当国情勢

平成30年6月25日

2018年4月1日 - 4月30日

1 内政

(1)ウィクラマシンハ首相に対する不信任決議案 4日,国会においてウィクラマシンハ首相に対する不信任決議案が,UNF105議員を含む反対122票,統一野党54議員を含む賛成76票で否決された。
 
(2)ウィクラマシンハ首相に対する不信任決議案否決後の動向
ア 5日,ラハマンUNP議員は,UNPは不信任決議案を支持した6大臣に対して不信任決議案を提出する旨述べた。他方,UNP情報筋によれば,6大臣中ジャヤセカラ大臣を除く5名は辞任する旨を既に伝達済み。(6日付デイリーミラー紙)
イ 5日,ディサナヤケSLFP幹事長は,シリセーナ大統領は,不信任決議案を支持した16名のSLFP議員全員に政権に残るよう要求している旨述べた。(6日付デイリーミラー紙)
ウ 5日,ウィクラマシンハ首相は,UNPの党内改革を行い,さらに国の発展に重点をおく旨述べた。(6日付デイリーニュース紙)
エ 6日,ウィクラマシンハ首相は,UNPによるSLFPの大臣に対する不信任決議案は,UNP全体としての決定ではないため取り下げるよう指示した。(7日付デイリーニュース紙,8日付サンデーアイランド紙・サンデータイムズ紙)
オ 6日,シリセーナ大統領は全政党に対して,政府としての現在の優先事項は,国のための開発戦力に注力することであると発言した。(7日付デイリーニュース紙)
カ 8日,カリヤワサム教育大臣は,シリセーナ大統領とウィクラマシンハ首相は内閣改造をシンハラ正月前に行うことに合意した旨述べた。(9日付デイリーニュース紙)
キ サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,UNP議長を辞任した。(9日付デイリーミラー紙)
ク 不信任決議案を支持した16名のSLFP議員は,辞任の意向をもっていると,16名のうちの1名が明かした。(9日付デイリーミラー紙)
ケ ピーリスSLPP議長は,ウィクラマシンハ首相が不信任決議案にTNAが反対する代わりに,TNAからの提案の内10項目を受け入れることになっており,そのうちの1つは,北部で軍の占有する650エーカーの土地を所有者に返却することである旨述べた。(10日付デイリーミラー紙)
コ 11日,UNP12議員から成る委員会は,新しいUNP党内ポストについて初協議予定。(10日付デイリーミラー紙)
サ 9日,SLFP中央委員会は,不信任決議案を支持した16議員について議論し,10日に行われる閣僚会議はボイコットすることを決定した。(10日付デイリーニュース紙)
シ 10日,アマラウィーラ漁業・水産資源開発大臣は,不信任決議案に関して,シリセーナ大統領とウィクラマシンハ首相の関係に影響を及ぼしておらず,SLFP中央委員会が不信任決議案を支持した大臣を含む全SLFP議員を政権に残すことを決めた旨述べた。(11日付デイリーニュース紙・デイリーミラー紙・アイランド紙)
ス 11日,不信任決議案を支持した16SLFP議員は,辞任することを決め,シリセーナ大統領は,辞任を承認した。(12日付デイリーニュース紙・デイリーミラー紙・アイランド紙)
セ セナラトナ保健大臣は,14日までに新内閣が発足し,辞任した6名の大臣のポストには別のSLFP議員が新たに就任する旨述べた。(12日付デイリーニュース紙)
セ 12日,不信任決議案を支持したSLFP「シ」派6名の大臣の辞任により空席となった所掌について,シリセーナ大統領は,閣内の大臣らで臨時的に兼任させる人事を行った。(13日付デイリーミラー紙・デイリーニュース紙・アイランド紙)
ソ 12日,不信任決議案を支持した16議員は,政権の役職の辞任はしたものの,すぐに現政権を離脱することはしない旨述べた。(13日付デイリーミラー紙)
タ 16日,アマラウィーラUPFA幹事長は,不信任決議案を支持したSLFP議員は,政権に残りシリセーナ大統領を引き続き支持する旨述べた。(17日付デイリーミラー紙)
チ アベイワルダナ前財務担当国務大臣は,不信任決議案を支持したSLFPの副大臣と国務大臣は,5月8日以降,独立したグループとして活動すると述べた。(20日付デイリーニュース紙)
ツ 19日,カリヤワサム教育大臣は,UNP大改革の内容について4月26日に決定し,30日より前に実施する旨述べた。(20日付デイリーニュース紙)
テ 23日,ラーマナヤケ社会進出促進・福祉・キャンディー遺産副大臣は,プレマダーサ住宅・建設大臣やディサナヤケ・プランテーション産業大臣が党内の重要な役職に就くべき,年上の政治リーダーは若い世代に機会を与えるべきであると述べた。(24日付デイリーミラー紙)
ト ウィーラコディ前技術開発・職業訓練大臣は,近いうちに不信任決議案を支持した16SLFP議員が現政権メンバーの詐欺や悪行を暴露すると述べた。また,同16議員は,独立したグループとして活動し,SLPPには参加しない,不信任決議案を支持したのは2020年より前に現政権を崩す,もしくは2020年以後にSLFPによる政権を確立する目的からであると述べた。(25日付デイリーミラー紙)
ナ 25日,UNP政治局は,カリヤワサム教育大臣を党幹事長,ディサナヤケ・プランテーション産業大臣をナショナル・オーガナイザー,ハシム高等教育・ハイウェー大臣を党議長,デシルバ国家政策・経済担当国務大臣を会計部長,ウィジェワルダナ国防担当国務大臣を副幹事長,ペレーラ電力・再生可能エネルギー大臣を労働組合担当幹事に任命し,26日の党常任委員会で承認を得ることを決定した。プレマダーサ住宅・建築大臣は副党首に,カルナナヤケ前外務大臣は党首補佐に留まる。(26日付デイリーミラー紙)
ニ サマラシンハ港湾・海運大臣は,24日のSLFP中央委員会では,党内改革及びメーデープログラムが協議され,連立政権の継続については触れられなかった旨述べた。(26日付デイリーニュース紙)
 
(3)新選挙制度への反応
ア 6日,シリセーナ大統領は新しい選挙制度は,重大な間違いであったと認めた。今回の制度を導入した結果,選出された代表者数は,4000名から8000名以上に増え,国はこの人数を維持するための資金不足から,元の4000名に修正することが必要。(7日付アイランド紙)
イ 6日,ガネーサンTPAリーダーは,各党のリーダーらは,州議会選挙は従来の選挙制度の下で実施することで暫定的に同意した旨述べた。11日,同リーダーは,少数政党がウィクラマシンハ首相に対し,州議会選挙は従来の選挙制度の下行うこと要求した旨述べた。(8日付サンデーオブザーバー紙,12日付デイリーミラー紙)
 
(4)現政権の今後の政策方針
ア 16日,ディサナヤケSLFP幹事長は,SLFPとUNPは残りの任期18ヶ月間,連立政権で協働し,政権として新しい共通のプログラムを発案し,内容が完成次第MoUに署名する方向性であると述べた。(13日・17日付デイリーニュース紙)
イ 18日,シリセーナ大統領は,イギリスで開催されている英連邦政府首脳会議(CHOGM)のビジネスフォーラムで演説し,SDGs達成のため,スリランカ政府は「Blue Green Economic Plan」を策定し,持続的且つ環境にも良い方法で天然資源を活用していく旨述べた。(19日付デイリーニュース紙)
 
(5)州知事の任命
 12日,シリセーナ大統領により,西部,北西部,サハラガムワ,中部,南部,北中部,ウワの7州の州知事が任命された。13日,中部州の知事に任命されていたクーレイ氏は北部州の知事に再任命され,中部州の知事にはウワ州知事に任命されていたP.B.ディサナヤケ氏が任命された。(13日付デイリーミラー紙,デイリーニュース紙)
 
(6)統一野党アルットガマゲ議員の逮捕
 16日,統一野党のアルットガマゲ議員は,2014年に備品購入に際し,3900万ルピーを横領した疑いで,財務犯罪捜査局(FCID)により逮捕された。(17日付デイリーニュース紙)
 
(7)ハンバントタ港に関する中国政府発言
 16日,中国外務省報道官は,ハンバントタ港が将来軍事利用されるとの憶測を否定し,同港の事業は中国とスリランカの二国間の平等と相互利益を基にした共同事業である旨述べた。(18日付デイリーニュース紙)
(8)州議会選挙
 24日,デーシャプリヤ選挙管理委員長は,早急に新選挙制度に係る諸問題を克服できれば,州議会選挙を12月上旬に開催する予定である旨述べた。(25日付デイリーニュース紙)
 
2 平和構築
(1)北部被害者女性を対象とした国民和解局(ONUR)プログラム
 クマラトゥンガ元大統領・ONUR議長は,最近ジャフナ市を訪問した際に,戦争未亡人を含む紛争の被害を受けた女性の生活水準向上を目的としたプログラムを開始する旨述べた。(3日付デイリーニュース紙)
 
(2)憲法改正及び移行期の正義
 4日,サマラウィーラ財務・マスメディア大臣は,憲法改正及び移行期の正義について,今年中に必ず進捗させる旨述べた。また,真実和解委員会の法案は首相のもとにあり,今年中に議会に提出すると発言。(5日付アイランド紙)
 
(3)外国人判事導入に対する反対
 6日,シリセーナ大統領は,現政権は,国際社会の勧める外国人判事が民族紛争中の軍事行為を調査をする考えに反対である旨述べた。(7日付デイリーニュース紙)
 
(4)ジャーナリストへの暴行事件を巡り,新たに軍情報部関係者の逮捕
 6日,2008年5月に当時ネーション紙の副編集者であったキート・ノヤール氏が誘拐・暴行された事件に関し,警察犯罪捜査局(CID)は元軍情報部のカルナセカラ氏を逮捕した。(15日付サンデーオブザーバー紙)
 
(5)第2回全国青年サミット
 21日,スリランカ開発ジャーナリスト・フォーラムによる第2回全国青年サミット(NYS)が開催され,NYSは,国民共存・対話・公式言語省に対して,少数派を含んだ包括的な青年と平和構築の政策を立案するよう提案した。本サミットは,青年と平和構築の関係性に係わるセミナー及びワークショップを実施したものである。(25日付デイリーミラー紙)
 
(6)失踪者局(OMP)
ア 27日,ピーリスOMP委員長は,5月12日から7月上旬までOMPは公聴会を実施予定,マナー,キリノッチ,マータラ,ムラティブ,バティカロア,ジャフナ,トリンコマリー,キャンディで失踪者家族等の関係者との会議を開催予定である旨述べた。(28日付デイリーミラー紙,29日付サンデーオブザーバー紙)
イ 国家平和協議会(NPC)のジハン・ペレーラ氏は,現在の政治危機により,平和構築に係る政府の動きに遅れがあり,OMPの稼働遅延や,他のメカニズムの設立が遅れることによって,戦争被害者を含むスリランカ国民及び国際社会からの信頼を蝕む可能性がある旨述べた。(30日付アイランド紙)
 
3 軍事
(1)インド沿岸警備艦がスリランカに到着
 3月30日,インドの沿岸警備艦がスリランカを親善訪問した。滞在中,スリランカ沿岸警備庁の職員40名に対して訓練を実施した。(3日付デイリーニュース紙)
 
(2)タイ海軍艦船のコロンボ港寄港
 6日,タイ海軍艦船「Bangpakong」「Makutrajakumarn」がコロンボ港に寄港した。(7日付国防省ニュースサイト他)
 
(3)国防次官のロシア訪問
 4日及び5日,ワイディヤラトナ国防次官はモスクワで開催されたモスクワ国際安全保障会議に出席し,「アジア:地域安全保障の様相」という題でスピーチを行った。(8日付国防省ニュースサイト)
 
(4)海上自衛隊艦船のハンバントタ港寄港
 9日,海上自衛隊艦船「あけぼの」がハンバントタ港に寄港した。(10日付国防省ニュースサイト)
 
(5)スリランカ軍はPKO活動により1億6千万米ドルを受領
 12日,セナナヤケ陸軍司令官は,2004年以降スリランカ軍はPKOへの部隊派遣により1億6千万米ドル以上を受領したと述べた。スリランカ軍はレバノンや南スーダン,マリ中央アフリカ,西サハラ等に部隊等を派遣している。(13日付デイリーミラー紙)
 
(6)パキスタン国防大学一行のスリランカ訪問
 15日から18日にかけ,パキスタン国防大学学生一行21名がスリランカを訪問している。一行は国防参謀長と陸軍司令官に表敬する他,ゴール等を訪れる予定。一行にはサウジアラビア及び中国からの留学生も含まれている。(17日デイリーニュース紙)
 
(7)国防参謀長がマレーシアで軍事展示会に参加
 国防参謀長と陸軍司令官が,16日から19日にかけてマレーシアで実施される軍事展示会(Defence Services Asia Exhibition)に参加する。(18日デイリーミラー紙)
 
(8)米太平洋陸軍軍人一行が陸軍参謀長に表敬
 16日,パシフィックパートナーシップ2018(PP18)に参加する米太平洋陸軍軍人一行がフェルナンド陸軍参謀長を表敬した。一行はノーブル米太平洋陸軍北部地域副司令官を筆頭に,PP18への参加及びスリランカ軍との軍事協力に関する協議のためにスリランカを訪問している。(18日デイリーニュース紙)
 
(9)2隻目の先進哨戒艦が就役
19日,ウィクラマシンハ首相臨席のもと,スリランカの2隻目の先進哨戒艦(Advanced Offshore Patrol Vessel)が就役し,「Sindurala」と命名された。(21日アイランド紙,デイリーミラー紙)
 
(10)ロシア海軍練習艦のコロンボ港寄港
 18日から22日にかけ,ロシア海軍練習艦「Perekop」がコロンボ港に寄港した。ラナシンハ海軍司令官及びマテリウ在スリランカ・ロシア大使が同艦を訪問した。同艦は3月1日にクロンシュタット港を出港し,約220名の士官候補生を乗せて約半年をかけウラジオストック港に向かう。コロンボを出港した後はジャカルタ港に寄港する予定。(24日付デイリーニュース紙)
 
(11)米海軍病院船マーシーのトリンコマリー港寄港
 25日,パシフィックパートナーシップ2018に参加する米海軍病院船「マーシー」がトリンコマリー港に入港した。5月8日までトリンコマリー近辺において,スリランカ,米や日本が協力して医療支援活動や災害対処訓練等が実施される。(26日付アイランド紙他各紙)
 
4 外交
(1)シリセーナ大統領のイギリス訪問
ア 16~20日,シリセーナ大統領は,英連邦政府首脳会議(CHOGM)に参加するために,イギリスを訪問。訪問中,次回の会議が2019年にスリランカで開催されることが決定し,初のアジア国での開催となる。また,シリセーナ大統領は,滞在中に,イギリス在住スリランカ人と議論をする場をもち,イギリス等国外にいるスリランカ人が受け取っているスリランカ情勢に関する情報の大部分が誤っていることを問題として指摘した。(13日付デイリーミラー紙・18日付デイリーニュース紙・19日付デイリーニュース紙)
イ 18日,イギリス訪問中のシリセーナ大統領は,フォックス英国際貿易大臣と今後の二国間貿易強化について議論をし,同大臣は,スリランカへの投資の機会について公式ウェブサイトにも掲載することを約束した。(20日付デイリーニュース紙)
 
 
(2)イラン国会議長のスリランカ訪問
 18日,イランのラリジャニ国会議長と36名の外交団が,シリアの紛争について議論するために,スリランカに到着した。3日間の滞在予定で,首相や国会議長と面会予定。(19日付デイリーミラー紙)
 
(3)ハキーム都市計画上水大臣のパキスタン訪問
 13日,パキスタンで開催された衛生に関する南アジア会議に出席したハキーム都市計画・上水大臣は,スリランカは衛生に関するMDGを期限前に達成することができ,今後も推進予定である旨述べた。(19日付デイリーニュース紙)
 
(4)ジャヤスーリヤ国会議長のベトナム訪問
 23~27日,ジャヤスーリヤ国会議長及び議会代表団は,ベトナム国民議会からの招待を受け,ベトナムを訪問。(25日付デイリーニュース紙)
 
(5)中国のハンバントタ港運営に対する見解
 20日,Cheng Xueyuan大使は,ウィクラマシンハ首相を表敬し,中国がハンバントタ港を軍事的目的で利用するという疑惑は事実無限である。中国は,二国間の信頼関係に基づきスリランカの経済発展に協力していきたい旨述べた。また,同日,同大使は,ラナシンハ海軍参謀長を表敬して同様の発言をしたところ,同海軍参謀長は日本の軍艦船が最近ハンバントタ港に問題なく停泊したことは,同港の開放的及び商業的性格を示していると述べた。(24日付アイランド紙)