当国情勢
平成30年8月30日
2018年6月1日 - 6月30日
1 内政
(1)Perpetual Treasury社(PTL)からの資金受け取り疑惑
ア ジャヤスーリヤ国会議長は,フェルナンド大統領秘書官に,PTL社から資金を受け取った議員の名簿開示を既に2度要求しており,数日前に3度目の要求をしたと述べた。また,ルーパシンハ国立公文書館局長は,国立公文書館に保管された資料は,通常公に開示するのは30年後だが,大統領秘書から公式な要求があれば公開できると述べた。(2日付デイリーミラー紙)
イ 1日,サマラウィクラマ開発戦略・国際貿易大臣は,PTL社からの資金を受け取った議員の名簿がソーシャルメディアで公開されているが,自分は受け取っていないにも関わらずその名簿に名が記載されており,フェルナンド大統領秘書官に公式な名簿を早急に開示するよう求めたと述べた。(2日付デイリーミラー紙)
ウ 「自由で公正な選挙運動」(CaFFE)のテンナコーン理事長は,約164議員が各100万ルピーほどPTL社から受け取っているが,この問題を解決するには,中央銀行の国債売却を巡る汚職疑惑に関する報告書と共に公開することであると述べた。(5日付アイランド紙)
エ 7日,中央銀行の国債売却を巡る汚職疑惑に関する報告書により,セーナシンハ国際貿易担当国務大臣が,PTL社から2015年及び2016年に合計300万ルピーを受け取っていることが判明した。(8日付デイリーミラー紙)
オ 13日,セナラトナ保健・栄養・伝統医療大臣は,メディアが言及する資金を受け取った118名のリストは存在しない,受け取った議員とその額は国際売却を巡る汚職疑惑調査の最中に既に報告書としてCIDにより公開されていると述べた。(14日付デイリーミラー紙)
(2)SLFPの新幹部任命
ア 3日,バッタラムッラでSLFP執行評議会とオール・アイランド委員会の合同会議が開催され,ピヤダーサ・ケラニヤ大学教授が暫定的なSLFP幹事長に,ディサナヤケ灌漑・水資源管理・地方経済大臣がナショナル・オーガナイザーに任命された。(4日付デイリーニュース紙)
イ 3日,新しく就任したピヤダーサSLFP幹事長は,SLFPはこれからより良い経済を導くことに焦点を当て,党を強化するためにも45日以内に党内再編成を行うと述べた。(4日付デイリーニュース紙,5日付デイリーミラー紙)
(3)ラージャパクサ前大統領の発言
4日,ラージャパクサ前大統領は,自分が主導する新政権が立ち上がった際には,税金を20%減額すると述べ,またハンバントタ地区の鉄道を民営運営化する政府の決定を非難した。(5日付アイランド紙)
(4)国会副議長の選出
ア 5日,国会にて副議長の選出が秘密投票で行われ,UNPのノミネートしたクマラシリ議員(UNP)が97票獲得し,JOのノミネートしたフェルナンドプッレ議員の53票を上回り,副国会議長に選出された。(6日付デイリーミラー紙)
イ 6日,アベーワルダナJO議員は,国会議長及び国会副議長が同じ政党出身であることは,国家の概念(National government concept)に反しており,国会議長がUNP議員で国会副議長はSLFP議員であるべきだと指摘した。(7日付デイリーミラー紙)
(5)20次憲法修正案
ア 11日,ラージャパクサ高等教育・文化大臣は,地方自治体が盤石ではない今,20次憲法修正案により,実権のある大統領制を廃止すれば国内は無政府状態に陥ってしまうと述べた。(12日付デイリーミラー紙)
イ 8日,フォンセカ持続可能な開発・野生生物・地域開発大臣は,現在の国内情勢は20次憲法修正案を実施するには適しておらず,よりふさわしいタイミングで提出し直すべきであると述べた。(11日付デイリーミラー紙)
ウ ディサナヤケJVPリーダーは,20次憲法修正案について,いかなる提案や修正案も歓迎するが,実権のある大統領制の廃止の部分については交渉の余地はないと述べた。(17日付サンデーオブザーバー紙)
(6)ゴタバヤ・ラージャパクサ前国防次官の米市民権放棄
11日,ガンマンピラPHU党首は,記者会見でゴタバヤ・ラージャパクサ元国防次官から米国市民権の放棄の法的位置づけとその方法について問われたとしつつ,放棄は出入国管理及び国籍法により行われ,簡単で短期間で可能であるので米市民権は次期大統領選挙に立候補する上で障害にはならないと述べた。(12日付デイリーミラー紙)
(7)新国務大臣及び副大臣の任命
12日,シリセーナ大統領はUNPから2国務大臣,UNP3名,SLFP2名の5副大臣を新たに任命した。(13日付デイリーニュース紙,デイリーミラー紙)
(8)産業・商業副大臣の任命
19日,マータラ選出のパティラナUNP議員が,産業・商業副大臣に任命された。(20日付デイリーミラー紙)
(9)新たな経済プログラムの開始
22日,ウィクラマシンハ首相は「Enterprise Sri Lanka」及び「Gamperaliya」といった二つのプログラムを開始し,今後18ヶ月間は経済の発展を加速させる,この国はさらなる投資や輸出を増やし,金銭が必要なところに行き渡るようにすべきであると述べた。(23日付デイリーニュース紙)
(10)憲法委員会のメンバー任命
23日,ジャヤスーリヤ国会議長は,自身に加え,チャマル・ラージャパクサ前国会議長,ハキーム都市計画・上水大臣,ヘラットJVP議員が,憲法問題を担当する委員会の新たなメンバーに任命されたと発表した。国会議長以外の3名は,同議長,首相,野党リーダーが推薦する。本委員会は,憲法に関する提案を検討する責任を負う。(23日付デイリーミラー紙)
(11)ラージャパクサ元国防次官に関するアスギリヤ派僧侶発言
アスギリヤ派で2番目に地位の高いラトナパラ僧侶は,自身がゴタバヤ・ラージャパクサ元国防次官をヒトラーに例えて国を治めるように述べたとの報道は,先般の同元国防次官の生誕祝賀会でのスピーチから一部の政治家が自分たちの目的のために曲解して文脈を無視して抜き出したものであるとした上で,国の統治には確固とした政策が必要であり,同元次官に国を発展させるよう要請しただけである,人々を残虐に殺したヒトラーと同等視する意図はなかったと述べた。(25日付デイリーミラー紙)
(12)州議会選挙
26日,各党の幹事長は,デーシャプリヤ委員長率いる選挙管理委員会と協議し,シリセーナ大統領,ウィクラマシンハ首相及びジャヤスーリヤ国会議長に州議会選挙をすぐに実施するよう促すことを決めた。各党の幹事長及び選挙管理委員会は,州議会選挙の遅延を批判し,選挙区割りに関する報告書も定められた期限内に国会で承認されていないことを指摘した。(27日付アイランド紙)
(13)SLFP16議員グループの統一野党への合流
ア 6月28日,ディラン・ペレーラ議員,外遊中のスマティパーラ議員,ジャヤセーカラ議員,S.B.ディサナヤカ議員を除くSLFP16議員グループは,G.L.ピーリスSLPP党首やバシル・ラージャパクサと会談後,セネヴィラトネ議員は,今後16議員グループは正式にSLPPと協働することとし,もはや「16人議員グループ」と呼ばれることはない,と述べた。一方,SLPPのメンバーになるのかとの質問に,その必要はないと答えた。(6月29日付デイリーミラー紙)
(14)マヘーシュワラン児童問題担当国務大臣によるLTTE支持発言
ア 7月2日,マヘーシュワラン児童問題担当国務大臣は,ジャフナで開催された式典で,自分たちは大統領の当選に汗をかいたが彼は人々を守るどころか自分の党を守る仕事ばかりをしている,土地の返還以外現政権は我々に何もしてくれていない,最近6歳児がレイプされ殺害された,人々は現在,何故今の大統領を任命したのかと感じている,もし我々が生活し,自由に歩き,子供たちが学校に行き無事帰宅するためにはLTTEに復活してもらうしかないと述べた。(7月3日付デイリーミラー紙)
イ 7月3日,「マ」国務大臣は,ラーマナヤケ社会進出促進副大臣に対し,LTTEに復活してほしいと発言したわけではない,あの時代は我々は平穏に暮らしていたということを興奮して誤って発言してしまったと述べた。(7月4日付デイリーミラー紙)
ウ ウィターナゲ議員らUNP一般議員は,党内の幹部に対し,「マ」国務大臣の辞任を求めた。(7月4日付デイリーニュース紙)
エ 7月4日,ウィクラマシンハ首相は,国会にて「マ」国務大臣に対して何らかの措置を下すが,措置内容は本人と会って話を聞いてから決定すると述べた。(7月5日付アイランド紙)
2 平和構築
(1)失踪者局(OMP)
ア OMPは,5月12日のマナーで初回の公聴会を開始し,5月19日にマータラで第二回目を,6月2日にムライティブで第三回目を実施した。6月13日にトリンコマリーにて第四回目を実施予定。(11日付デイリーニュース紙)
イ ピーリスOMP委員長は,OMPはマナーの失踪者家族からの情報提供に基づいて,発掘された骨のDNA調査などを開始すると述べた。(24日付サンデーオブザーバー紙)
(2)補償局設置法案
ア 12日,補償局設置に関する法案が,閣議承認された。セナラトナ保健・栄養・伝統医療大臣は,本法案が,補償の対象にテロ行為に関与した者の家族を含むことには反対であると述べた。(13日付デイリーミラー紙,14日付デイリーニュース紙)
イ 21日,スワミナダン再定住・復興大臣は,補償局の補償対象者は,紛争の被害を受けた全ての者であり,1988/89年の出来事も含まれると述べた。ラーマンUNP議員は,元LTTE兵士もこの国の国民であり,まともな生活を送る権利があると述べた。(22日付デイリーミラー紙,デイリーニュース紙)
ウ 6月28日,補償局設置法案が官報公示され,近々国会で審議される予定。補償局は,シリセーナ大統領による任命される5人の委員で構成される予定。(6月29日付デイリーミラー紙)
(3)ゼイド国連人権高等弁務官の発言
18日,間もなく離任するゼイド国連人権高等弁務官は,第38回人権理事会での人権問題に関するアップデートとして,スリランカが5年以内にテーマごとのマンデート保持者を5回受け入れたことを賞賛した。(19日付デイリーミラー紙)
(4)土地の返還
18日,シリセーナ大統領は,スリランカ軍より120.89エーカーの土地(ジャフナ,キリノッチ,ムライティブ)返還に関する公式文書を北部にて受け取った。(19日付デイリーミラー紙)
(5)元LTTE兵士及び北部女性に関する予算
19日,政府は元LTTE兵士の技能向上,給与補助金及び北部女性のエンパワーメントに必要な予算を2.5億ルピーと見積もった。(20日付デイリーミラー紙)
(6)米国の国連人権理事会離脱
ア 20日,セナラトナ保健・栄養・伝統医療大臣兼政府スポークスマンは,米国が国連人権理事会から離脱することでスリランカへの圧力も減る,しかし我々は圧力の有無に関わらず決議内容を履行することに今後も努め続けると述べた。(21日付デイリーニュース紙)
イ 20日,当地ケシャップ米国大使は,スリランカ政府高官に対し,米国が国連人権理事会から離脱後も引き続きスリランカの決議履行を支援すると述べた。(21日付デイリーミラー紙)
(7)スリランカ軍の平和維持ミッション派遣延期
スリランカ軍の国連平和維持活動のためのレバノンへのミッション派遣は,スリランカ人権委員会によるクリアランスが遅れたため,遅延している。これまでクリアランスはジュネーブの人権当局によりなされていたが,国連PKO局は今年から「ス」人権委員会が行うことになったと述べた。(25日付デイリーミラー紙)
3 軍事
(1)フランス海軍艦船「Dixmude」と「Surcouf」がコロンボ港に寄港
18日,フランス海軍艦船「Dixmude」と「Surcouf」がコロンボ港に寄港した。寄港間,スリランカとフランスの海軍軍人の間で,「海洋作戦における国家の非軍事行動」及び「海洋における対麻薬作戦」について意見交換が行われた。(18日付海軍ニュースサイト)
(2)パキスタン統合参謀本部議長のスリランカ訪問
27日,パキスタン統合参謀本部議長のハイヤート陸軍大将が,ウィジェグナラトナ・スリランカ国防参謀長の招待によりスリランカを訪問した。滞在間にシリセーナ大統領や国防次官への表敬等が予定されている。(27日付デイリーミラー紙等)
(3)ジンバブエ国防大学一行のスリランカ訪問
7月3日,スリランカ訪問中のジンバブエ国防大学の訪問団がワイディヤラトナ国防次官を表敬した。(国防省ニュースサイトHP)
4 外交
(1)鳩山元総理のスリランカ訪問
イ 12日(注:実際の到着は11日),日本の鳩山元首相が,スリランカに到着し,アベイワルダナ内務大臣,フェルナンド・デジタルインフラ開発・海外雇用大臣らが出迎えた。(13日付デイリーニュース紙)
(2)高見澤軍縮代大使のスリランカ訪問
ア 11日,スリランカを訪問した高見澤軍縮代大使がワイディヤラトネ国防次官を表敬した。ドラドラ武器貿易条約事務局長らが同席した。(13日付デイリーニュース紙)
(3)ペルトン・フィンランド経済・雇用副大臣のスリランカ訪問
12日,スリランカを訪問したフィンランドのペルトネン経済・雇用副大臣は,スリランカ側のデーシャプリヤ・デジタルインフラ開発・海外雇用省次官や教育省,保健・栄養・伝統医療省代表らとの間で,職業訓練,デジタル化,保健,エネルギーの分野での5種類のMOUを締結した。(14日付デイリーニュース紙)
(4)ホルテ・ノルウェー外務担当国務大臣のスリランカ訪問
21日,ノルウェーの海洋調査船が,スリランカ沿岸海域の生態系調査を一ヶ月実施するためにコロンボ港に到着したのに合わせてホルテ外務担当国務大臣がスリランカを21~23日の日程で訪問した。ホルテ外務担当国務大臣は,カーリヤワサム外務次官と会談し海洋の持続可能な利用,海洋廃棄物の管理等について議論した。サンパンタンTNA代表とも会談した際,同代表は政治情勢や新憲法制定について説明した上で,国民の代表としてこの機会を投げ出すわけにはいかず,失敗すればコミュニティ間の亀裂がさらに拡大してしまうことを懸念している,穏健勢力が団結すれば国会の3分の2を確保し,新憲法を成立させることは可能であると述べた。(23日付デイリーニュース紙,25日付デイリーニュース紙)
(5)パキスタン統合参謀本部議長のスリランカ訪問
6月28日,ウィジェグナラトナ国防参謀長の招待で当国を訪問したハヤット・パキスタン統合参謀本部議長は,シリセーナ大統領を表敬した,シリセーナ大統領はコルピティヤ国防学校へのパキスタンからの支援への感謝を表明した。(6月30日付デイリーニュース紙)
(6)スリランカのユネスコ無形文化遺産保護条約政府委員会の委員選出
スリランカは,ユネスコ無形文化遺産保護条約政府委員会委員(2018年~2022年の期間)に選出された,アジア太平洋グループからは他に中国,日本,カザフスタンが選出された。(8日付デイリーニュース紙)