の和解に向けた取組を称えた。これに対し,ウィクラマシンハ首相は,国家教育機関(National Institute of Education),オンライン図書室サービス及び職業訓練での支援を求めた。
イ 同日,伊韓国外相はサマラウィーラ外相と協議を行い,協議後,サマラウィーラ外相は記者会見で,韓国政府は,干ばつ被害に20万ドル相当の支援を行うことに同意し,また,バンダラナヤケ国際外交訓練機関(Bandaranaike International Diplomatic Training Institute)と韓国国家外交アカデミー(Korean National Diplomatic Academy)の間で覚書が締結されたと述べた。両機関は,それぞれの外務省下に置かれている。

(8)サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣のベルギー訪問
 15日,ブリュッセルでサマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,欧州貿易担当弁務官(European Commissioner for Trade)と,EUとスリランカの貿易・投資強化に向けた協議を行った。

(9)ラナトゥンガ港湾・海運大臣のモロッコ訪問
 16~21日にかけて,モロッコのダカールで開催される「21世紀の新たなアフリカに向けて」をテーマとしたクランス・モンタナ・フォーラムに特別ゲストとして出席するため,ラナトゥンガ港湾・海運大臣がモロッコを訪問。

(10)シリセーナ大統領の露訪問
ア 22~25日にかけシリセーナ大統領が露を訪。22日,大統領は露に到着し,モルグロフ露外務次官から出迎えを受けた。
イ 23日,シリセーナ大統領はプーチン露大統領と協議を行い,両首脳は,二国間の経済関係強化に向けたコミットメントを示した。協議後,漁業分野での協力合意,また,エネルギー,貿易・商業,農業,教育,司法及び国防の分野での関係を強化するとの内容の2つの覚書が締結された。また,露の軍事備品の購入に向け,1億3千5百万ドル相当の新たなクレジット・ラインが締結された。さらに,シリセーナ大統領にはプーチン露大統領から,二国間の強い関係の象徴として19世紀のキャンディー王国時代の王国の剣が送られた。同剣は,1906年に英国に渡ったものの,その後,露がオークションで買っていたもの。
ウ 24日,シリセーナ大統領はメドヴェージェフ露首相と協議をし,同首相は,スリランカとの経済的関係強化にコミットメントを示した。これに対し,シリセーナ大統領は露との関係強化に期待を示した。
エ 大統領にはサマラウィーラ外相,プレマジャヤンタ科学・技術・研究大臣,アマラトゥンガ観光開発・キリスト教・土地大臣,サマラシンハ技術開発・職業訓練大臣,ナーウィンナ出入国管理・ワヤンバ開発・文化大臣,ジャヤセカラ・スポーツ大臣及びフェルナンド観光開発・キリスト教副大臣が同行。

(11)ラージャパクサ司法・仏法大臣の外遊
 5月12~14日にかけて,スリランカで開催される国際ウェサック・デーには,世界の仏教国からの参加が見込まれており,シリセーナ大統領の世界各国首脳への招待メッセージを伝えるため,現在,ラージャパクサ司法・仏法大臣が,カンボジア,ベトナム,ネパール,ミャンマー,そしてラオスを訪問。

(12)欧州投資銀行(EIB)一行の来訪
 27日,当地に3日間の予定で来訪したEIBの一行が財務省で記者会見を開き,現政権により示された進展により,EIBからスリランカへの持続可能な開発に寄与する投資を増額させる意向を表明した。

(13)パキスタン海軍艦船の寄港
 12日,二隻のパキスタン海軍艦船がコロンボに親善寄港し,15日に出港した。

(14)豪州国境警備隊からの装備品寄贈
 15日,豪州国境警備隊が,スリランカ海軍の「ラトナディーパ号」に4万米ドル相当のエンジンを寄贈した。

(15)印軍関係者とスリランカ軍関係者の協議
 22日から3日間の予定でスリランカとインドの第6回軍関係者協議(Army to Army Staff Talks: AAST)が開始された。

(16)米海軍船艦の寄港
 27日,米海軍の船艦が訓練のため,4日間の滞在日程でコロンボ港に寄港した。

(17)英国テロを受けた弔辞
 23日,当地外務省は,22日に起きた英国ロンドンでテロが発生したことに弔辞を発表。スリランカは全てのテロを非難する,テロには,国際社会が協力して立ち向かわなければならないとの内容が記されている。(24日付外務省公式ウェブサイト)

(18)北朝鮮代表団への査証拒否
 17日,当国カトナヤケでスリランカ・北朝鮮友好協会主催で開催されたセミナーに出席予定であった北朝鮮国籍者4名にスリランカ政府が査証発給を拒否した。