当国情勢

平成29年12月1日

2017年11月1日 - 11月30日

 1 内政
(1)地方議会選挙を巡る動き
ア 1日,ムスタファ州議会・地方議会大臣は地方議会選挙を新選挙制度の下実施する旨を記載した官報に署名した。これにより,2018年1月に地方議会選挙を実施するに向けた最後の障害がなくなった。
イ 11日,各地方議会の議員数を定めた官報が発出された。
ウ 15日,ペレーラ電力・再生可能エネルギー副大臣(統一国民党:UNP)は統一野党(JO)支持者が次期選挙に係る官報の合法性を裁判所に訴え出た,JOは選挙が無ければ選挙実施を声高に求め,選挙実施が決定すると選挙の延期を試みてくるとして批判。
エ 22日,控訴裁判所は,本年2月17日に発行された選挙区割りに関する官報を12月4日まで一時的に中止する判決を下した。
オ 控訴裁判所の判決を受け,統一野党(JO), UNP,人民解放戦線(JVP),タミル国民連合(TNA)がこれ以上の地方議会選挙の延期には反対の立場を表明。
カ 23日, JOはムスタファ州議会・地方議会大臣が地方議会の実施を達成できなかったとして,13議員の署名入りの不信任案を提出。
キ 23日,ジャヤワルダナUNP議員はムスタファ州議会・地方議会大臣に大臣職から辞職を求める考えを表明。
ク 24日,JVPはムスタファ州議会・地方議会大臣に対し,地方議会選挙及び州議会選挙の実施を達成していないとして不信任案を提出。
ケ 24日,ムスタファ州議会・地方議会大臣は,統一野党とJVPは前政権に対して不信任案を出すべきであった,地方議会選挙及び州議会選挙の延期は前政権によりもたらされたものである,前政権支持者らは選挙区割りを自らの有利になるよう活用しようと試みていると反論。
コ 26日,法務長官は3名の上級弁護士(Senior State Counsel)で構成された委員会を設置し選挙区割りに関する官報に係る法的要素を見直すよう指示。
カ 27日,選挙管理委員会は12月11日~14日に93の地方議会選挙の実施(7の市議会,18の町議会及び68の村議会)に向け,候補者の指名(nomination)を呼びかける旨公表。同日から候補者のデポジットの受付を開始した。
(2)ピヤセーナ・ガマゲ議員の繰り上げ当選
 最高裁が二重国籍者であったクマラシンハ・スリランカ自由党(SLFP)議員(ラージャパクサ前大統領派)の議員資格剥奪を決定したことを受け,10日,ピヤセーナ・ガマゲ議員(統一人民自由連合:UPFA)議員(SLFP,シリセーナ大統領派)が繰り上げ当選した。
(3)憲法改革を巡る動き
ア ラージャパクサ元司法・仏法大臣はジャヤスーリヤ国会議長に,新憲法制定に向け憲法制定議会設置を行うとの内容の動議は違憲であるとして,動議を取り消すよう求める書簡を発出。
(2)ハンバントタ港利権契約の修正
 15日,ジャヤセカラ・スポーツ大臣兼内閣共同報道官は,11月14日の閣議で支払計画にかかるハンバントタ港利権契約修正を承認した旨発言。中国招商局港口控股有限公司(CMPort)は11.2億米ドルの内30%を署名日に,10%を署名日から10日以内に,残り60%を署名日から6ヶ月以内に支払う。
(4)タミル政治の混沌
ア TNAの一部を成すEPRLFのプレマチャンドラン党首は,次期地方議会選挙はTNAと共闘せず,新たな政治戦線(new political front)を組んで挑む決定を下したことを明かにした。理由として,TNA内のリーダーの地位を占めるITAKが政府と協力する姿勢を示しつつ何ら成果を上げていないことを挙げている。
イ プレマチャンドランEPRLF党首の決定を受け,12日,ウィグネシューワラン北部州首席大臣は自らがTNAのリーダーシップに対抗すべく設置したタミル人民評議会(TPC)の特別協議の場で,60歳以上のタミル政治リーダーに対し,政界から引退するよう呼びかけ,また,タミル国民が求めているのは特権ではなくタミルに対する人権であると述べ,タミル政治政党に対し,来年1月に予定されている次期地方議会選挙に向け汚されていない(untainted)候補者を選出するよう呼びかけた。
(5)私立南アジア技術・医学学院(SAITM)医学部の廃止
 13日,法務長官は最高裁に対し,「シリセーナ大統領が任命した大統領委員会がSAITMを廃止し,SAITMを巡る課題を12月31日までに解決するよう提言した」旨を伝えた。
(6)元駐米大使への逮捕状発行
 17日,公金乱用の嫌疑でジャヤラトネ元駐米大使に対し逮捕状が発行された。
(7)SLFP統一への試み
 22日,プレマジャヤンタ科学・技術・研究大臣及びセナウィラトネ労働・労働組合関係・サバラガム開発大臣はラージャパクサ前大統領とSLFP内の統一の可能性につき協議し,前大統領は自らの支持者数名に対し,本件に対応するよう指示した。
(8)ウィーラワンサ国家自由戦線(NFF)党首の起訴
 30日,ウィマル・ウィーラワンサNFF党首に対し,同議員が大臣を務めていた2009年1月~2014年12月31の間に約7500万ルピーを不正に使用した疑いで起訴された。
 
2 国民和解
(1)デヒワラ警察署の諜報官の暗殺事件容疑者の無期懲役判決
ウ 1日,コロンボ高等裁判所は停戦合意中の2003年7月23日に発生したデヒワラ警察署の諜報官の暗殺事件のセルヴァトゥライ・キンバカラン(通称マーダン)被告を無期懲役とする判決を下した。
(2)戦争裁判と軍に関するシリセーナ大統領の発言
 9日,シリセーナ大統領は軍のイベントで,軍はこれまで自らの命をかえりみずにスリランカの安全を守ってきた,自分(シリセーナ大統領)が大統領の地位に居続ける限り、何人たりともいかなる戦争裁判(war tribunals)で証言するようなことは許さないと述べ,世界の人権団体はスリランカに圧力をかけることはできない,我々は国連に,スリランカが主権国家として自らの問題は介入されずとも自ら解決できる能力を持つことを伝えていると述べた。
(3)ヤスミン・ソーカ氏の指摘に対する軍の反応
 9日,軍は国連事務総長の専門家パネルの一員であったヤスミン・ソーカ氏(南アフリカ)がシルバ第58団少将を戦争犯罪者として指摘したことに驚きと失望を表明し,このような発言は,国連人権理決議(30/1)を強制的に実施させようとする試みであるとして批判した。
(4)元LTTE兵士の無期懲役判決
 10日,コロンボ高裁は2008年にコロンボのピリヤンダラ地区でLTTEがバスを地雷(claymore bomb)で攻撃し,30名が死亡し,42名が負傷した事件の2名の容疑者に無期懲役の判決を言い渡した。
(5)軍関係者の福利厚生の拡大
 大統領府によると,シリセーナ大統領は軍関係者の福利厚生を強化する方針を決定した。同方針は閣議での承認を得てから実施に移される。これにより,戦場で死亡又は障害を負った戦争英雄への月給及びその他手当を,戦場外で死亡又は障害を負った兵士にも支給範囲を広げ,また,これまで支払われてこなかった障害手当も支給されることになる。
(6)南部州ゴール県のシンハラ・ムスリムの衝突
 15日~17日にかけ,南部州ゴール県のギントタで,シンハラ・ムスリム間の暴力的な衝突が発生。同衝突に関与したとして19名(16歳~18歳)が逮捕され,18日,30日までの勾留決定の判決が下された。同衝突により複数の商店,家屋や車が被害を受け,また,5名が病院に入院した。
(7)コロンビア専門家の来訪
ア 11名から成るコロンビアの和解の専門家が当地を来訪し,先週,国民統合・和解省次官を表敬。同次官は現政権による取組を説明した。
イ 22日,一行はジャフナ軍管区司令部を訪問し,スリランカ軍によるコミュニティー活動について説明を受けた。
(8)LTTE霊廟の改装
 スリタランTNA議員が,北部州キリノッチ県で死亡したLTTE関係者が埋葬されるマハヴィル霊廟の改装のため400万ルピーを宛がう予定であり,これがキリノッチ市及びカラッチ市行政により承認された。
(9)LTTE追悼を巡る動き
ア 27日,ジャフナ大学の講師及び学生が戦没したLTTE兵士を弔う「英雄の日」(Mahaveer day)の式典を行った。
イ 28日,ウィジェワルダナ国防担当国務大臣は,LTTEは独立国家創設のために戦った非情なテロ団体でありこれは国際社会も認めているとして,北部州でLTTEを追悼する式典を行った者を訴追する,警察がすでに捜査を開始していると発言。
ウ 28日,ジャフナ大学ワウニア・キャンパスで,タミル学生が26日にプラバーカランLTTEリーダーの戦没日を祝ったことに対しシンハラ学生が大学側に抗議し,これを受け大学側はシンハラ学生とタミル学生の衝突を避けるべくキャンパスを無期限に休校した。
(10)軍による土地の返還
 30日,北部州ジャフナ県でこれまで軍が占拠していた29エーカーの土地が解放された。同土地には歴史ある教会が建っている。
 
3 軍事
(1)中国海軍船のコロンボ寄港
 10日,中国海軍船「戚継光」(乗船員549人,全長163.5m,幅22.2m)が親善のためコロンボ港に寄港した。船員は,14日までの寄港中,スリランカ海軍が計画した各種訓練やスポーツイベントに参加。船上レセプションを開催し,ウィジェワルダナ国防担当国務大臣らが出席。同船は,今年2月に就役したばかりであり大連海軍校に所属。本寄港は,中国海軍にとって今年4回目となる。500人以上の船員のほとんどは海軍学校(注大連艦艇学院の由)の生徒から構成され,スリランカ海軍との交流のためスリランカに寄港した。
(2)パキスタン海軍SAIFのコロンボ寄港
 パキスタン海軍は,9日,ダヤ・ガマゲ・スリランカ主要産業大臣を主賓として招き,コロンボに寄港したSAIF船上でレセプションを開催した。シャザード・イクバル司令官は,挨拶で,同寄港が両国間の外交,経済,文化,防衛面における強固な関係を示していると強調した。
(3)豪海軍のコロンボ寄港
 14日,豪海軍艦船(HMAS Newcastle)が4日間の親善寄港のためにコロンボ港に入港した。同艦船は縦138.1メートル,幅14.3メートルで184名が乗客している。
(4)ワイディヤラトナ国防次官の国連平和維持コンフェレンス出席
 14日,ワイディヤラトナ国防次官は加バンクーバーで開催された国連の平和維持に関する国防大臣会議2017に出席した。
 
4 外交
(1)マーラパナ外務大臣の中国訪問
ア 外交関係成立60周年を記念して中国を訪問したマーラパナ外務大臣は10月30日,王毅中国外交部長と重要な投資事業に係る協力関係強化に向けた協議を行った。王毅中国外交部長は,中国は「一帯一路」イニシアチブの下,スリランカとの伝統的な友好関係,政治的信頼,大規模インフラ事業,投資,貿易,海洋協力及び人的交流関係を強化したいと述べた。これに対し,マーラパナ外務大臣は第19回中国共産党大会実施への祝辞を伝え,中国からの長期にわたる経済的及び社会的開発への支援に謝意を示し,スリランカは中国との伝統的な友好関係を大変重視しており,さらなる協力関係強化を期待していると述べた。協議後,犯罪案件で相互に司法支援を行うとの内容の協定に署名した。
イ 10月31日,駐中国スリランカ大使館は,国交樹立60周年及び米・ゴム協定締結65周年を記念する式典を開催し,マーラパナ外務大臣及びChen Xiao Dong中国外交副部長が出席した。同式典でChen中国外交副部長は,中国が西側諸国から封鎖されていた際,圧力を受けながらもスリランカが価値のある支援を行ってくれたことを中国国民は忘れることはないと述べ,謝意を示した。一方,マーラパナ外務大臣は,中国との早期FTA合意達成を切望している,中国は信頼できる重要なパートナーである旨発言。
ウ 11月1日,北京で汪洋中国国務院副総理と協議し,二国間の友好関係を確かめあった。マーラパナ外務大臣は,スリランカは「一帯一路」政策を支持する考えを示し,中国投資を歓迎する旨述べた。これに対し,汪中国国務院副総理は,スリランカは地政学的な観点から「一帯一路」の巨大な利益を得ることができる,また,同政策はスリランカのインド洋の金融ハブとなるとの目的を支持するものであると述べ,また,中国は貿易不均衡を減少し,スリランカの経済的・社会的開発促進を支持する考えである旨述べた。
(2)英国連邦議会連盟カナダ支部一行の来訪
 英国連邦議会連盟カナダ支部一行が3日間の予定で当地を公式に訪問し,ウィクラマシンハ首相を表敬した。
(3)クマーラトゥンガ元大統領のグテレス国連事務総長表敬
 米ニューヨークを訪問したクマーラトゥンガ元大統領はグテレス国連事務総長を表敬し,スリランカ政府及び国民和解局(ONUR)による和解促進に向けた取組につき説明した。
(4)デシルバ国家政策・経済副大臣の第28回普遍的・定期的レビュー出席
 15日,デシルバ国家政策・経済副大臣はジュネーブで開催された第28回普遍的・定期的レビュー(UPR)に出席し,人権保護促進に向けた取組は政府の真摯なコミットメントがあっても一夜にしてできるものではないと述べ,理解を求めた。 
(5)第2回スリランカ・豪外務省間協議の実施
 16日,豪キャンベラで開催されていた第2回スリランカ・豪外務省間協議が終了した。同協議は二国間関係強化を見直し,地域内,そして国際的な課題に関する協議を行うもの。協議では特に開発協力,貿易と経済協力,人的交流,和解と人権,国境を越えた犯罪と人身売買,防衛協力と海洋問題,そして外務省間の協力関係に焦点を当てられた。
(6)ナヒヤーン・アラブ首長国連邦外務大臣の来訪
ア 18日,当地を来訪したナヒヤーン・アラブ首長国連邦外務大臣がシリセーナ大統領を表敬し,大統領は二国間の関係が迅速に強化されているとしてこれを歓迎する旨述べた。同協議にはデシルバ交通・民間航空大臣,アムヌガマ特別事業大臣他が同席した。
イ 同日,ナヒヤーン大臣はウィクラマシンハ首相を表敬した。
(7)国連平和構築委員会への出席
 20日,カーリヤワサム外務次官,クマラスワミ中央銀行総裁及びティッタウェッラ和解メカニズム調整事務局(SCRM)局長が国連平和構築委員会に出席し,現政権は暴力の再発防止に向け,包括的な改革に取組み,和解,平和,安定そして繁栄する国家を目指している旨説明した。
(8)ウィクラマシンハ首相の印訪問
ア 21日から印を訪問したウィクラマシンハ首相は23日, モディ印首相とバイ協議を行い,モディ印首相はスリランカにおける印との合同事業の実施を早めたい意向を伝え,これはスリランカ経済に良い影響を与えると説明した。これに対し,ウィクラマシンハ首相は,スリランカは合同事業実施を早めるべくいかなる取組も行うつもりであると述べた。同協議にはジャイシャンカル外務次官,ウィクラマシンハ首相夫人,ラナトゥンガ治安・南部開発大臣,エカナヤケ首相府次官他が同席した。
イ 23日,ニューデリーで開催された第5回サイバー・スペース国際会議に出席したウィクラマシンハ首相は個人の自由とサイバー・スペースのバランスを取ることは重要であると講演。
ウ 24日,ウィクラマシンハ首相はスワラージ印外相とスリランカの港開発や他の共同事業に関し協議を行い,印はこれら事業の実施促進を約束した。同協議にはエカナヤケ首相府次官が同席。
(9)シリセーナ大統領の韓国訪問
ア 文韓国大統領による招待を受け,シリセーナ大統領が27日から3日間の予定で韓国を訪中。今年はスリランカ・韓国外交関係樹立40周年に当たる。
イ 28日,ソウルに到着したシリセーナ大統領はCho Hyun外務副大臣及びChung Eyi-yong国家安全局長他の歓迎を受けた。大統領にはマーラパナ外務大臣及びガマゲ第一次産業大臣,アムヌガマ特別事業大臣,電力・再生可能エネルギー大臣が同行し,後にサマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣,及びアトゥコーララ海外雇用・司法大臣が合流。
ウ 29日,シリセーナ大統領は,文韓国大統領と協議し,経済,投資,文化協力に関する5つの合意文書に署名した。また,シリセーナ大統領の要請に対し,文大統領はホマガマに技術シティーを,カトナヤケに航空シティーを設置するための技術支援に合意した。また,文大統領は,スリランカと韓国は植民地,武装集団による活動(militant movement),独裁主義を経験し,ようやく民主主義を達成した共通の歴史を経験していると述べた。
(10)セナナヤケ外務担当国務大臣のケニア訪問
 ケニアを訪問したセナナヤケ外務担当国務大臣は27日,ケニヤッタ・ケニア大統領の大統領就任式典に出席。また,同大統領を表敬し,シリセーナ大統領による同大統領のスリランカへの招待の意向を伝達した。ケニヤッタ大統領は同国務大臣に対しケニアへのスリランカの投資家による投資を要請した。
(11)中国国防大学一行のスリランカ訪問
 22日,スリランカ訪問中の中国国防大学副校長Zhingwu少将率いる国防大学一行がワイディヤラトナ国防次官を表敬した。また一行は23日にウィジェグナラトナ国防参謀長を訪問し,教育訓練について意見交換を行った。
(12)北京市石景山区副区長が率いる調査団の来訪
 北京市石景山区副区長が率いる30名の政府関係者からなる貿易・投資等にかかる事実調査団がスリランカ投資庁を訪問。