当国情勢

平成30年9月17日

2018年7月1日 - 7月31日

1 内政
(1)SLFP16議員グループの統一野党への合流
ア 7月2日,ラージャパクサ前大統領が自宅で開催した統一野党の会合に,SLFP16議員グループのうち,ジャヤセーカラ議員及びS.B.ディサナヤケ議員を除く14議員が参加した。(7月3日付ディワイナ紙)
イ 7月2日,シリセーナ大統領が自宅で開催したSLFP幹部会にSLFP16議員グループからジャヤセーカラ議員のみ出席した。また,SLFPのメディア・スポークスマンに,ディラン・ペレーラ議員に替わり,サマラシンハ港湾・海運大臣が任命された。(7月3日付ランカディーパ紙)
 
(2)2015年大統領選挙時の中国によるラージャパクサ前大統領への資金提供疑惑
ア 7月2日,ペレーラ電力・再生可能エネルギー担当国務大臣は,ラージャパクサ前大統領は,ニューヨークタイムズ紙の報道が真の誤報なのであれば,裁判に訴えるべきである,中国政府は前大統領が中国から資金を受け取ったことを直接的には否定していないと述べた。(7月3日付デイリーニュース紙)
イ 7月3日,ニューヨークタイムズ紙は,本記事作成に関わったジャーナリストの安全を確保するようスリランカ当局に働き掛けた。(7月4日付デイリーニュース紙)
ウ 7月4日,ウィクラマシンハ首相は,ニューヨークタイムズ紙の記事についてCIDが捜査を開始した旨述べ,本記事執筆に関与した現地記者2名が脅迫されたことに対し,民主主義を主張するならば,まず記者への脅迫をやめるべきと忠告した。(5日付デイリーニュース紙)  
 
(3)マヘーシュワラン児童問題担当国務大臣によるLTTE支持発言
ア 7月2日,マヘーシュワラン児童問題担当国務大臣は,ジャフナで開催された式典で,自分たちは大統領の当選に汗をかいたが彼は人々を守るどころか自分の党を守る仕事ばかりをしている,土地の返還以外現政権は我々に何もしてくれていない,最近6歳児がレイプされ殺害された,人々は現在,何故今の大統領を任命したのかと感じている,もし我々が生活し,自由に歩き,子供たちが学校に行き無事帰宅するためにはLTTEに復活してもらうしかないと述べた。(7月3日付デイリーミラー紙)
イ 7月3日,「マ」国務大臣は,ラーマナヤケ社会進出促進副大臣に対し,LTTEに復活してほしいと発言したわけではない,あの時代は我々は平穏に暮らしていたということ,興奮して誤って発言してしまったと述べた。(7月4日付デイリーミラー紙)
ウ ウィターナゲ議員らUNP一般議員は,党内の幹部に対し,「マ」国務大臣の辞任を求めた。(7月4日付デイリーニュース紙)
エ 7月4日,ウィクラマシンハ首相は,国会にて「マ」国務大臣に対して何らかの措置を下すが,措置内容は本人と会って話を聞いてから決定すると述べた。(7月5日付アイランド紙)
オ 5日,政府情報筋によると,マヘーシュワラン児童問題担当国務大臣は,シリセーナ大統領及びウィクラマシンハ首相に辞表を提出した。(6日付デイリーニュース紙)
カ 「マ」国務大臣による発言を調査する目的で,4名のUNP議員(カリヤワサム教育大臣,ハシム・ハイウェー道路開発大臣,マッドゥマバンダーラ行政・管理・治安大臣,アトゥコーララ司法・刑務所改革大臣)による委員会が結成された。(7日付デイリーニュース紙)
 
(4)フェルナンド前大統領秘書官離任スピーチ(記事別添)
 5日に辞任したフェルナンド前大統領秘書官は辞任スピーチの中で,JICAも含めた過去の所属機関,世話になった人々への感謝の意を述べた上で,政治から距離を置いた行政の仕事を理解できない者がいるとしつつ,自分は不当に扱われ,誤解され,誹謗中傷される中でも,誠実,平等,そして誰に対しても悪意を持たないやり方で仕事をしてきたと述べた。また行政が抱える2つの災難は年長者の好みと政治的ひいきであってこれらにより,国により貢献できる有能で生産的な職員がフラストレーションを貯めている,個人的あるいは政治的目的を達成するために政治家や官僚を自分たちの考え方に従わせようとする者がいると述べた上で,長い任期の間に自分の足をすくい,中傷してきた人々を許せるだけ自分は成熟していると述べた。(8日付サンデーオブザーバー紙)
 
(5)SLFP議員のSLPPメンバー取得
 7日,ジャヤセーカラ前スポーツ大臣は,自分はSLFP所属のままであって他の党員にはならない,統一野党にいるSLFPのメンバーがSLPPのメンバーとなったらその人物は必ず議員資格を失う,SLPPメンバーになることを強制はできないと述べた。(8日付サンデーオブザーバー紙)
 
(6)新国務大臣の就任
 10日,ジャヤワルダナ都市計画・上水担当国務大臣及びアラワトゥワラ内務担当国務大臣が新しく任命された。(11日付デイリーミラー紙)
 
(7)20次憲法修正案
ア 9日,JVPの提出した20次憲法修正案が,官報公示された。ヘラットJVP議員は来週国会第一読会に法案を提出する予定であると述べた。(11日付デイリーニュース紙)
イ 13日,キリエッラ国営企業開発・キャンディ都市開発大臣は,既に官報公示されているJVP提出の20次憲法修正案について,UNPは16日に議論をすると述べた。同修正案は,ジャヤスーリヤ国会議長及び国会のビジネス委員会会議(Parliament's Business Committee Meeting)における各党リーダーとの議論後,国会の議題一覧表に掲載される予定である。(14日付デイリーミラー紙)
ウ ディサナヤケJVPリーダーは,20次憲法修正案における実権のある大統領制の廃止は,シリセーナ大統領を追放しようとする意図によるものではない,現職者の任期終了時点から効力を発生するためシリセーナ大統領への影響はないと述べた。(7月29日付サンデーオブザーバー紙)
 
(8)憲法改革
ア 制定議会運営委員会のウィクラマラトネ議員は,専門家パネルによる憲法改革に関する最終報告書は,18日に運営委員会に提出され,議論されると述べた。(15日付サンデーオブザーバー紙,16日付デイリーニュース紙)
イ 18日に専門家パネルによる報告書は運営委員会に提出されず,憲法改革に関する議論は延期された。情報筋によると,専門家パネルは最終報告書提出にさらに2週間の期間を与えられた。(19日付デイリーニュース紙,アイランド紙)
ウ 18日,運営委員会は,専門家パネル全員の合意が得られていないことが明らかになったため,専門家パネルが作成した最終報告書を却下した。19日,国会において,専門家パネルによる憲法改革に関する最終報告書をめぐり激しい議論が行われた。ジャヤセーカラ議員は,最終報告書は主にスマンティランTNA議員,ウィクラマラトネUNP議員,フェルナンド専門家パネルメンバーによって作成されたものであると述べた。アルットガマゲJO議員は,専門家パネルとして署名している4名のうち1名は過去半年間スリランカを訪問しておらず偽造であることを指摘した。ジャヤスーリヤ国会議長は運営委員会を務めるウィクラマシンハ首相と協議する旨発言。(20日付デイリーニュース紙,20日付デイリーミラー紙,22日付サンデーオブザーバー紙)
エ 20日の国会において,スマンティランTNA議員及びウィクラマラトネUNP議員は,自分たちが最終報告書を作成し署名を偽造したという話は事実ではないと否定した。スマンティラン議員は,専門家パネルの6名でひとつの資料を提出し,2名で別の資料を提出し,残り2名はどちらにも関与していないと述べ,これらの資料は署名は要求せず全て電子メール上で合意がされたため,署名の偽造はそもそも発生しないと指摘した。(23日付デイリーニュース紙)
オ 24日,クマーラトゥンガ元大統領は,国家宗教シンポジウムにおいて全てのコミュニティ,特にマイノリティが,平等な権利を享受するためには,憲法修正が必要と述べた。(25日付デイリーミラー紙)
 
(9)薬物犯罪囚人に対する死刑
ア 11日,シリセーナ大統領は,学校からの麻薬根絶プログラムの開始式典において,薬物犯罪死刑囚に対する死刑を執行すると発言。(12日付デイリーニュース紙)
イ 11日,アムネスティ・インターナショナルは,いかなる状況でも死刑に対して絶対反対する,薬物犯罪者に対する死刑執行は国際法違法であり,スリランカは人道的かつ公正な方向を選択すべきと述べた。(12日付デイリーミラー紙)
ウ ウプルデニヤ司法・刑務所改革・刑務所報告官は,18名の死刑囚のリストが同省に提出されたと述べた。(16日付デイリーミラー紙)
エ スリランカ人権委員会(HRCSL)は,シリセーナ大統領宛に,薬物犯罪死刑囚に対する死刑執行決定の無効を求める書簡を発出した。(16日付デイリーミラー紙)
オ EU,ノルウェー及びカナダはHRCSLに同意し,スリランカでの死刑執行決定に反対する旨の大統領宛の書簡を発出した。(17日付デイリーニュース紙)
カ 21日,シリセーナ大統領は,薬物犯罪死刑囚に対して死刑を執行するとの政府決定を変更するつもりはないと述べた。(23日付デイリーニュース紙)
 
(10)州議会選挙実施
ア 20日,各党リーダーは,来年1月5日に州議会選挙を実施することにつき10月までに国会で合意することに同意。(23日付アイランド紙)
イ 25日,UNP作業部会は,選挙管理委員長に対し,州議会選挙実施をこれ以上遅延させずに,新旧いずれかの選挙方式で実施するよう求めることを決定した。(26日付デイリーニュース紙)
ア 7月26日,州議会選挙の選挙方法について党首間の議論が行われ,SLFP及びJVPは新選挙制度(単純小選挙区制と比例代表制の混合制度)を,UNP及びその他政党は旧選挙制度(比例代表制)を支持し,選挙方法の決定までは至らなかった。8月1日に再度議論を実施予定である。(7月27日デイリーニュース紙)
イ 7月26日,マノー・ガネーサン国民共存・和解・公式言語大臣は,全党は州議会選挙方法の決定に至らなかったが,州議会選挙をこれ以上遅延させることなく実施すべきことについては合意していると述べた。(7月27日付デイリーミラー紙)
 
(11)JOによる財務大臣に対する訴状提出
 7月31日,グナワルダナJO議員は,燃料価格に関する虚偽の事実が掲載された新聞広告を出して公的資金を乱用したとして,財務大臣に対する訴状を最高裁判所に提出したと述べるとともに,7月19日に財務省から税関局に対する輸入品目の関税除外の官報公示についても,閣議承認を経ていないことに対して法的手段を検討している旨述べた。(8月1日付デイリーミラー紙)
 
2 平和構築
(1)失踪者局(OMP)コンサルテーション
 OMPは失踪者家族とのコンサルテーションを,14日にジャフナ,15日にキリノッチで実施した。14日のジャフナでのコンサルテーションでは,OMPを非難し騒ぎを起こす人々もいた反面,自分たちの抱える問題をOMPに共有する人々もいた。(13日付デイリーニュース紙,16日付デイリーミラー紙)
 
(2)補償局設置法案
ア 17日,補償局設置法案は,国会に提出された。(17日付デイリーミラー紙)
イ 17日,同法案に異議を唱える特別申し立てが最高裁判所に提出された。請願者であるディネシュ・デシルバ氏は,同法案は国会の3分の2による可決及び国民投票による賛成の双方を経てのみ立法化されるべきと主張した。(18日付デイリーニュース紙)
 
(3)エマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者による報告書
 23日,エマーソン国連「人権・テロ対策」特別報告者が2017年7月に来訪した際の所見を基に作成した報告書が公開され,同報告書中で,軍が復興に非常に重要な役割を果たしていると同時に,軍の民間活動への関与や軍におけるシンハラ人の圧倒的多数等がタミル人の憤慨や反感に繋がっており,軍の文民統制や北部州の非武装化を早急に実施すべきと述べた。(26日デイリーミラー紙)
 
(4)シリセーナ大統領の北東部開発に関する発言
 7月30日,シリセーナ大統領は,大統領特別タスクフォース会合にて,今後,北東部での開発活動を促進すると述べた。北東部で2万5千戸の住居建設を8月中に着手することや,1847kmに及ぶ道路網プログラムを開始する予定。(7月31日付デイリーニュース紙)
 
3 軍事
(1)ジンバブエ国防大学一行のスリランカ訪問
 7月3日,スリランカ訪問中のジンバブエ国防大学の訪問団がワイディヤラトナ国防次官を表敬した。(国防省ニュースサイトHP)
 
(2)インド海軍艦船のコロンボ港寄港
 7日,インド海軍艦船「Trikand」がコロンボ港に寄港した。スリランカ海軍参謀長等が同艦を訪問した。同艦は9日まで滞在する予定。(9日付デイリーミラー紙)
 
(3)モルディブ沿岸警備隊艦船のコロンボ港寄港
 7日,モルディブ絵沿岸警備隊艦船「Huravee」がコロンボ港に寄港した。同艦艦長がスリランカ海軍西部管区司令官を表敬した。同艦は9日まで滞在する予定。(9日付デイリーミラー紙)
 
(4)米太平洋軍による学校修復事業の完成
 2日及び3日,バティカロアにおいて,米太平洋軍が費用を拠出して修復が行われていた2つの学校の引渡し式が実施された。合計約58万米ドルの修復費用をかけて教室の修復や雨水貯水施設の整備が実施され,学校として使用される他,緊急時には地域の避難施設としても活用される予定。(11日付アイランド紙)
 
(5)米海軍哨戒機がスリランカ漁船を救助
 10日,ディエゴガルシア基地に所属する米海軍哨戒機P-8が,エンジントラブルの為行方不明となっていたスリランカ漁船をスリランカ沖で発見した。米海軍機は漁船の位置をスリランカ海軍に通報し,漁船はスリランカ海軍が派遣した艦船により救助された。(12日付デイリーニュース紙,14日付同紙)
 
(6)ブラウン米太平洋陸軍司令官のスリランカ訪問
 25日,スリランカを訪問中のブラウン米太平洋陸軍司令官がシリセーナ大統領を表敬した。会談の中で,ブラウン司令官はスリランカ政府の和解への取り組みを賞賛し,災害救援分野でのスリランカ軍に対する米の援助及び平和維持活動に従事するスリランカ軍部隊の訓練について協議が行われた。(26日付デイリーニュース紙)
 
(7)米沿岸警備隊艦船のスリランカ海軍への供与
 スリランカ海軍は今月米沿岸警備隊艦船「Sherman」(全長約113m)を取得する。米・スリランカ間の合意によれば,同船舶は無償で供与され,スリランカ側が修理等を負担する。同艦は約50年前に建造され,ベトナム戦争等に従事した。米沿岸警備隊からスリランカに供与される艦船は,紛争間に供与され,現在スリランカ海軍「Samudura」として運用されている「Courageous」に引き続き2隻目。スリランカ海軍高官によれば,「Sherman」はスリランカEEZの哨戒に使用される。(30日付アイランド紙)
 
4 外交
(1)ウィクラマシンハ首相のシンガポール訪問
 9日,ウィクラマシンハ首相は,シンガポールで開催された「世界都市サミット」に出席し,10日は同国の貿易・産業省が主催した「スリランカ・シンガポール・ビジネス会議」にて2050年までにスリランカは完全に開発された国になると述べた。(10日・11日付デイリーニュース紙)
 
(2)プラユット・タイ首相のスリランカ訪問
 12~13日,シリセーナ大統領の招待を受けて,タイのプラユット首相がスリランカを訪問した。シリセーナ大統領の首脳会談に続き,両国間で戦略的経済パートナーシップを含む4つのMOUが締結された。13日,プラユット首相はサンパンタンTNAリーダーと会談し,同TNAリーダーは北東部における雇用や経済状況の改善のため,タイ企業による北東部への投資を要請した。(12日付アイランド紙,13日付デイリーニュース紙)なお,スリランカ外務省発表の共同声明は,以下URL参照。
www.mfa.gov.lk/sl-thai-jps-eng/
 
(3)ゴーカレ印外務次官のスリランカ訪問
 13日,ゴーカレ印外務次官は,ウィクラマシンハ首相と会談し,印スリランカ共同案件やインドによるスリランカへの投資について協議した。同日,「ゴ」外務次官は,サンパンタンTNAリーダーと会談し,同TNAリーダーは州議会選挙前に憲法改革を実施すべきであり,今年中に国会の三分の二の支持を得て新憲法採択が可能であると述べるとともに,インドの投資家によるスリランカ北東部への投資促進を求めた。(14日付デイリーニュース紙)
 
(4)シリセーナ大統領のイタリア,グルジア訪問
 14~16日,シリセーナ大統領はイタリア・ローマを訪問し,第24回 FAO林業委員会(Committee on Forestry)にて基調演説を行った。また,17~19日,「オープン政府パートナーシップ・グローバルサミット(Open Government Partnership Global Summit 2018)出席のためにグルジアを訪問。(16日付デイリーニュース紙,)
 
(5)ラージャパクサ前大統領によるペイスリー英国議員への賄賂
ア 19日,ペイスリー英国議員は,ラージャパクサ前大統領政権時,同前大統領の人権侵害を擁護することと引き替えに,スリランカ政府負担で2度スリランカ家族旅行を行った(45万ルピー相当)疑惑が浮上し,11月まで停職処分となった。(20日付デイリーニュース紙)
イ ラージャパクサ前大統領からの賄賂の受け取りを認めたペイスリー英国議員は,同じく同前大統領から賄賂を当時受け取った英国議員が他に5名いると述べた。(22日付サンデーアイランド紙)