当国情勢
平成29年9月18日
2017年7月1日 - 7月31日
1 内政
(1)シリセーナ大統領の統一国民党(UNP)への不満表明
4日,シリセーナ大統領は閣議で前政権関係者に関する汚職疑惑捜査の停滞に不満を抱えている,もし自分(大統領)が治安省及び法務長官オフィスをコントロールしていれば3ヶ月で捜査が完了していた,もしラージャパクサ政権が復活すると自分(大統領)と家族が真っ先に追求されるが,ウィクラマシンハ首相やUNP大臣には問題が生じないので,一部のUNP閣僚と前大統領の間で水面下の取引があるとして不満を表明し,UNPを批判。大統領とウィクラマシンハ首相含むUNP幹部は非公開の会議をもうけ,次の3ヶ月で10件の重大案件で進展を見せることが合意された。
(2)憲法改革を巡る動き
ア 3日,ニャーナラタナ大僧正が率いるアスギリヤ派の僧侶連盟(Sanga Sabhawa)が新憲法は必要ない,選挙制度改革を憲法修正の形で行うことはあり得るが,その場合でも憲法における仏教の位置づけの変更,「統一」国家の変更,及び実権の有する大統領制の廃止には反対する旨の内容の決議を採択。
イ 4日,アマラプラ派及びラーマーニャ派の大僧正,そしてアスギリヤ派及びマルワッタ派の副大僧正が新憲法制定に関する協議を行い,新憲法は国内で更に多くの問題を引き起こすので不要とする一方で選挙制度改革を含む憲法修正を提案する内容との意見書(memorandum)を発出。
ウ 6日,シリセーナ大統領は大僧正を表敬し,スリランカを「統一」国家と記した憲法第二章及び仏教に特別の地位を与えると記した第9章を修正しない旨で同意。
エ 19日,ウィーラワンサ国家自由前線(NFF)党首がジャヤスーリヤ国会議長に憲法制定議会からNFF議員全5名が離脱する意向を記した文書を提出。
(3)州議会選挙の延期
25日,閣議は,州議会選挙を別々に行うと資金及び民主主義の側面から弊害が多い,憲法及び州議会選挙法を修正することで,全ての州議会の選挙を同時に行うとの内容の覚書を承認した。同覚書はウィクラマシンハ首相が提出していたもの。これにより,今年中に開催が予定されていた東部州,サバラガムワ州及び北中部州の州議会選挙が延期されることとなった。
(4)ハンバントタ港運営権に係る中国との契約
29日,スリランカ政府と中国招商局港口控股有限公司(China Merchants Ports Holdings:CMPort)の間でハンバントタ港の運営権譲渡に関する合意文書が署名された。
(5)新人事
ア 4日,大統領府でフェルナンド新大統領秘書官(前東部州知事),カピラ・ワイダヤラトネ新国防省次官,ロヒータ・ボゴラガマ新東部州知事(元外務大臣),そしてマヘッシュ・セナナヤケ新陸軍司令官が就任した。
イ サマラウィーラ財務・マスメディア大臣はラゼーン・サリー・シンガポール国立大学准教授を,新財務省顧問として任命。
ウ 29日,プラサド・カリヤワサム前駐米大使が新外務次官として任命された。ウィーラコーン外務次官は観光開発省次官に異動となった。
(6)軍事
ア 2日,シリセーナ大統領の出席のもと,スリランカ海軍最新かつ最大の新型外洋巡視船(Advanced Offshore Patrol Vessel)「サユララ」の就役式が実施された。「サユララ」は海軍の要求を元に印ゴア造船所で建造された。主な諸元は全長約105m,幅約14m,最大速度は26ノット(巡航速度は12~14ノット)であり,7000マイルの行動範囲を有する。またヘリコプター1機を運用でき,哨戒や偵察,捜索救難,HA/DR等の任務が期待されている。
イ 5日,スリランカ海兵隊と陸軍コマンド部隊,特殊部隊らが上陸演習「アリゲーター」を実施した。約100名の海兵隊員と60名のコマンド部隊等が参加した他,海軍からは上陸用舟艇や沿岸警備艇等が参加した。本演習の目的は関連部隊と連携し,海や陸の敵の脅威に対して作戦即応性を拡大させるもの。
ウ 10日,スリランカ空軍のカトナーヤカ基地航空機整備群で整備された2機のF-7戦闘機が,ジャヤンパティ空軍司令官に引き渡された。当施設群は2016年始め,中国企業M/S CATIC の技術的支援によって創設されたもの。
エ 12日,スリランカ海兵隊は水陸両用演習「Blue Whale III」を実施した。海兵隊から約160名の隊員が参加したほか,海軍からは上陸用舟艇や快速攻撃艇,空軍からF7戦闘機やMi17ヘリコプターが参加した。
オ 26日,中国人民解放軍建軍90周年記念式典がコロンボで開催された。
(7)治安
ア 9日,北部州ジャフナ県で,チェックポイントでの停止命令に従わなかったトラックに警察が発砲し,25歳の青年が死亡した。これを受け地域住民が同地域及びポイント・ペドロの警察チェックポイントの警察車両を破損させ,状況が緊迫したため特別任務部隊(STF)が派遣される騒ぎとなった。
イ 22日,当地著名タミル人判事であるエランチェリヤン・ジャフナ高裁判事及び家族が乗る車が渋滞に巻き込まれ,同車をバイクで先導していた警察官二名が渋滞に対応しようとしたところ,保持していた拳銃を何者かに取られ,銃撃され,内一名が死亡する事件が発生した。判事には怪我はなかた。25日,容疑者であった元LTTE兵士が出頭し,逮捕された。同元兵士は紛争後,社会復帰訓練を受けていなかった。
2 国民和解
(1)県レベルの和解委員会設置
シリセーナ大統領の意見書(memorandum)に基づき,閣議は県レベルで和解委員会を設置し,宗教間及び民族間対立に対応し,国民和解を促進する案を承認した。各委員会は,県行政官,宗教リーダー,警察,元判事,校長等で構成される。
(2)軍の取組
ア 3日,軍はジャフナ県の54エーカーの土地を187家族に返還した。また,19日,ムライティブ県の軍基地の一部であった189エーカーの土地を元の住民に返還した。
イ 7日,ムライティブ病院血液バンクの要請に応えて350名以上のスリランカ軍兵士(北部州ムライティブ駐在)が献血した。
ウ 東部州駐在のスリランカ軍が同州バティカロア県で100台の車いすを地域住民に配布した。また,北部州ジャフナ県では20日,同県駐在のスリランカ軍がパソコン3台をIT教育強化に向けた支援の一貫として学校に寄贈した。
(3)ダサナヤケ元海軍報道官の逮捕
12日,警察犯罪捜査局(CID)はダサナヤケ海軍准将・元海軍報道官を,2008年に発生した11名のタミル青少年誘拐・失踪事件に関与したとして逮捕された。
(4)大統領の失踪者局設置法案署名
ア 20日,シリセーナ大統領は,2016年8月に国会で成立していた失踪者局(OMP)設置法案に署名し,これによりOMP設置に向けた動き始動されることとなった。OMPは,シリセーナ大統領が大臣を務める国民統合・和解省の管轄下に置かれる。今後の動きとして,憲法委員会の提言に基づき大統領はOMPの7名の委員及び委員長を任命する必要がある。OMPのマンデートは1948年から。
イ 21日,グテーレス国連事務総長が,シリセーナ大統領がOMP設置法案に署名したことはスリランカにとって大きな前進である,国連には同局を支持する準備があるとの声明を発表。
(5)元LTTE兵士への支援
2012年に学位を取得した36名のLTTE元兵士に,北部州の国営企業の職を与えることが決定された。
3 外交
(1)タラール・サウジアラビア皇子の来訪
4日,カルナナヤケ外相の招待で来訪中のサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール皇子が同外相を表敬し二国間の関係強化に向けた協議を行った。
(2)海軍司令官のサウジアラビア海軍訪問
4日,サウジアラビア海軍司令官の招聘を受け,同国を訪問中のウィジェグナラトナ海軍司令官が,同国海軍司令部においてアルスルタン海軍司令官と会談し海軍への訓練等につき協議した。
(3)スリランカ海軍司令官の訪印
7日,スリランカ海軍司令官はインドを訪問し,スリランカ海軍用に建設されている105m級外洋巡視船(Offshore Patrol Vessel)の最終検査を行った。
(4)エマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者の来訪
ア 10~14日にかけ,当地を来訪したエマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者は北部州ワウニア県を訪問し,ワウニア裁判所で北部州の判事らと協議した。
イ エマーソン特別報告者はラージャパクサ司法・仏法大臣とも協議し,スリランカ警察は大半の容疑者を拷問している,テロ容疑者として拘留されている拘留者数は200名に及ぶと言及したことに対し,ラージャパクサ司法・仏法大臣はそのような誤った情報はどこから入手したのか,テロ防止法(PTA)下で拘留されている拘留者数は71名である,メイ英首相は最近,対テロ活動に従事するオフィサーを守るには人権法は鑑みないと発言している,英国がスリランカと同じ対テロ政策を実施する中,英国人の国連職員がスリランカを批判することはばかげている(absurd)であると反論し,議論が過熱した。
ウ 14日,エマーソン特別報告者は当地への訪問を終えるにあたり,記者会見を開き,スリランカの人権侵害問題に関し,国際社会の我慢も限界に近づきつつある,国連人権理事会決議内容の実施プロセスも遅いだけではなく,停止(halt)されているようだ,スリランカの対テロ法は世界の中でも一番ひどいとして批判した。
エ 18日,シリセーナ大統領は閣議で,誰がエマーソン特別報告者にPTA下で拘留されている元LTTE兵士との面会を許可したのか問いただした。同面会は外務省が許可したもの。
オ 19日,セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣兼合同スポークスパーソン(UNP)は,エマーソン特別報告者の訪問結果及び声明にスリランカ政府は不満に感じている,今回は外務省がエマーソン特別報告者の拘留者(元LTTE兵士)との面会を許可したが,今後外国人が拘留者と面会する場合は,外務省は国防省及び刑務所委員長(Prisons Commissioner General)と協議しなければならない,シリセーナ大統領はすでに外国人オフィシャルの当地来訪を規制(regulate)し,監督(monitor)する新たな正式手続きを導入するよう指示したと述べた。同日,ジャヤセカラ・スポーツ大臣兼合同スポークスパーソン(スリランカ自由党:SLFP)はシリセーナ大統領はエマーソン特別報告者が拘留者と面会したことに対し決して不愉快になっている訳ではない,ただ,このような事項は国防省といった関連省庁にも知らされることを望んでいるだけだと発言。
(5)シリセーナ大統領のバングラデシュ訪問
ア 13日から3日間,シリセーナ大統領がバングラデシュを公式に訪問。大統領のバングラデシュ公式訪問は今回が初めてであり,カルナナヤケ外務大臣,アルウィハーレ農業担当国務大臣,グレロ高等教育担当国務大臣,アラギヤワンナ財務・マスメディア副大臣及びムットゥヘッティガマ港湾・海運副大臣が同行。
イ 14日,シリセーナ大統領はハミード・バングラデシュ大統領と二国間関係強化に向けた協議を行い,ハミード大統領はシリセーナ大統領の謙虚な姿勢を称えた。その後,両首脳は文化ショーを鑑賞し,晩餐会に出席した。同日,シリセーナ大統領はハシナ・バングラデシュ首相と協議し,強い基盤のもと,二国間の関係をさらに前進させる旨で合意した。また,貿易協定の締結及び特別経済区域を設置する旨で合意した。さらに,9つの覚書の締結に立ち会った。
ウ 15日,シリセーナ大統領は,スリランカへの投資フォーラムに主賓として出席し,スリランカの投資環境は整っているとして,投資を呼びかけた。同フォーラムではカルナナヤケ外務大臣及びアリ・バングラデシュ外務大臣も講演した。シリセーナ大統領は滞在中,バングラデシュ国会議長,野党代表及び保健大臣とも協議した。
(6)バラクリシュナン・シンガポール外務大臣の来訪
ア 17~21日にかけ,バラクリシュナン・シンガポール外務大臣が来訪。18日,同外相は大統領府でシリセーナ大統領を表敬し,和解政策への取組を称えた。また,北部州ジャフナ県を訪問し,ジャフナ図書館への本の寄贈,また,図書館職員への能力向上に向けた訓練を行う合意及びジャフナ病院への支援合意に署名予定であると述べ,シリセーナ大統領はシンガポールの支援に謝意を示した。バラクリシュナン外相は,巨大な隣国に囲まれた場所に位置するシンガポールとスリランカはパワーバランスと外交に常に通常以上に警戒しなければならないと述べた。同協議にはカルナナヤケ外務大臣,フェルナンド大統領秘書官,ウィーラコーン外務次官が同席。
イ 18日,バラクリシュナン・シンガポール外相はカルナナヤケ外相と協議し,協議後の記者会見でカルナナヤケ外相は,今年中にスリランカ・シンガポール間の自由貿易協定が締結される,二国間の関係は去年のウィクラマシンハ首相のシンガポール訪問もあり強化されていると発言。バラクシュナン外相は二国間の関係はこれまでも強化されてきた,シンガポールはスリランカの開発への取組への支援を継続していくつもりだと述べ,また,カルナナヤケ外相をシンガポールに招待した。外相協議にはセナナヤケ外務担当国務大臣及びウィーラコーン外務次官が同席した。
ウ 19日,バラクリシュナン・シンガポール外相はウィクラマシンハ首相を表敬した。同19日,バラクリシュナン・シンガポール外相は北部州ジャフナ県を訪れ,ウィグネーシュワラン北部州首席大臣及びクーレイ北部州知事と北部州開発及び和解に関し,協議を行った。また,ジャフナ図書館,ジャフナ大学及びジャフナ病院を訪問した。
(7)ビショップ豪外務大臣の来訪
ア 豪州・スリランカ国交樹立70周年を受け,ビショップ豪外務大臣が来訪。19日,カルナナヤケ外務大臣を表敬した。カルナナヤケ外相はスリランカ航空の豪メルボルンまでの直行便が10月から開始されると述べ,豪投資家のスリランカ投資を呼びかけた。ビショップ豪外相はセナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣とも協議し,スリランカのデング熱撲滅に向け協力する書簡(letter of intent)を交換した。これにより,豪からはデング熱防止及びコントロールに向け,WHOに5,800万ルピーの支援がされ,長期的支援として,豪モナッシュ大学とスリランカ保健・栄養・伝統医療省がパートナーシップを結び,バクテリアであるボルバキアをスリランカの蚊個体郡に感染させ,デング熱拡散予防を行う実験を行う。
イ 20日,ビショップ豪外相はウィクラマシンハ首相を表敬。同日,同外相はサンパンタン野党代表とも協議し,サンパンタン野党代表は,新憲法制定プロセスの停滞に関する懸念を伝えた。これに対し,ビショップ外相は豪州のスリランカ和解政策及び新憲法制定プロセスへの継続した支援を約束し,示された懸念はウィクラマシンハ首相に伝えると述べた。
(8)フェルトマン国連政務局長の来訪
ア ジェフリー・フェルトマン国連政務局長が2015年のスリランカ来訪のフォローアップとして19日から3日間,当地を来訪。19日,カルナナヤケ外務大臣を表敬し,現政権下で異なるコミュニティー間の融和に向けた取り組みが行われていると述べ,シリセーナ大統領及びウィクラマシンハ首相がスリランカの統一及び主権を保証していることに謝意を表した。カルナナヤケ外務大臣は国連が現政権の和解強化に向けた取組みを信頼していることを称賛した。同協議にはウィーラコーン外務次官及び国連常駐代表が同席した。同日,同政務局長はボーゴラガマ東部州知事及びアハメド東部州首席大臣と協議した。
イ 20日,フェルトマン国連政務局長は首相府でウィクラマシンハ首相及びラトナヤケ治安・南部開発大臣を表敬。
ウ 21日, フェルトマン国連政務局長はサンパンタン野党代表が率いるタミル国民連合(TNA)一行と協議し,一行は,北部州及び東部州に居住するタミル住民が抱える土地問題や失踪者問題等の指摘をし,タミル住民が抱えている問題に対する懸念を伝えた。
(9)豪海軍艦船「Arunta」のコロンボ寄港
10日,豪海軍のアンザック級フリゲート艦「Arunta」が親善訪問の為,コロンボに到着した。4日間の滞在中,両海軍はスポーツ交歓や親善訓練を実施する予定。
豪政府は先の豪雨災害の際,多くの支援物資や小型ボートをスリランカに供与した。
(1)シリセーナ大統領の統一国民党(UNP)への不満表明
4日,シリセーナ大統領は閣議で前政権関係者に関する汚職疑惑捜査の停滞に不満を抱えている,もし自分(大統領)が治安省及び法務長官オフィスをコントロールしていれば3ヶ月で捜査が完了していた,もしラージャパクサ政権が復活すると自分(大統領)と家族が真っ先に追求されるが,ウィクラマシンハ首相やUNP大臣には問題が生じないので,一部のUNP閣僚と前大統領の間で水面下の取引があるとして不満を表明し,UNPを批判。大統領とウィクラマシンハ首相含むUNP幹部は非公開の会議をもうけ,次の3ヶ月で10件の重大案件で進展を見せることが合意された。
(2)憲法改革を巡る動き
ア 3日,ニャーナラタナ大僧正が率いるアスギリヤ派の僧侶連盟(Sanga Sabhawa)が新憲法は必要ない,選挙制度改革を憲法修正の形で行うことはあり得るが,その場合でも憲法における仏教の位置づけの変更,「統一」国家の変更,及び実権の有する大統領制の廃止には反対する旨の内容の決議を採択。
イ 4日,アマラプラ派及びラーマーニャ派の大僧正,そしてアスギリヤ派及びマルワッタ派の副大僧正が新憲法制定に関する協議を行い,新憲法は国内で更に多くの問題を引き起こすので不要とする一方で選挙制度改革を含む憲法修正を提案する内容との意見書(memorandum)を発出。
ウ 6日,シリセーナ大統領は大僧正を表敬し,スリランカを「統一」国家と記した憲法第二章及び仏教に特別の地位を与えると記した第9章を修正しない旨で同意。
エ 19日,ウィーラワンサ国家自由前線(NFF)党首がジャヤスーリヤ国会議長に憲法制定議会からNFF議員全5名が離脱する意向を記した文書を提出。
(3)州議会選挙の延期
25日,閣議は,州議会選挙を別々に行うと資金及び民主主義の側面から弊害が多い,憲法及び州議会選挙法を修正することで,全ての州議会の選挙を同時に行うとの内容の覚書を承認した。同覚書はウィクラマシンハ首相が提出していたもの。これにより,今年中に開催が予定されていた東部州,サバラガムワ州及び北中部州の州議会選挙が延期されることとなった。
(4)ハンバントタ港運営権に係る中国との契約
29日,スリランカ政府と中国招商局港口控股有限公司(China Merchants Ports Holdings:CMPort)の間でハンバントタ港の運営権譲渡に関する合意文書が署名された。
(5)新人事
ア 4日,大統領府でフェルナンド新大統領秘書官(前東部州知事),カピラ・ワイダヤラトネ新国防省次官,ロヒータ・ボゴラガマ新東部州知事(元外務大臣),そしてマヘッシュ・セナナヤケ新陸軍司令官が就任した。
イ サマラウィーラ財務・マスメディア大臣はラゼーン・サリー・シンガポール国立大学准教授を,新財務省顧問として任命。
ウ 29日,プラサド・カリヤワサム前駐米大使が新外務次官として任命された。ウィーラコーン外務次官は観光開発省次官に異動となった。
(6)軍事
ア 2日,シリセーナ大統領の出席のもと,スリランカ海軍最新かつ最大の新型外洋巡視船(Advanced Offshore Patrol Vessel)「サユララ」の就役式が実施された。「サユララ」は海軍の要求を元に印ゴア造船所で建造された。主な諸元は全長約105m,幅約14m,最大速度は26ノット(巡航速度は12~14ノット)であり,7000マイルの行動範囲を有する。またヘリコプター1機を運用でき,哨戒や偵察,捜索救難,HA/DR等の任務が期待されている。
イ 5日,スリランカ海兵隊と陸軍コマンド部隊,特殊部隊らが上陸演習「アリゲーター」を実施した。約100名の海兵隊員と60名のコマンド部隊等が参加した他,海軍からは上陸用舟艇や沿岸警備艇等が参加した。本演習の目的は関連部隊と連携し,海や陸の敵の脅威に対して作戦即応性を拡大させるもの。
ウ 10日,スリランカ空軍のカトナーヤカ基地航空機整備群で整備された2機のF-7戦闘機が,ジャヤンパティ空軍司令官に引き渡された。当施設群は2016年始め,中国企業M/S CATIC の技術的支援によって創設されたもの。
エ 12日,スリランカ海兵隊は水陸両用演習「Blue Whale III」を実施した。海兵隊から約160名の隊員が参加したほか,海軍からは上陸用舟艇や快速攻撃艇,空軍からF7戦闘機やMi17ヘリコプターが参加した。
オ 26日,中国人民解放軍建軍90周年記念式典がコロンボで開催された。
(7)治安
ア 9日,北部州ジャフナ県で,チェックポイントでの停止命令に従わなかったトラックに警察が発砲し,25歳の青年が死亡した。これを受け地域住民が同地域及びポイント・ペドロの警察チェックポイントの警察車両を破損させ,状況が緊迫したため特別任務部隊(STF)が派遣される騒ぎとなった。
イ 22日,当地著名タミル人判事であるエランチェリヤン・ジャフナ高裁判事及び家族が乗る車が渋滞に巻き込まれ,同車をバイクで先導していた警察官二名が渋滞に対応しようとしたところ,保持していた拳銃を何者かに取られ,銃撃され,内一名が死亡する事件が発生した。判事には怪我はなかた。25日,容疑者であった元LTTE兵士が出頭し,逮捕された。同元兵士は紛争後,社会復帰訓練を受けていなかった。
2 国民和解
(1)県レベルの和解委員会設置
シリセーナ大統領の意見書(memorandum)に基づき,閣議は県レベルで和解委員会を設置し,宗教間及び民族間対立に対応し,国民和解を促進する案を承認した。各委員会は,県行政官,宗教リーダー,警察,元判事,校長等で構成される。
(2)軍の取組
ア 3日,軍はジャフナ県の54エーカーの土地を187家族に返還した。また,19日,ムライティブ県の軍基地の一部であった189エーカーの土地を元の住民に返還した。
イ 7日,ムライティブ病院血液バンクの要請に応えて350名以上のスリランカ軍兵士(北部州ムライティブ駐在)が献血した。
ウ 東部州駐在のスリランカ軍が同州バティカロア県で100台の車いすを地域住民に配布した。また,北部州ジャフナ県では20日,同県駐在のスリランカ軍がパソコン3台をIT教育強化に向けた支援の一貫として学校に寄贈した。
(3)ダサナヤケ元海軍報道官の逮捕
12日,警察犯罪捜査局(CID)はダサナヤケ海軍准将・元海軍報道官を,2008年に発生した11名のタミル青少年誘拐・失踪事件に関与したとして逮捕された。
(4)大統領の失踪者局設置法案署名
ア 20日,シリセーナ大統領は,2016年8月に国会で成立していた失踪者局(OMP)設置法案に署名し,これによりOMP設置に向けた動き始動されることとなった。OMPは,シリセーナ大統領が大臣を務める国民統合・和解省の管轄下に置かれる。今後の動きとして,憲法委員会の提言に基づき大統領はOMPの7名の委員及び委員長を任命する必要がある。OMPのマンデートは1948年から。
イ 21日,グテーレス国連事務総長が,シリセーナ大統領がOMP設置法案に署名したことはスリランカにとって大きな前進である,国連には同局を支持する準備があるとの声明を発表。
(5)元LTTE兵士への支援
2012年に学位を取得した36名のLTTE元兵士に,北部州の国営企業の職を与えることが決定された。
3 外交
(1)タラール・サウジアラビア皇子の来訪
4日,カルナナヤケ外相の招待で来訪中のサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール皇子が同外相を表敬し二国間の関係強化に向けた協議を行った。
(2)海軍司令官のサウジアラビア海軍訪問
4日,サウジアラビア海軍司令官の招聘を受け,同国を訪問中のウィジェグナラトナ海軍司令官が,同国海軍司令部においてアルスルタン海軍司令官と会談し海軍への訓練等につき協議した。
(3)スリランカ海軍司令官の訪印
7日,スリランカ海軍司令官はインドを訪問し,スリランカ海軍用に建設されている105m級外洋巡視船(Offshore Patrol Vessel)の最終検査を行った。
(4)エマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者の来訪
ア 10~14日にかけ,当地を来訪したエマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者は北部州ワウニア県を訪問し,ワウニア裁判所で北部州の判事らと協議した。
イ エマーソン特別報告者はラージャパクサ司法・仏法大臣とも協議し,スリランカ警察は大半の容疑者を拷問している,テロ容疑者として拘留されている拘留者数は200名に及ぶと言及したことに対し,ラージャパクサ司法・仏法大臣はそのような誤った情報はどこから入手したのか,テロ防止法(PTA)下で拘留されている拘留者数は71名である,メイ英首相は最近,対テロ活動に従事するオフィサーを守るには人権法は鑑みないと発言している,英国がスリランカと同じ対テロ政策を実施する中,英国人の国連職員がスリランカを批判することはばかげている(absurd)であると反論し,議論が過熱した。
ウ 14日,エマーソン特別報告者は当地への訪問を終えるにあたり,記者会見を開き,スリランカの人権侵害問題に関し,国際社会の我慢も限界に近づきつつある,国連人権理事会決議内容の実施プロセスも遅いだけではなく,停止(halt)されているようだ,スリランカの対テロ法は世界の中でも一番ひどいとして批判した。
エ 18日,シリセーナ大統領は閣議で,誰がエマーソン特別報告者にPTA下で拘留されている元LTTE兵士との面会を許可したのか問いただした。同面会は外務省が許可したもの。
オ 19日,セナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣兼合同スポークスパーソン(UNP)は,エマーソン特別報告者の訪問結果及び声明にスリランカ政府は不満に感じている,今回は外務省がエマーソン特別報告者の拘留者(元LTTE兵士)との面会を許可したが,今後外国人が拘留者と面会する場合は,外務省は国防省及び刑務所委員長(Prisons Commissioner General)と協議しなければならない,シリセーナ大統領はすでに外国人オフィシャルの当地来訪を規制(regulate)し,監督(monitor)する新たな正式手続きを導入するよう指示したと述べた。同日,ジャヤセカラ・スポーツ大臣兼合同スポークスパーソン(スリランカ自由党:SLFP)はシリセーナ大統領はエマーソン特別報告者が拘留者と面会したことに対し決して不愉快になっている訳ではない,ただ,このような事項は国防省といった関連省庁にも知らされることを望んでいるだけだと発言。
(5)シリセーナ大統領のバングラデシュ訪問
ア 13日から3日間,シリセーナ大統領がバングラデシュを公式に訪問。大統領のバングラデシュ公式訪問は今回が初めてであり,カルナナヤケ外務大臣,アルウィハーレ農業担当国務大臣,グレロ高等教育担当国務大臣,アラギヤワンナ財務・マスメディア副大臣及びムットゥヘッティガマ港湾・海運副大臣が同行。
イ 14日,シリセーナ大統領はハミード・バングラデシュ大統領と二国間関係強化に向けた協議を行い,ハミード大統領はシリセーナ大統領の謙虚な姿勢を称えた。その後,両首脳は文化ショーを鑑賞し,晩餐会に出席した。同日,シリセーナ大統領はハシナ・バングラデシュ首相と協議し,強い基盤のもと,二国間の関係をさらに前進させる旨で合意した。また,貿易協定の締結及び特別経済区域を設置する旨で合意した。さらに,9つの覚書の締結に立ち会った。
ウ 15日,シリセーナ大統領は,スリランカへの投資フォーラムに主賓として出席し,スリランカの投資環境は整っているとして,投資を呼びかけた。同フォーラムではカルナナヤケ外務大臣及びアリ・バングラデシュ外務大臣も講演した。シリセーナ大統領は滞在中,バングラデシュ国会議長,野党代表及び保健大臣とも協議した。
(6)バラクリシュナン・シンガポール外務大臣の来訪
ア 17~21日にかけ,バラクリシュナン・シンガポール外務大臣が来訪。18日,同外相は大統領府でシリセーナ大統領を表敬し,和解政策への取組を称えた。また,北部州ジャフナ県を訪問し,ジャフナ図書館への本の寄贈,また,図書館職員への能力向上に向けた訓練を行う合意及びジャフナ病院への支援合意に署名予定であると述べ,シリセーナ大統領はシンガポールの支援に謝意を示した。バラクリシュナン外相は,巨大な隣国に囲まれた場所に位置するシンガポールとスリランカはパワーバランスと外交に常に通常以上に警戒しなければならないと述べた。同協議にはカルナナヤケ外務大臣,フェルナンド大統領秘書官,ウィーラコーン外務次官が同席。
イ 18日,バラクリシュナン・シンガポール外相はカルナナヤケ外相と協議し,協議後の記者会見でカルナナヤケ外相は,今年中にスリランカ・シンガポール間の自由貿易協定が締結される,二国間の関係は去年のウィクラマシンハ首相のシンガポール訪問もあり強化されていると発言。バラクシュナン外相は二国間の関係はこれまでも強化されてきた,シンガポールはスリランカの開発への取組への支援を継続していくつもりだと述べ,また,カルナナヤケ外相をシンガポールに招待した。外相協議にはセナナヤケ外務担当国務大臣及びウィーラコーン外務次官が同席した。
ウ 19日,バラクリシュナン・シンガポール外相はウィクラマシンハ首相を表敬した。同19日,バラクリシュナン・シンガポール外相は北部州ジャフナ県を訪れ,ウィグネーシュワラン北部州首席大臣及びクーレイ北部州知事と北部州開発及び和解に関し,協議を行った。また,ジャフナ図書館,ジャフナ大学及びジャフナ病院を訪問した。
(7)ビショップ豪外務大臣の来訪
ア 豪州・スリランカ国交樹立70周年を受け,ビショップ豪外務大臣が来訪。19日,カルナナヤケ外務大臣を表敬した。カルナナヤケ外相はスリランカ航空の豪メルボルンまでの直行便が10月から開始されると述べ,豪投資家のスリランカ投資を呼びかけた。ビショップ豪外相はセナラトネ保健・栄養・伝統医療大臣とも協議し,スリランカのデング熱撲滅に向け協力する書簡(letter of intent)を交換した。これにより,豪からはデング熱防止及びコントロールに向け,WHOに5,800万ルピーの支援がされ,長期的支援として,豪モナッシュ大学とスリランカ保健・栄養・伝統医療省がパートナーシップを結び,バクテリアであるボルバキアをスリランカの蚊個体郡に感染させ,デング熱拡散予防を行う実験を行う。
イ 20日,ビショップ豪外相はウィクラマシンハ首相を表敬。同日,同外相はサンパンタン野党代表とも協議し,サンパンタン野党代表は,新憲法制定プロセスの停滞に関する懸念を伝えた。これに対し,ビショップ外相は豪州のスリランカ和解政策及び新憲法制定プロセスへの継続した支援を約束し,示された懸念はウィクラマシンハ首相に伝えると述べた。
(8)フェルトマン国連政務局長の来訪
ア ジェフリー・フェルトマン国連政務局長が2015年のスリランカ来訪のフォローアップとして19日から3日間,当地を来訪。19日,カルナナヤケ外務大臣を表敬し,現政権下で異なるコミュニティー間の融和に向けた取り組みが行われていると述べ,シリセーナ大統領及びウィクラマシンハ首相がスリランカの統一及び主権を保証していることに謝意を表した。カルナナヤケ外務大臣は国連が現政権の和解強化に向けた取組みを信頼していることを称賛した。同協議にはウィーラコーン外務次官及び国連常駐代表が同席した。同日,同政務局長はボーゴラガマ東部州知事及びアハメド東部州首席大臣と協議した。
イ 20日,フェルトマン国連政務局長は首相府でウィクラマシンハ首相及びラトナヤケ治安・南部開発大臣を表敬。
ウ 21日, フェルトマン国連政務局長はサンパンタン野党代表が率いるタミル国民連合(TNA)一行と協議し,一行は,北部州及び東部州に居住するタミル住民が抱える土地問題や失踪者問題等の指摘をし,タミル住民が抱えている問題に対する懸念を伝えた。
(9)豪海軍艦船「Arunta」のコロンボ寄港
10日,豪海軍のアンザック級フリゲート艦「Arunta」が親善訪問の為,コロンボに到着した。4日間の滞在中,両海軍はスポーツ交歓や親善訓練を実施する予定。
豪政府は先の豪雨災害の際,多くの支援物資や小型ボートをスリランカに供与した。