在スリランカ日本大使館は、モルディブ共和国を兼轄しています。

 

スリランカ内政・外交(2011年12月1日-12月31日)

1 内政

  1. 民族問題の解決・和解

「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」:報告書の国会提出・公表 :  16日,国会においてニマル・シリパーラ・デシルバ灌漑・水資源管理大臣がLLRC報告書を提出。同時に演説を行い,政府として内戦末期の一般市民の死者に関し,個別の状況に関する調査を進めることに合意する意向を表明。同日,政府はホームページ上に同報告書の全文を公表。これを受けて,バン国連事務総長(18日発言)をはじめ各国が歓迎声明発出。LLRCによる勧告内容についても,「ス」政府と外交上の友好関係を築いている国々(中国,露,印)はもちろん,人権問題を巡り緊張関係にある欧米諸国等(英連邦・米国・カナダ・豪)・国際人権団体(ICG・AI)も,内戦末期の人権侵害・アカウンタビリティ問題への言及が不十分であることや,今後の努力次第である等の課題を指摘しつつも,国内的努力として強い関心を示し,取り敢えずは「良い勧告が含まれている」として一定の評価を付与。他方,「ス」国内の反応は鈍く,特に最大タミル政党連合TNAは,同報告書はアカウンタビリティを果たさず,国際的調査の要求に答えていないとして,内容を厳しく批判(19日声明)。JVP,JHUも批判的である他,最大野党UNPは一切反応を示さず。31日,デシルバ大臣は,「第13次憲法修正の規定に基づく土地権限移譲のあり方等の諸々の課題に関し,TNAと協議を行っていく」との意思表明。
TNAとの直接協議: 3・6日,政府とTNAは直接協議を実施。3日の協議後,TNAは声明を発し,「PSCへの参加如何については政府との直接協議で得られた実質的な合意を待って判断する」と発言。続く6日の協議では,TNAは北・東部州の合併及び同州への警察権限の移譲を要求。11日,デーワーナンダ伝統産業・中小企業振興大臣(注:北部ジャフナを拠点とする与党タミル政党EPDP指導者)は,「TNAが民族問題に真剣に取り組むとは思えない。TNAとの直接協議など時間の無駄だろう」と発言。また21日,「ラ」大統領は国会演説の中で,「TNAはLTTEのような意識は捨て,政府と手を組んで国民的調和とコミュニティ間の相互理解に基づく政治文化を創るべきである」と発言。
国会選定委員会(PSC): 6日,ハキーム司法大臣(最大ムスリム政党SLMC総裁)は,「タミル人とムスリムは,多数派の人々が公正だと感じたものでなければ恒久的解決などもたらされない。そのような解決に向けて, PSCこそが問題解決の最適の場である」と発言。8日,ランブクウェラ報道大臣は閣議後の記者会見において,「もしTNAが北東部の恒久的な解決を真剣に考えているのなら,TNAは政府との対話を続けるべきであり,国会選任委員会(PSC)への参加をボイコットすべきではない。警察権限の移譲は国家の安全保障に関わる重要事項であり,交渉の余地はないが,他方,警察権限や土地権限等の機微な問題に関して,暫定的な緩和措置(interim relief)は取りうる」と発言。

(2)国会の動向
来年度国家予算案可決: 21日,国会にて来年度国会予算案が賛成多数で可決(賛成158票,反対60票)。野党UNP,TNA,DNAはそれぞれ反対票を投じる。「ラ」大統領(財務・計画大臣兼任)は国会で演説を行い,「野党は国会の予算案審議においても建設的な意見も出さず,自党のリーダーシップ問題に励んでばかりである。これでは野党の義務と責任を果たしているとは言えない」と余裕の発言。
野菜流通を巡る新法の運用開始: 政府は11日夜以降,野菜や果物の流通にはプラスチック籠の使用を義務付ける規定の運用を開始。政府の説明では,野菜・果物の流通過程での損失を減らすための措置である由(なお,本法規は1年半前に発効していたものの,その後猶予期間が設けられ,またプラスチック籠を買うための基金も設置されていた由)。このため,12日,野菜の流通拠点となっている北中央州ダンブッラ,コロンボの中央市場等,各地の野菜マーケットでは野菜を売ることができなくなった人々・流通業者が続出。コロンボのペター市場では流通が麻痺し,多くの店舗が閉店せざるをえなくなった他,野菜の価格が一時的に高騰。12~14日にかけ,各地で抗議活動が行われ,コロンボ,北中央州ダンブッラ,北西部州カルピティヤ,中央州バンダラウェラで数百人規模の抗議活動が発生。一部で警察が催涙弾を用いて沈静化させる事態に。翌15日,ジョンストン・フェルナンド協同組合・国内取引大臣が,更に1ヶ月の猶予期間を設け,一部の野菜については規定から除外すると発表し,これを受け抗議活動は15日までに収束。
公営企業の経営状況に関する報告書: 1日,公営企業委員会(COPE)のD.E.W.グナセーカラ委員長(人的資源担当上級大臣)は,229の公営企業の経営状況に関する報告書を国会に提出。本報告書は一部の省における出納管理責任者である次官の責任を指摘。

(3)野党の動向
最大野党UNP: 19日,UNP党作業部会が開催され,総裁・副総裁・ナショナルオーガナイザーの各ポストを巡る選挙を実施。総裁には現職のウィクラマシンハ総裁が再選,副総裁は現職のサジット・プレマダーサ副総裁が再選,ナショナルオーガナイザーにはダヤ・ガーマゲ氏が新任。「ウィ」総裁の退陣を求めていた党改革派の支持者たちは,本結果を不服とし,UNP本部に集まり,抗議活動を実施した他,一部が暴徒化。
野党JVP: 10日,北部ジャフナを政治活動の基盤としているラリット・クマール・ウィーララージJVP党員が失踪。「ウィ」氏は,これまでも軍から度重なる嫌がらせを受けていた由

(4)フォンセーカ前国防参謀長の拘留
9日,ハキーム司法大臣は,「もしサーラット・フォンセーカ氏(注:元国防参謀長及び野党共通の大統領候補)の家族が「フォ」への恩赦を求めて大統領に嘆願するなら考慮する用意がある」と発言。18日,ティラン・アレス野党DNA議員は,ここ2ヶ月間に亘り「ラ」大統領と会談し,「フォ」の恩赦・釈放を求めて協議を行った旨明らかに。31日,サジット・プレマダーサ副総裁は12月にウェリカダ刑務所で「フォ」と面会し,UNPへの入党を勧めたところ,良い感触を得た旨明かした。

 

  1. 外交

(1)国連・西側諸国
EU: EU議会のリチャード・ハウィット議員,デーヴィッド・マーティン議員が訪「ス」し,7日にサマラシンハ・プランテーション大臣と会談。また11日,訪「ス」したヴァン・オルデンEU議員(フレンズ・オブ・スリランカ会長)は声明を発し,「LLRCは国際社会の関心事項に関し力強い結論が下されているようであり,期待している。国は経済発展に向けて進んでおり,テロを再発させないために,和解と政治的コンセンサスは不可欠である」と発言。

(2)その他の国々
中国: 15日,コロンボで国内初の本格的劇場となる「蓮池マヒンダ・ラージャパクサ劇場(中国の贈与による:建造費36億ルピー)」の完成式典開催。「ス」・中国の友好関係を強く印象付けるものに。完成式典には,ラージャパクサ大統領ら「ス」政府要人が出席した他,中国から訪「ス」した張梅潁(Zang Meiying)中国政治協商会議副主席が出席。
インド:  「ラ」大統領は印デカン・クロニクル紙のインタビューに応え,「スリランカにとって一番大切なのはインドであり,その他の国は二の次である。最近では中国が大規模な事業を提供してくれるようになったが,ハンバントタ港建設事業・コロンボ港拡大事業など,あらゆる事業はまずインドに支援要請をした経緯がある」と発言(29日付)。
●カタール: 12日,カタールのアール・サーニ首長が「ス」を公式訪問し,「ラ」大統領と会談。
●モルディブ: 27日,ナシード「モ」大統領が訪「ス」し,ディヤタラワ・「ス」政府軍アカデミーで行われた軍事パレードに来賓として出席。
バリ民主主義フォーラム: 7日,「ラ」大統領はバリ民主主義フォーラムに出席するため,インドネシア・バリ島に向けて出発し,翌8日の同フォーラム開会式で演説を行った。また7日,「ラ」大統領はバリ民主主義フォーラムと並行して,ユドヨノ・インドネシア大統領及びアール・サーニ・カタール首長とそれぞれ会談。「ユ」大統領は「ス」の独立性,主権,領土的一体性を守るべく「ス」を支援するとの意向を表明。また「ア」首長は,カタールの投資家たちは「ス」へ大規模な投資を行う用意がある旨発言。

    (了)  

 

スリランカ内政・外交(2011年11月1日-11月30日)

1 内政

(1)民族問題の解決・和解
「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」:  20日,「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」は最終報告書を大統領に提出。22日,ジャヤセーカラ大統領報道官は,「ラージャパクサ大統領はLLRC報告書を12月に国会に提出する」と発言。
国会選定委員会(PSC): 3日,政府は,民族問題の解決に向けた「国会選任委員会(PSC)」に関する動議を発表。PSCに課されたマンデートとは,「全ての人々のアイデンティティを尊重し,一つの国家の中で尊厳と安全とともに暮らせるように,「ス」国民の統一を促進し,国民と国家の社会・経済・政治・文化的発展をエンパワーするための政治的措置・憲法上の措置を模索し,6ヶ月以内に国会に報告書を提出すること。」 なおPSC委員長は国会議長によって選任される予定。
TNAとの直接協議: 16日,政府と最大タミル政党連合TNAとの直接協議実施。TNA側によると,警察権限・土地権限の移譲,権限移譲の単位,州知事の権限,中央政府の権限等に関する話し合いが行われ,今後,両者は12月1,6,14,15日に集中的に協議を行う予定に。
内戦末期に関する説明責任: 24日,ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官は,「人口統計局は現在,人口統計調査を進めており,戦争で亡くなった人々も含め北部の人々の個々人の名前の特定を進めている。調査が完了すれば,死亡者数,行方不明者数が明らかとなり,ジェノサイド疑惑や戦争犯罪容疑という馬鹿げた容疑を晴らせる。もし政府軍の中の個々人による行き過ぎた行為があったとの信頼に足る容疑があり,十分な証拠が示された場合は,適切な対処を取る用意がある」と発言。

(2)国会の動向
業績不振企業及び不活用資産の再興法案可決:  9日,国会において「業績不振企業及び不活用資産の再興法案(注:業績不振となっている37の私企業の公営化を目指す法案)」に関する投票が行われ,賛成多数で可決(賛成122票,反対46票)。野党UNP,TNA,JVPが反対票を投じた他,与党でもJHU,NFFが棄権。投票前の討議においては,野党各党から激しい批判が飛び交った。最大野党UNPは,州議会の管轄下にある土地や資産を,州議会との協議もしないままに獲得しようとするものであり容認できないと主張。ハルシャ・デシルバUNP議員(経済学者)は,「投資家たちは政府に資産を没収され,国営化されてしまうとの不安を持つことになるだろう」と批判。
来年度国家予算案審議開始:  21日,「ラ」大統領は国会で来年度予算案の演説を実施。来年1月から公務員基本給を10%昇給するとの提案がなされた他,道路や灌漑等のインフラ開発に関する提案を強調。演説中,野党UNPの議員らが野次を飛ばし,途中退場する等のハプニングも。UNPは,IMFに屈し,貧困層の苦境を無視した予算案であると批判し,29日よりコロンボ市内で抗議活動開始。30日,国会で本案の第2読解に関する投票が行われ,賛成多数で可決(賛成151票,反対60票)。なお,野党UNPのグレコ議員(コロンボ選挙区)が鞍替えし,賛成投票を投じる事態に。

 

(3)人権
フォンセーカ前国防参謀長に対する軍事裁判: 18日,コロンボ高等裁判所において,フォンセーカ前国防参謀長による白旗発言疑惑(注:大統領選挙戦期間中だった昨年12月,「フォ」は、LTTE指導部が白旗を持って降伏してきたにも拘わらず、ゴタバヤ・「ラ」国防次官がこれを全て殺害するよう命じたと当地英字紙サンデーリーダー紙に証言していた件)を含め「フォ」に関する3件の提訴に関し,懲役3年・罰金5,000ルピーの有罪判決。裁判の前後において,コロンボ高等裁の前では市民が抗議デモ実施。こうした中,米国の外交官は,シリセーナ保健大臣との会談の中で,「「フォ」は政治囚であり,「フォ」を釈放しないのならば,ジュネーブの国連人権理事会で「ス」に対する抗議活動が行われるだろう」と警告。
ウェブニュースの閉鎖: 政府はウェブニュースの配信メディアサイトをブロックした。対象となったのは,Lanka-E-news社(注:政府に批判的なメディア),Lankawaynews社(注:UNPの党機関サイト)ら4社。これにUNPは反発。米国,当地EU大使館が声明を発し,本件に関する懸念を表明。

(4)北東部情勢
北部IDPの再定住: 4日,ウィーラコーン再定住大臣は,「最大時30万人であった北部IDPも,残すところ1万人/2,100世帯となった。これらの残留者は,北部州ムライティブ県におけるLTTE活動が活発であった地域や,地雷除去が完了していない地域の出身者である。また政府はこれらのIDPをコンバウィル地域に再定住させるべく,一世帯に付き40パーチの土地を与え,住宅を建設する予定」と発言。

(5)南部情勢
南部高速道路完成: 27日,コロンボと南部都市ゴールを結ぶ南部高速道路「Gateway to Wonder(奇跡への道)」の開通式が行われた。総工費は770億ルピーで,「ス」初の高速道路に。式典には,「ラ」大統領の他,日本の明石政府代表,ADBの趙暁守(Xiaoyu Zhao)副総裁らが出席
南部州での強風・大雨災害: 災害管理センターによると,26日,南部州を中心とした強風・大雨洪水により,27日までに19名が死亡,43名が行方不明(この内33名は出漁した漁民)。災害管理センターによると,家屋への被害は,全壊630棟,半壊5,094棟,被災者数は計 53,773名(13,337世帯)に。
●住民と治安当局の摩擦: 1日,南部州ゴール県カランデニヤ地区でジ医学博士殺害事件(9月29日)に対し,5,000人の地元住民が抗議活動に参加。容疑者と見られる政府軍兵士の自宅や医療研究所に放火。警察はカランデニヤ警察周辺及びクルドゥガハヘティクマ町を対象に外出禁止令を発出。

 

  1. 外交

(1)国連・西側諸国
●米国: 4日,ヌランド米国務省報道官は,記者会見において,「先週,TNA議員団がワシントンを訪れた際,シャーマン副国務次官はTNAに対し,今月半ばに提出されるLLRC報告書に大いに期待している旨,また本報告書は最高の質となるはずであり,「ス」政府はこれに基づいて対応措置を講じてくれると期待している,とのメッセージを伝えた」と発言。
●英国: 22日,アリステア・バート英外務担当国務大臣(中東・南アジア担当)は,「多くの人々がこの報告書がスリランカの戦後の重要な軌跡になるものと期待している。この重要な好機において,国民和解と説明責任の問題への取り組みのあり方を示すよう,「ス」政府に対し求める」と発言。
●英連邦:  12日,2018年に開催予定の英連邦スポーツ大会(Commonwealth Games)の開催地として,投票の結果,豪ゴールドコースト(43票)が選ばれ,「ス」のハンバントタ(27票)は及ばず。
●ノルウェー: 11日,諾外務省は「ノルウェーによる「「ス」和平プロセスに関する評価報告書((Pawns of Peace: Evaluationof Norwegian Peace Efforts in Sri Lanka, 1997-2009,注:1997年~2009年の期間における諾による和平プロセスの効果について評価するもの)」を発表。報告書は149頁に上り,和平プロセスに関する状況説明・裏話が記述されている。要旨部分では,「「ス」和平プロセスは概ね失敗談となる」と述べ,「和平プロセスは結局,紛争解決への構造的障害を変容(transform)させることはできず,むしろ再生産(reproduce)してしまった。政府と反政府勢力との関係において,益々溝を深めてしまった。(…)然るべき行動を取るべきだったと悔やまれることもある。第一に,「ス」国内の状況をより深く分析していれば,和平プロセス後の悪い状況を減らすことができたかもしれない,第二に,オーナーシップ・モデルのような受動的なやり方を最初から採っていなければ,利用されずに済んだかもしれない。第三に,細やかにモニタリングしていれば,もっと早期に仲裁・監視役から撤退できていたかもしれない」と述べるなど,厳しい内容に。他方,「ノルウェーだけが,単独で,或いは一義的に責任を負っているとは言えない」と述べ,関係国の対応の限界も指摘。

(2)その他の国々
日本: 26日,明石政府代表が訪「ス」。27日に,南部高速ハイウェーの完成式典に出席した他,政府要人,野党関係者,市民団体,外交団らと会談。「ラ」大統領(28日),「ピ」外相(28・30日)。バジル・「ラ」経済開発大臣(29日),ゴタバヤ・「ラ」国防次官(29日),サマラシンハ・プランテーション大臣(29日),ハキーム司法大臣(30日),TNA議員団(29日),UNP議員団(30日)ほか。
SAARC首脳会議: 10日,「ラ」大統領はモルディブを訪問し,第17回SAARC首脳会議に出席。「ラ」大統領は演説において,「今日SAARCの国々は,食糧・エネルギー安全保障,環境保護,テロの被害の各分野において脅威に直面しており,協議より即時の行動が必要」と発言。
インド: 10日,モルディブで開催されたSAARC首脳会合に出席した「ラ」大統領は,シン印首相と2カ国間会談実施。「ラ」大統領は,シン印首相との会談において,過去10ヶ月間で43,700隻もの印漁船が「ス」北部海域に入り込んでいる問題点を伝えた他,北部IDPの再定住後に住宅支援が必要な状況等について説明を行った。会談後,シン印首相は,「私の関心事項はタミル人IDPの再定住と,漁民への対応の仕方である。「ラ」大統領は,残り7,000名のIDPの社会復帰を支援してくれる旨,確約してくれた。「ス」政府とTNAとの直接協議は続いているし,民族問題の解決へ向けた国会選定委員会の設置も決まっている。漁民たちに対し武力を用いることは容認できず,共同作業部会を通じて問題解決をすべきである」との考え方を「ラ」大統領に伝達した旨明らかに。
パキスタン: 10日,「ラ」大統領はSAARC首脳会合と並行し,ギラーニ「パ」首相とバイ会談実施。
南アフリカ: 16日,イブラヒム南アフリカ国際関係・協力副大臣が訪「ス」し,「ピ」外相と会談。


 

スリランカ内政・外交(2011年9月29日-10月30日)

1 内政

(1)地方議会選挙
8日,都市部を中心に23の地方議会で選挙実施。与党が21議会で勝利したが,注目されたコロンボ市議会(伝統的には野党UNPが強い選挙区)では政府のスラム対策のあり方が批判を呼び,UNPが勝利(得票率:UNP43%(24議席),UPFA32%(16議席),DPF(タミル政党)11%,SLMC(ムスリム政党)4%(2議席),JVP1%(1議席))。選挙プロセス・投票状況は概ね平穏との評価。ただし,選挙当日に,与党の政治家グループ同士がコロンボ近郊でコロンナワ地区で銃撃戦を行い,4名が死亡。バーラタ・ラクシュマン・プレマチャンドラ元国会議員(SLFP)が死亡した他,現職国会議員のドゥミンダ・シルバ氏(UPFA)も意識不明の重体に。

(2)野党内の分裂
●最大野党UNP:  党幹部と改革派とのいざこざ継続。25日,R.セナナーヤケUNP元総裁補佐・元会長は,党の新総裁選出に向け臨時の綱領を策定するよう,カル・ジャヤスーリヤ副総裁及びサジット・プレマダーサ副総裁に要請。また,27日のUNP党作業部会では,党員が記者会見や政治集会を実施する場合の党総裁の許可の必要性如何を巡り議論が対立。
●野党JVP:  JVP党内でも主流派と分離派との間でのいざこざが継続。25日には党本部施設の占有権を巡り揉め事が発生。

(3)民族問題の解決・和解
●「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」:  29日,LLRC事務局は,「LLRCは最終報告書を11月の第2週に「ラ」大統領に提出予定である。ただし,本報告書の公表如何は,大統領の判断に委ねられる」と述べ,同報告書が公表されないかもしれない可能性を示唆。
●国会選定委員会(PSC): 8月に国民和解に向けた方途を検討するためにPSCの設置を提案する動議をチャマル・ラージャパクサ国会議長に提出した閣僚らが,6日,再び,国民和解に向けた政治的・憲法上の措置を検討するためとしてPSC設置を提案する動議を同議長に提出。また13日,「ラ」大統領は,「(PSCの設置時期について,)国会が決めるべきこと」と発言。28日,ウィクラマシンハ最大野党UNP総裁は,「政府が今年中に納得のいく民族問題の解決案を提示してくれるのなら,我々UNPは政府を支持する用意がある。
●TNAとの直接協議: 2日,プレマチャンドランTNA幹事長によれば,3日に予定されていたTNAと政府との協議は政府側が地方議会選挙準備で多忙なため,延期に。

(4)人権
●6日,政府は,人権保護・促進国家行動計画を発出。サマラシンハ人権担当大統領特使・プランテーション相は「本件には明確な目的,優先事項,期限付き目標が記されており,人権保護・促進に向けて実現可能な,実際的な計画である」と説明。
●16日,最高裁は「代替政策センター(CPA,注:政府に批判的な政策提言型NGO)」が提訴しているテロ防止法(PTA)に関する基本的人権訴訟の審議を拒否。

(5)北東部情勢
元LTTE要員の社会更正: 9月30日,大統領公邸にて,更生された1,800人以上の元LTTE兵士の社会復帰式典が催され,大統領や閣僚,各国大使他が出席。
●土地の再分配・再登録問題 17日,TULFをはじめ北部を拠点とするタミル政党らが,ワウニヤ町議会前で断食抗議活動(fast)を実施。問題となっているのは,政府が今般北・東部の土地再登録を決定したこと,ムライティブ県における行政長官の管轄区域の新設,政府軍の軍事プレゼンス,民族問題の解決の停滞。これを受けて,21日,政府は国会で本件に関する説明を行ったものの,翌22日,TNAは最高裁に基本的人権訴訟の提訴を決意。
●東部開発: 19日,東部州トリンコマリー県及びバティカロア県を結ぶ5つの橋が完成(仏支援)。

(6)国防省の名称改正
16日,大統領府は国防省の機能・名称を改め,「国防・都市開発省(the Ministry of Defense and Urban Development)」としたと発表。

(7)住民と治安当局の摩擦
9月29日夜,ガンパハ県ドンペ(Dompe:コロンボから東に約30キロ)にて事件容疑者が警察による拘留中に死亡したことを受けて2,000人以上の住民がドンペ警察署を包囲。翌30日朝から住民が警察署及び車両に投石。その数時間後,警察署から出火。30日昼までに状況は沈静化。

 

  1. 外交
  1. 国連 

9月30日,訪米から帰国したサマラシンハ人権問題担当相は「『ス』は今次人権理事会で,2つの重要な勝利を収めた。即ち,国連人権担当高等弁務官がダルスマン報告書を理事会に提出しようとしたのを阻止し,また来年3月の理事会で『ス』問題を取り上げる旨の加提案による決議案を阻止した」と発言。なお,「サ」人権担当省は10月に再度訪米し,26日にはバン国連事務総長,ナンビアール国連官房長,フォックス前英国防大臣らとそれぞれ会談した他,国連第三委員会に参加。

(2)西側諸国
●豪・英連邦:  28日から3日間に亘り,豪パースでの英国連邦首脳会議(CHOGM)が開催され,「ス」から「ラ」大統領及びピーリス外相が出席。並行してラッド豪外相(25日)及びギラード豪首相(翌26日)と会談した他,28日にはエリザベス女王主催の夕食会に出席。30日,ピーリス外相は記者会見を行い,「一部の英連邦加盟国やLTTE勢力が,内戦末期の次期CHOGM開催地を巡り,反「ス」活動をしかけてきたが,人権侵害問題,CHOGM開催地問題のいずれにおいても乗り切ることが出来た」と発言。なお,「ラ」大統領の訪豪に対する風向きは強く,タミルダイアスポラとその賛同者による様々な活動に直面(例: 豪緑の党が「「ス」政府要人を国際刑事裁判所(ICC)で裁き,豪政府は英連邦会議から「ス」を締め出すべきであると要請(17日)/豪ABCテレビ局が「ス」内戦末期の状況に関するドキュメンタリー番組を製作・放映/メルボルン地方裁で「ス」系豪人のジャガティースワラン氏が「ラ」大統領を相手取り「ス」一般市民殺害容疑で提訴/LTTEシンパのタミル団体「グローバル・タミル・フォーラム(GTF)」や豪タミル議会(ATC)が「「ス」の説明責任問題:英連邦における共通の正義」と題する会議開催)。
●米国: 22日,当地米国大使館はプレスリリースを発し,米国は2010年12月以降一時停止していた「ス」に対する特恵関税措置(GSP)を復活させる意向を明らかに。今後のGSPの具体的な対象期間は2011年11月5日~2013年7月13日となるが,同措置は2011年1月に遡って施行。9月27日,スティーヴン・チャボット米下院議員・中東/南アジア小委員会議長が来訪(~29日)。また10月30日,米下院議員のヘス・シューラー氏,ベン・チャンドラー氏,ジャック・キングストン氏らが訪「ス」し,記者会見では「「ス」はテロを打倒し,戦後は和解と再発展に向け,経済面・安全面で大きく進歩している」と称賛。
●英国: 9月29日,英国で難民申請するも国外退去となった50名の「ス」人がコロンボに到着。英国からの難民申請者の帰国は6月の44名に続いて2度目。14日,ライアム・フォックス英国防相は,自身が関与していた「スリランカ開発トラスト」の成果を疑問視されていたことを発端に,同職を辞任。
●EU:  12日,EU議会において「ス」内戦末期に関するドキュメンタリー番組「Sri Lanka's Killing Field(注:英テレビ局チャンネル4が本年6月に製作・放映し,「ス」政府から強い非難を受けていたもの)」の上映会実施。「ス」政府は反発。
●フランス:  14日,訪仏したG.L.ピーリス外相は,ジュペ仏外相と会談し,戦後の復興状況についてブリーフィング。「ジュ」仏外相は,「ス」の経済発展と和解における進展状況に対し好意的な見方。
●ドイツ: 12日,独裁判所は,独国内においてLTTE資金調達活動を行っていたアギラン氏ら3名の「ス」出身のタミル人(独国籍保持者)に対し,懲役4年9ヶ月の有罪判決。
●オランダ: 21日,蘭法廷は蘭国内で逮捕されたLTTE活動家5名に懲役2~6年の有罪判決。
●ノルウェー: 16日,訪諾したデシルバ灌漑・水資源管理大臣は,オスロでストーレ諾外相と会談。会談後「デ」大臣は声明を発し,「EU諸国の中で諾だけがLTTEを非合法していない。諾政府はもはや和平のファシリテータとしての役割は終えた。今こそ,LTTEをテロ団体に指定すべき,と発言。

(3)その他の国々
●インド:  8日から当地を訪問したマタイ印外務次官は,10日,ラージャパクサ大統領と会談。LTTEシンパの在外タミル人団体「グローバル・タミル・フォーラム(GTF)」の指導者であるS.J.エマニュエル牧師が,印タミル・ナドゥ州チェンナイの空港で入国しようとしたところ,印当局がこれを拒否。
●ベトナム:  13日,チュオン・タン・サン越国家主席が越大統領として初めて「ス」を公式訪問。14日に在スリランカ越大使館の開館式に出席。また「ラ」大統領と会談し,地域の安全とテロ撲滅に向け「ス」を支援する意向を表明。

     (了) 

 


 

スリランカ内政・外交(2011年9月1日-9月28日)

1 内政

  1. 緊急事態令の失効後の動向

1日,モハン・ピーリス検事総長は「緊急事態令(Emergency Regulations,注:公共安寧法(Public Security Ordinance)の第2部にあたる)は8月30日をもって失効した。9月1日からは,テロ防止法(PTA)の下に新たな法規が設けられ公示(Gazette Notification)された。なお,新法規はあくまでも「緊急事態後令(Emergency Consequential Bill)」が国会で採択されるまでの暫定措置であり,同法案は今後2週間以内にも国会に提出予定」と発言。
●6日,政府・与党は国会で,逮捕令状なしで48時間の容疑者の拘束を可能とする「犯罪手続き特別法(Criminal Procedure Code (Special Provisions) Act)」を延長させようとしたところ,野党からの反発に合い保留に。これに続き18日,ハキーム司法大臣は,「犯罪手続き特別法」なくしても,警察による48時間の拘束は可能である」との見解を示唆。
●7日,国会においてウィーラコディ国会副議長は,公共安寧法の下での公示(gazette notification,注:8月6日付)を読み上げた。これに対し,野党UNPは,「緊急事態令の解除は国際社会を欺くための見せかけに過ぎず,緊急事態令失効後も公共安寧法自体が維持され,意味がない」と批判。

(2)民族問題の解決・和解
政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議: 16日,政府とTNAは8月4日以来約6週間ぶりに直接協議を実施。両者は今後も直接協議を続けていくことで合意(次回協議は10月3日を予定)。
国会選定委員会(PSC)設置へ:  9日, 与党は民族問題の政治的解決に関する国会選定委員会(PSC)の設置に関する動議を国会に提出。同動議によると,PSCの目的は,異民族間の調和を促進するための政治的措置を形作り,彼らを一国家における市民としてエンパワーすること。なお,PSCは6ヶ月以内に大統領に報告書を提出予定。TNAほか野党の参加如何は依然未定。
●北部の軍事プレゼンス:   6日,国会においては,N.S.デシルバ灌漑・水資源管理大臣は,「北部の政府軍のハイセキュリティゾーン(HSZ)占有率は3.5~4%であるところ,政府は目下,HSZの元の土地所有者への返還を進めている。またジャフナ駐屯の兵士数は2万7千人」と発表。
●人権問題への取り組み:  8日,政府は,「人権保護・促進に関する国家行動計画(National Action Plan for the Protection and Promotion of Human Rights)」を閣議決定。同行動計画は政府と市民社会が協議を行い,2008年5月から策定してきたもの。2011年から5年間に亘り実践され,定期的なレビューが行われる由。

(3)内戦末期の人権状況に関する説明責任問題
●1日,国防省は,内戦末期に関する報告書「人道オペレーションの事実分析(Humanitarian Operation Factual Analysis: July 2006 - May 2009)」を発表。発表式典において,ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官は「英テレビ局チャンネル4による映像は根拠がなく,「ス」政府のイメージを傷つけようとするもの。本報告書によって,タミル人ダイアスポラやLTTEの国際ネットワークの非難を黙らせることができるだろう」と発言。
●2日,「ス」私企業連盟・商工会は「国連専門家パネル報告書に関する民間セクターの見解」と称する報告書を発表。「政府と国際社会の間で人権問題・説明責任問題が過熱すれば,「ス」企業に深刻な悪影響を及ぼすことになり,懸念される」と述べ,「ス」政府だけでなく,国連専門家パネルや外交団に対しても厳しい評価を下す内容に。
●7日,アムネスティ・インターナショナル(AI)は第18回国連人権理事会の開催を前に,「ス」の「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」に関する報告書(全69頁)を発表。LLRCの活動はマンデート,メンバー構成,実践の全ての面で欠陥だらけであると非難し,「内戦末期の戦闘で少なくとも1万人の一般市民が殺害されたとの証言がある」と述べるなど,国際的な調査の必要を改めて示唆する内容。
13日,バン国連事務総長は国連専門家パネル報告書を国連人権理事会に送付。ただし,これは国際的な調査の必要性を勧告した訳ではなく,これをどうするかは,加盟国次第との見解。これに対し,「ス」政府は強く反発。22日,ジェネーブから帰国したN.S.デシルバ大臣は,「我々は,UNHRCの理事国40カ国に対し,ダルスマン報告書が偏見に満ち,信憑性のないものであることを確信させることができた。特にインド,ロシア,中国は力強い支援をしてくれている。その結果,今次UNHRCでの同報告書を巡る協議は防ぐことができた。しかし,来年3月に本件がUNHRCで協議される可能性がある」と発言。

(4)野党JVPの党内分裂
19日,野党JVP(南部を拠点とするマルクス主義政党)の党内分裂状況が明らかに。党中央委員会メンバー25名(同委員会の過半数を超える人数)が党本体から離脱し,間もなく新党を形成か。離脱組は,JVPの影の指導者的存在と見られるプレムクマール・グナラトナム氏(注,タミル人で,1988/89年のJVP武装蜂起時に殺害されたJVP活動家ランジーダン氏の兄弟であり,9月上旬に亡命先の豪から帰国)の派閥に属する党員たち。分裂の主な原因は党のリーダーシップ問題と見られる。またグナラトナム派は,JVPはタミル人を支援すべきとの考え方を有しており,この点で現職のソマーワンサ・アマラシンハJVP指導者と意見が相違する由。 22日には,アマラシンハ指導者とグナラトナム氏の直接対話が行われ,協議は長時間に亘った模様。

  1. 外交

(1)ラージャパクサ大統領の国連訪問
●第66回国連総会:  23日,「ラ」大統領は国連総会で演説実施。「国連システムに対し,開放性と適応性を求めたい。小さい国こそ保護されるべきである。我々は過去数週間において,容認し難い差別に直面した。「テロとの闘い」と同じくらい重要かつ困難な課題が,「平和を得るための闘い」である。戦後約30ヶ月という短期間で成し遂げた成果を,自信をもって示したい。また和解は,経済成長と同じくらいに重要である。包括的参加の精神を高め,苦い追憶をすべての人々から取り除く必要がある。今や「ス」は自足的な国となり,未来への明るい希望が差しており,強い経済になろうとしている。国際社会には友好的精神をもって協力して欲しい」と発言。
●関係者とのバイ会談:  18日,「ラ」大統領は,米ニューヨークに向け出発。20日,「クリントン・グローバル・イニシアチブ会合」に出席しビル・クリントン元米大統領と面会。21日,バン国連事務総長主催の昼食会に出席したほか,オバマ米大統領と立ち話を実施。また,ブレイク米国務次官補,ジョナサン・ナイジェリア大統領,トゥルク・スロベニア大統領,オトゥンバエヴァ・キルギス大統領とバイ会談実施し,「ス」の戦後復旧・復興の状況等を説明。22日,バッタライ・ネパール首相,カルデロン・コロンビア大統領,アフマディネジャード・イラン大統領とバイ会談。23日,マンモハン・シン印首相,ワヒード・モルディブ副大統領,シャルマ英連邦事務局長とバイ会談,24日,米議員団と朝食会談の後,バン国連事務総長と会談。

(2)西側諸国
●米国: ブレイク米国務次官補が訪「ス」。 「ラ」大統領と会談(12日)し,北部の軍事化問題,「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」の報告書等を巡り協議。14日は記者会見を行い,「ス」政府の戦後の努力に一定の評価を示すとともに,「まだたくさんの課題がある」と指摘。また,「我々はLLRC報告書が,専門家パネル報告書が提起した事項に言及してくれると期待している。アカウンタビリティを果たすためには信頼できるプロセスが必要。(圧力が)必要とならないことを願っている。「ス」は国連人権理事会と積極的に関係を持つべき」と発言。
●英国:  5日,G.L.ピーリス外相は英国ケンブリッジ大学を訪れ,経済犯罪に関する第29回ケンブリッジ国際シンポジウムに出席。15日,英国会はインド亜大陸における人権問題に関する審議を実施し,「ス」及び印の説明責任への対応を批判。またLTTEシンパ議員として知られるシオベイン・マクドナウ労働党議員は,「内戦末期の5ヶ月間だけで,4万人の一般市民及び6万人の軍人,即ち合計10万人の人々が死亡した」と発言。
●オーストラリア:  22日,豪国会において,リー・リアノン豪上院議員(緑の党)が,「ス」を英国連邦から除名するよう求める動議を国会に提出。豪議会は本動議を否決(与野党共に反対投票)。
●カナダ:  9日,ハーパー加首相は,「人権問題で「ス」で進展が見られないならば,自分(「ハ」首相)は2013年に「ス」で開催予定の英国連邦サミットに出席しない」と発言。本件を巡り,14日,在加大使はベアード加外相と会談し,本発言に落胆した旨伝達した他,戦後の「ス」情勢について説明を実施。

(3)その他の国々
●中国: ジャヤラトナ首相が訪中。7日に中国・厦門の第15回国際投資貿易フェア(CIFIT)に出席した他,8日は呉邦国(Wu Bangguo)全人代常務委員長と会談。呉委員長は「ジャ」首相に対し,「ス」の主権・独立性。領土的一体性を保護するための「ス」の努力を支援する旨確約。
●ベトナム:  ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官が訪越。5日には,チュオン・タン・サン国家主席及びグエン・チ・ヴィン国防副大臣とそれぞれ会談。
●ピーリス外相の外交:  ピーリス外相は,8月29日に出国し,シンガポール,韓国,英国,セルビア,ジョルダンを相次いで訪問。
(了)  


スリランカ内政・外交(2011年8月1日-8月31日)

1 内政

(1)民族問題の解決・和解
●緊急事態令の失効: 25日,国会において,ラージャパクサ大統領は「緊急事態令を延長しないことを決定した。2009年5月の紛争終結以来,テロ活動は全くなくなった(no terrorist activities)。したがって,スリランカ国内において緊急事態令を課す必要は最早なくなった。国家は平時の法の下に,民主的に運営していける」と発言(当館注:緊急事態令は2005年8月にカディルガマール外相が暗殺されたことによりクマーラトゥンガ大統領(当時)が公共安寧法(Public Security Ordinance)に基づき緊急事態令を公布し,以降毎月国会で同令延長の手続きが行われてきた。同令は,軍・警察の権限を強化(容疑者の礼状なしの逮捕や,逮捕者の最長12ヶ月の拘束等)しただけでなく,LTTE及びTROの非合法化,元LTTE要員の拘留,高度警戒地域(HSZ)の設置・維持等の根拠法となってきた)。「ラ」大統領の宣言により,同令は8月30日をもって失効。また,本動向を受け,野党各党は,TNAを除き,軒並み歓迎声明を発出。また米,印,英,豪,国連,EUが次々に歓迎声明を発出(26~27日)。なお,同令失効後においても,LTTE非合法化,元LTTE要員の拘留等の措置は継続され,根拠法はテロ防止法(PTA)に移管され,かつ近々,新法案が提案される見込み。


政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議: 4日,政府とTNAの第10回直接協議実施。協議後,TNAは声明を発し,「我々は本年1月以降,10回に亘り政府と直接協議を行い,具体的な政治的解決案の提示を求めてきたが,何の反応もない。最早,10日以内に政府が(ア)新しい統治形態,(イ)中央政府と州議会の機能分割,(ウ)財政上の権限移譲,の3点に関する具体的提案を書面で示さないならば,次回の直接協議は行わない。政府に真剣な取り組みが見られない状況は遺憾。政府は世界を欺き見せかけているだけである。我々はこのような欺瞞に満ちたプロセスを続けるべきかどうか,疑っている」と発言。その後,期限を過ぎても政府からの反応はなく,20日,プレマチャンドラン幹事長は「兎に角,今は政府からの返答を待つのみ」と発言。


国会議員選定委員会(PSC)設置へ:  9日,与党は民族問題の政治的解決に関する国会選定委員会(PSC)の設置に関する動議を国会に提出。同動議によると,PSCの目的は,異民族間の調和を促進するための政治的措置を形作り,彼らを一国家における市民としてエンパワーすること。なお10日,バジル・「ラ」経済開発大臣によれば,PSCは6ヶ月以内に大統領に報告書を提出予定。なお,TNAは依然としてPSCの参加如何は未定である,との見解を表明(20日)。


●内戦末期の人権状況に関する説明責任問題:  1日,国防省は,内戦末期に関する報告書「人道オペレーションの事実分析(Humanitarian Operation Factual Analysis: July 2006 - May 2009)」を発表。発表式典において,ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官は「英テレビ局チャンネル4による映像は根拠がなく,「ス」政府のイメージを傷つけようとするもの。本報告書によって,タミル人ダイアスポラやLTTEの国際ネットワークの非難を黙らせることができるだろう」と発言。
他方,過去の教訓・和解委員会(LLRC)事務局によると,現在LLRCは英チャンネル4製作のドキュメンタリー映像の信憑性に関する調査を進めている由。

(2)「油まみれの鬼」事件・暴動の多発
11~15日にかけて,東部州・中央州(注:いずれも少数派であるタミル人・ムスリムが多く居住する地域)を中心に,暴漢者による強盗・強姦事件が多発。被害者の多くは女性。住民たちは,これを「油まみれの鬼(grease devils,当地で噂される伝説の悪魔)」による犯行と呼ぶとともに,これらの事件は政府軍に仕組まれたものではないかとして,軍との関係を疑っており,東部州内各地で治安当局に対する抗議デモを開始。これに対し,治安当局は催涙弾等を使用し,各地でデモ隊を鎮圧するが,ポットゥウィルでは警察が市民1名を射殺する事態に(11日)。また,「油まみれの鬼」に関する暴動は,21日に北西部州プッタラマ,22日には北部州ジャフナにも拡大。
<主な事件>
●11日,東部州アンパラ県ポットゥウィル地区で, 警察がデモ隊に発砲し,住民1名(最大ムスリム政党SLMC活動家)が死亡。警察は12日夕刻~13日早朝にかけ,同地区に夜間外出禁止令発出。
●14日,東部州トリンコマリー県キンニヤ地区で,怪しい格好をした者が車に乗って海軍基地に入っていくところを地元住民が目撃し,これを発端に同基地に住民らが投石を開始。これに対し海軍兵士が発砲する事件が発生。住民2名が負傷し,24名逮捕。
●21日,北西部州プッタラム市内で,警官1名(23歳)が市民たちに暴行され,死亡。特殊部隊と陸軍兵士が現場に赴き,10分間に亘り空砲を発射しつつ事態を沈静化。
●22日,北部州ジャフナで,「油まみれの鬼」を政府軍が匿っているとして,住民が政府軍に抗議し陸軍基地に投石。これに対し,治安当局が鎮圧のため出動し,102名を逮捕。27名負傷。

(3)最大野党UNPのリーダーシップ問題
UNP党内では,7月23日の地方議会選挙で大敗を喫したことにより,党リーダーシップ問題が再燃。党改革派議員らはカル・ジャヤスーリヤ副総裁を次期総裁とすべく党幹部に要請。これに対し,ウィクラマシンハ総裁は,「自分は依然として指導者の地位にある。批判に直面したとしても,逃げ出したりしない」と発言するなど(5日),存続の姿勢変わらず。17日に開催されたUNP党作業部会(Working Committee)でも,「ウィ」総裁の退任には至らず。サジット・プレマダーサ議員ら党改革派議員らは,本部会の開催に合わせ,コロンボ市内でデモを実施するも実らず。

(4)コロンボ市議会の復活
2010年6月に解散されて以降,機能停止に陥っていたコロンボ市議会(CMC)は今般復活されることとなり,必要な臨時の政府公示(extraordinary gazette notification)が2日に発効。これによりCMCは11月1日より再開に。

  1. 外交
  1. 国際機関

●国連: 16日,ファルハン・ハク国連副報道官代理は記者会見において,「国連専門家パネル報告書はまだ国連人権理事会(UNHRC)には提出されていない。しかし,近い将来提出される可能性もある。加盟国が本報告書を取り上げ何等かの行動をおこしてくれることを期待する」と発言。なお,次回の第18回UNHRCは9月18~30日にジュネーブで開催予定。
●EU: EUは, LTTEを引き続きテロ組織に指定する旨をEU議会報(7月18日発刊)で公表。

(2)米国
●対「ス」援助禁止に向けた動向:  4日,ウィクラマスーリヤ在米大使は,米国下院外交委員会(注:野党共和党が過半数を占める)が可決させた対「ス」援助の停止措置に関する決議について,「これは,特に「ス」を標的としたものではない。「ス」下院は,対外援助の18%削減を目標としており,こうした中「ス」に関する事項は,数百頁に亘る予算決議において僅か1頁を占めたに過ぎない。今後,上院(注:民主党が過半数を占める)で可決される可能性は低く,正式に運用される可能性も低い。これが失敗すれば,むしろ当面はこうした措置が講じられなくなると思われることから,むしろ好都合」と発言。
●米国務省の動向:  9日,米国務省のV.ナランド報道官は定例記者会見において,「我々は「ス」にかけられている国際人権規約,国際人道法の侵害容疑に関し,国際基準に則り,独立的かつ包括的な信頼できる調査を求む。もし,自ら行動を起こそうとしないならば,国際社会から更なる圧力に晒されるだろう」と発言。「ス」政府は反発。他方,18日,米国務省は「テロに関する国別報告書2010年(Country Report on Terrorism 2010)」を公表。「ス」に関し,「2009年に終戦を迎えたにも拘わらず,2010年となっても,テロ団体が武器調達や資金集めの活動が確認された。資金集めを行っているのは,北米・欧州・豪のLTTEシンパのタミル・ダイアスポラたちである」と記述。

(3)インド
●シン印首相発言:  3日,印国会において,シン印首相はMDMK(注:印タミルナドゥ州を拠点とするLTTEシンパのタミル政党)のヴァイコ党首との会談において,「「ス」との経済関係を制限・断絶することなどできない。そのようなことをすれば,「ス」と中国の経済関係の深化を助長するだけ」と発言。
●クリシュナ外相発言:  25日,「ク」印外相は,「国連専門家パネル報告書が喚起した問題点については,これまでのところ国連を含め他のどの国際機関も正式な議題として取り上げていない。印としては,自らの立場を決めるにあたって,こうした動きを見守っているところである。「ス」政府には緊急事態令の廃止も含め,早期の問題解決を繰り返し求めている」と発言。
●国連専門家パネル報告書のタミル語版出版:  印チェンナイの出版会社は,国連専門家パネル報告書のタミル語翻訳版を出版し,「戦争犯罪」とのタイトルで発売を開始。本書は328頁におよび,その内の240頁は同報告書の翻訳となっている他,様々な注釈が付記されている由。なお,序文にはLTTEシンパの活動家であるルドラクマーランTGTE代表,エマニュエルGTF代表らが寄稿。

(4)中国
●9日より4日間に亘り,「ラ」大統領が訪中。北京及び深センを訪問し,ユニバーシアード開幕式に出席した他,胡錦涛国家主席,温家宝首相と会談。温家宝首相との会談(11日)では,国際的な舞台における全面的な外交支援や,南部ハンバントタ港の第二工程の支援を取り付けた他,ノロッチョライ火力発電所についても協議。なお,同日,「ラ」大統領は北京外国語大学より名誉博士号を授与。また13日には,胡錦涛国家主席主催の昼食会に出席。

(5)ロシア
●17日,露最大の石油会社Gazpromのヴェレリー社長が訪「ス」し,G.L.ピーリス外相及びS.プレマジャヤンタ石油産業大臣と会談。「ス」における石油探査,露から「ス」への天然ガス輸出に関し,「ス」側と協議。また同日,露国営輸出業者Rososboronexportは,「ス」は露製ヘリコプターMi-101/Mi-17を14機購入し,既に納品済である旨明らかにした。

(了) 

スリランカ内政・外交(2011年7月1日-7月31日)

1 内政

(1)地方議会選挙
23日,北部も含め全国335の地方議会の内,約2割にあたる65議会(市議会1,町議会9,村議会55)で選挙実施。特に北部でも20議会で選挙が行われ,中には約30年振りの選挙となった議会もあり,民主主義の復興を意味するものとして注目された。投票は概ね平和裡に行われたとの評価(投票率55~60%)。結果は,南部(多数派シンハラ人居住地域)では,与党連合UPFAが完全勝利(39議会全てで第一党となり,野党UNP,JVPはゼロ)。本年3月に実施された選挙結果と合わせると,与党連合UPFAの第一党獲得率は83.6%となり,国全体としてUPFAの圧倒的優勢は変わらず。他方,北部州(少数派タミル人居住地域)では,最大タミル政党連合TNA(野党)が圧勝(北部では20議会中15議会で第一党に)。本年3月の選挙結果と合わせれば,全30議会中,23議会で第一党の地位を獲得したことになり,同地域でのTNAの圧倒的優位を改めて証明。これにより,南北での政党の人気差が浮き彫りに。なお,惨敗を喫した最大野党UNPは,党内のリーダーシップ問題が再燃。

(2)民族問題の解決・和解
国会議員選定委員会(PSC)設置へ:  最大与党SLFPの党中央委員会は, PSCのマンデート策定・メンバー選定等を行うための特別委員会を別途設置することを提案し,採択(1日,ラージャパクサ大統領出席)。与党は,野党各党を正式にPSCに招待し,「特にUNPからの良い返事を期待する」との姿勢。他方,最大タミル政党連合TNAは,「PSCは民族問題の解決を故意に遅延させるためのもので,時間の無駄」と否定的な見方。また最大野党UNPは,当初は否定的反応を示しつつ,「政府と全面協力する用意があるが,TNAからの協力と理解を得られることが条件(9日,キリエッラ幹事長発言)」との立場。なお,野党JVPは不参加の意向を正式に表明。こうした中,与党はPSC法案を完成させつつも国会提出は見送ったまま。同時に,PSCの活動内容の規定を目的とした専門家パネルを設置する意向を発表(11日付)
政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議: 6日,政府とTNAは直接協議を実施。北・東部への権限移譲に関する事項について,両者間で口頭での合意を経た上で明文化することで合意。
●緊急事態令緩和・解除へ:  28日,ランブクウェラ報道大臣は,「政府は緊急事態令を間もなく,年内には緩和し,解除していく方向である。これは米国等,他国からの圧力によるものではない」と発言。
●国防費削減へ:  4日,P.B.ジャヤスンドラ財務次官は,政府は国防費をGDP比3%まで削減した旨明らかにした他,経済成長率6%台が維持されれば,更に今後2.5%程度まで削減する予定,と発言。

(3)北部情勢
●政府による選挙キャンペーン: 18~20日,「ラ」大統領は北部州ジャフナ県・キリノッチ県を自ら訪れ,地方議会選挙に向けたキャンペーンを開催。「ラ」大統領は,「我々は元LTTE兵士を更正させ,IDPもほぼ再定住させるなど,温情をもって正義を実践してきた。高度警戒地域(HSZ)は徐々に撤去していく」と発言。
IDP再定住・元LTTE兵士更正ともに漸進: 北部IDPキャンプの残留者数は10,832名にまで減少(8日,政府発表)。また北部マナー県,ジャフナ県,ワウニヤ県,キリノッチ県において既に再定住プロセスが完了し,残るムライティブ県でも地雷除去活動が完了し,随時再定住が進められる予定。また,元LTTE兵士は,全体の約70%にあたる7,900名が既に更正を果たし,残る2,900名も年内には全て更正予定(27日,ディサナヤケ社会復帰・刑務所改革省次官発言)。
●北部の復興予算増: 経済開発省は北東部の復興・開発計画である「北・東部の春」プログラムに対し,152億ルピーもの予算を割り当てた,と発表(13日付)。なお,前年度(2009/2010)予算は,北・東部併せて100億ルピーであった由。
●ジャフナ県の国会議員議席数削減へ:  2010年の有権者登録の結果を受けて,全国各県毎に人口に応じた国会議員議席数の再配分計画が進行中。これにより北部ジャフナ県では,議席数が大幅削減の方向(現在9議席→5議席へ)。これは484,791名となり,戦争前の1980年代から使用されてきた統計(816,005名)と比べ,同県の有権者数が激減したことによる。なお,同削減分は,南部4県に振り分けられ,これらの県では議席増となる予定。こうした動向をTNAは非難。
●北部タミル人ジャーナリスト襲撃事件:  30日,北部ジャフナにおいて,ウダヤン紙(注:北部で最大の発行部数を誇るタミル語新聞社)のクハナーダン編集長が帰宅中に2人組の男に鉄棒で暴行され,頭等を負傷して病院に搬送。陸軍は,事件への政府軍の関与を否定。31日,ラージャパクサ大統領は警察長官に対し,事件の究明を早期に進めるよう指示。

(4)大学教員連盟のストライキ
21日,全国大学教員連盟(FUTA,注:大学教員の昇給を求め5月9日以降ストライキを継続していた)は,ストライキの停止(suspend)を決定。FUTAによると,20日に行われた高等教育省との協議において,政府側が2つの条件(問題解決のための共同委員会の設置,及び研究費予算の一部の基本給へ配当)を呑んだことを受けての決定である由。

2.外交

(1)国連
●バン国連事務総長の動向: 7日,最大野党UNPの発した声明によると,5日にウィクラマシンハUNP総裁は国連本部でバン国連事務総長と会談。バン事務総長は「民族問題の政治的解決の取り組むための時間的猶予を「ス」政府に与える。ただし,これは無期限を意味するものではない。努力は不十分であり,調査に向けて目に見える形での行動が求められる。「ス」政府が国連専門家パネル報告書の知見に真剣に取り組もうとしないならば,国際社会は「ス」を中傷するだろう」と発言した由。
●国連人権理事会の動向: 1日,ピライ国連人権高等弁務官は,「「ス」政府は戦争犯罪容疑に関する調査をいたずらに長引かせるべきではない。もし成果を上げられなかったら,その時は,国際社会は新たな行動に出る。自分は国連人権理事会で本件が扱われるべきだと強く信じている」と警告。

(2)米国
●米国務省の動向:  20日,クリントン米国務長官はジャヤラリータ印タミルナドゥ州首相と会談。「ク」長官は,「「ス」タミル人の問題に関しては,IDPの苦境を憂慮している。革新的で創造的な解決が必要」と伝えた。なお,24日,ブレイク国務次官補は,「米国は「ス」の和解に向けた進展を望んでいる。米は,「ス」が英チャンネル4の番組が報道の調査を行い,責任のある者を訴追し,正義の審判にかけるべきであると考える。また「ス」政府は,TNAとの対話の努力を倍加すべき」と発言。
●対「ス」援助禁止に向けた動向:  21日,米下院外交委員会は,発声投票により,このまま「ス」政府が内戦末期に関する説明責任を果たそうとしなければ,対「ス」援助を禁止することを可決。ただし,人道援助,地雷除去活動,民主主義とガバナンスを促進する事業への援助は,対象外となる由。これに対し,22日,ランブクウェラ報道大臣は,「米国が「ス」の内政に関する事項に物申し,このような禁止を課すのであれば,米国自身が説く民主主義の原則と反するではないか」と批判。

(3)英国
●英国メディアの報道:  6日,BBCテレビは人気番組「ハードトーク」にウィジェーシンハSLFP議員(民族和解担当大統領顧問)を招き,インタビューを実施。番組中,「ウィ」議員は,「英メディアは,「ス」政府の主張を反証しようと画策している。こうした行為は,「ス」社会の二極化を助長する」と批判。なお,英テレビ局チャンネル4のドキュメンタリー番組は英国以外にも波及。豪ABCテレビ局(4日),印タミル・ナドゥ州チェンナイ(7~9日),米ワシントンでも国際人権団体らが放映会を開催。
●親LTTEの英国会議員の活動:  5日,英国会内において,「タミル人のための全政党英議員連盟(All Party Parliamentary Group for Tamils)」のリー・スコット議員(会長),シオバイン・マクドナウ議員(副会長)を中心に,LTTEシンパのタミル団体「グローバル・タミル・フォーラム(GTF)」の会議が開催。
●フォックス国防相訪「ス」:  9日,訪「ス」した「フォ」英国防相は,コロンボ市内のカディルガマール研究所で記念講演を実施した他,「ラ」大統領と会談。「ラ」大統領は,英政府は在英タミル団体の責任を追及すべきであると伝達。
●クリケット選手の講演:  「ス」随一のクリケットのスーパースター選手であるクマール・サンガッカラ選手は英ロンドンの名門クリケット・クラブで講演を行い,国内外で称賛を浴びる(4日)。

(4)インド
ムンバイでのテロ事件:  13日,「ラ」大統領はムンバイでのテロ事件を非難する声明を発出。
印タミルナドゥ州との関係:  21日,カリヤワサム在印大使はチェンナイを訪れ,ジャヤラリータ印TN首相と会談。在印「ス」大使がTN州首相と会談するのは,50年振り。

(5)パキスタン
●14~15日,G.L.ピーリス外相はパキスタンを訪問し,ザルダリ大統領及びギラーニ首相らと会談。「ギ」首相は「ス」・「パ」両国間での包括的経済協力協定(CEPA)の締結に向けた意欲を示し,本件を8月にコロンボで再度協議する意向を明らかに。

(6)中国
●コロンボ中心部のゴールフェース・グリーンが,中国系企業であるシャングリラ・ホテル及びCATICによりリゾート開発される計画となっている件で,閣僚の間から一時差し止めを求める声が浮上。本件は今後,閣議に上げられ,意志決定がなされる見込み(3日付)。

(7)日本
●16~20日,第27回人口と開発に関するアジア国会議員代表者会議に出席するため,日本の福田元総理ら議員団が訪「ス」。

(了)  


スリランカ内政・外交(2011年6月1日-6月30日)



1 内政

(1)民族問題の解決・和解
国会議員選定委員会(PSC)設置へ: 28日,ラージャパクサ大統領は記者会見において,民族問題の解決に向けた「国会議員選定委員会(Parliamentary Select Committee: PSC)」の新設を宣言。PSCは国会によって主導され,全政党が参加し,解決法を模索するものである由。なお,「ラ」大統領は,「過去のプロセスは結論に欠け,不完全であった。過去のことは忘れ,今を生きるべき。PSCは3ヶ月から6ヶ月と想定しているが,結局は国会次第」と発言。これに対し,29日,野党JVPは,「タミル人の問題を真摯に解決する政策でなければ支持できない。PSCは政府による欺瞞行為に過ぎない」として,不参加の意向を表明。
政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議: 23日,政府はTNAと第7回直接協議を実施。TNA側は政府の政治解決の意図が不明確として,51点の質問事項を明記し書面で提出。これに対し政府側も書面で返答する旨確約。また,29日,両者は第8回直接会議を実施。

(2)北部情勢
IDP再定住・元LTTE要員更正ともに漸進: 元LTTE要員は,5日に990名, 10日に327名が更正。11,700名の内、6,539名が更正を遂げ、施設残留者は4,360名に減少(5日)。またIDPについては,6月下旬にIDPの帰還を進めた結果,北部IDPの再定住者数は256,413名に。北部ワウニヤのIDPキャンプの残留者数は14,725名まで減少(29日,大統領府発表)。
北部州議会選挙: 28日,「ラ」大統領は同選挙を来年中に行う意向を表明。
治安当局がTNAの会合を強制解散: 16日,北部ジャフナにおいて,TNAが7月23日実施予定の地方議会選挙に向けた会合を行おうとしたところ,武装兵士約30名が押しかけ,本集会は当局の許可を得ていないとして強制解散される事態に。TNA側は,党内会合に過ぎず当局の許可は必要ないはず,と主張。他方,治安当局は公的集会と見なし,意見が食い違った模様。本件を受け,ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官は事実関係の調査を行い,関与した者を処罰するよう,ジャフナ県政府軍司令官に指示。18日,同司令官はTNAと4時間に亘り会談し,TNAに対し謝罪した他,当局側の責任の所在を調査し罰を与える旨確約。
政府軍による住民登録活動は停止に 18日,ハトゥルシンハ・ジャフナ県陸軍司令官はTNAとの会談において,政府軍による北部住民登録活動(注:TNAによれば,政府軍兵士が市民の自宅を定期的に回り,人数確認等の監視活動を行っている由)を停止する旨,確約。本会談を受けて,20日,TNAは,最高裁に提出していた基本的人権訴訟を取り下げ。

(3)市民による抗議デモ・ストライキ
●カトナヤケ輸出加工区(EPZ)での抗議デモ:  5月30日,企業間労働組合(ICEU、注:野党JVPと関係が深い労働組合)が主体となり、コロンボ国際空港近辺のカトナヤケEPZにおいて、政府の提案する年金制度法案に反対する抗議活動が行われ、デモ隊が暴徒化。これを発端に,一部の警察官がデモ隊に発砲し,1名死亡する事態に。政府は重く受け止め,6月1日,バラスーリヤ警察長官が辞職した他、暴行を行った警察官2名を即時逮捕し,82名の警察官に一時職務停止命令を通告。
●全国大学教員によるストライキ: 3日、全国大学教員連盟(FUTA)の代表らは大統領府で政府と直接協議を実施。17日,FUTAは高等教育省に昇給等に関する提案書を提出。22日,FUTAは全国の大学の教員たちを動員してコロンボで抗議デモ実施。

2.外交

(1)国連
●国連専門家パネル報告書を巡る動向: 1日,バン国連事務総長は,「信頼できる独立調査の実施は,まずそれぞれの主権国家の責任の下に行われるべき。新たな国際的な独立調査メカニズムについては,「ス」政府との合意,或いは政府間機関からのマンデートが必要」と発言。他方,20日,G.L.ピーリス外相は,「我々は,ダルスマン報告書の内容を了承した訳ではないし,これに反応するつもりはない。また英テレビ局チャンネル4による映像の真正性を認めた訳でもない。その代わり,戦後復興の進展ぶりについての報告を纏め,国際社会に提示する予定である」と発言。
●ジュネーブ第17回国連人権理事会(UNHRC): 5月30日より開会した第17回UNHRCでは,「ス」に関しては,国内における「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」の動きを見守るという雰囲気が支配的となり,人権理の公式の場では表立った動きは起きず(一方、スリランカ政府軍も深刻な人権侵害を行ったことを強調するサイドイベントは開催)。「ス」政府に時間的猶予が与えられることに。
バン事務総長再選を支持: 11日,コホナ国連代大使は,「バン事務総長は国連を統率するアジア人として理想的な人物。リーダーシップのあり方は,静かで押しつけがましさがない。彼はよく仕事し,人道問題への取り組みに向けてがんばっている」と述べ,バン事務総長の再選支持を表明。

(2)英国・EU
●英チャンネル4によるドキュメンタリー番組放映: 14日,英テレビ局チャンネル4は,ドキュメンタリー番組「Sri Lanka's Killing Field(約50分間)」を英国内で放映。映像は,戦闘末期の現場における死傷者,殺害・処刑の瞬間,攻撃を受けたとされる非戦闘地帯内の病院,レイプされた女性の死体等,緊迫した状況を伝える映像を多数盛り込んだもの。「ス」政府の主張(「ゼロ・シビリアン・カジュアルティ政策」等)は虚偽であるとして,当時の国連の対応のあり方にも問題提起する内容に。本番組を巡り,14日,バート英外交担当国務大臣は,「おぞましい映像に衝撃を受けた。これらは「ス」の国際人道法・人権規約違反の確たる証拠を示すもの。全ての国際社会は,「ス」政府からの真剣な対応を期待しており,もし「ス」政府が反応を示さないようなら,国際社会は「ス」政府に対しあらゆる圧力をかける」と発言。翌15日,キャメロン英首相も国会で同番組に言及し,「「ス」政府も国連も,戦争犯罪の調査をすべき」と発言。これに対し外務省及び在英「ス」大使館は,15日に声明を発し,「本番組の映像は如何なる真正性も有していない。ダルスマン報告書と同じく,結論が先立ち,主張を正当化するために映像を並べ立てたもの。LTTE関連のウェブサイトや一部の国際メディアで掲載されてきた映像が多用され,「ス」政府の和解や開発に向けた努力を蝕もうとする企てである。」と反論。他方,「ス」政府は国連機関や国際NGOと協力関係を維持していく,とも付言。なお,22日,ニューヨークの国連教会センターにおいて,国際NGOの主催により本番組の上映会実施。チャンネル4の製作メンバーも出席。コホナ国連代大使は,「本ドキュメンタリーは偏見に満ちている。我々は上映会に招かれもしなかった」と批判。
●EU: 反「ス」・親「ス」の動きが混在: 6月1日,欧州議会において,欧州ノルディック・グリーン主催(LTTEシンパの議員連盟)は,「ス」に関する会合(議題は「戦後2年が経過した「ス」:被告は裁きにかけられるのか」)を実施。印タミル・ナドゥ州のヴァイコMDMK党首(注:プラバーカラン故LTTE指導者と関係が深かった政治家)らも参加。他方,EU内に「ス」政府との和解へ向けた動きも。 6月中旬,EU議会は,本年2月に行われたEU議員団(ランベール女史が団長)の「ス」視察報告のヒアリングを実施し,報告書を発表。「視察により「ス」政府の北部復興計画の詳細が理解でき,非常に前向きな取り組みが行われていると感じた。LLRCも前向きな動きであり,最終報告書の早期提出に期待。EUと「ス」は,過去における見解の相違にも拘わらず,建設的な関わり方をして行く余地があると確信した」と言及。

(3)ロシア・中国
●露・中国との首脳会談: 16~18日,「ラ」大統領は露サンクトペテルブルクでの第15回国際経済フォーラムに出席(「ピ」外相同行)し,メドヴェージェフ露大統領,胡錦涛中国国家主席らとそれぞれ会談した。「メ」露大統領は,:「露は「ス」の恒久的平和に向けたあらゆる努力を支援する用意がある」と発言。また胡錦涛国家主席は,「「ス」は「ラ」大統領のリーダーシップの下,政治的に安定し,経済発展は推進されている。中国は「ス」が独立性と国家主権,領土的一体性を守る立場を常に支持する」と発言。
●ジャヤラトナ首相訪中: 5日,「ジャ」首相は,中国雲南省昆明市を訪れ,輸出入博覧祭に出席した他,載乗国(Dai Binguo)中国国務委員と会談。「ジャ」首相は、「国際社会において中国が積極的な役割を果たしている状況を歓迎する」と述べた他、中国による「ス」に対する開発援助、また「ス」の国家主権と領土的一体性の尊重に感謝の意を表明。

(4)インド
●タミル・ナドゥ州議会の決議: 8日,印タミル・ナドゥ州議会は「ス」に関する決議を全会一致で可決し,印中央政府に以下3点を要請。(ア)「ス」への経済制裁,(イ)「ス」の政治指導者・軍指導者を正式に戦犯として宣言し,罰を与えるよう国連へ働きかけること,(ウ)カッチャティーヴ島(注:北部ジャフナと印タミル・ナドゥ州の間に位置する小島。1974年,「ス」に割譲されていた)の印タミル・ナドゥ州への返還。これに対し,9日,「ス」政府は,「「ス」・印両国間の課題について,印の州の決議にいちいち反応するつもりはない。我々は印中央政府とのみ協議を行っていく」と発言。
印政府代表団訪「ス」: 11日,印政府代表団(メノン印国家安全保障顧問,ラオ印外務次官,P.クマール国防次官ら)が訪「ス」し,「ラ」大統領,TNAらと会談。印政府は「ラ」大統領に対し,できるだけ早期の民族問題の政治的解決を期待する旨述べた他,第13次憲法修正を完全に実施するよう強く求めた。また北部住宅支援については,今月中に50戸を建設し,今年中に1,000戸を建設する計画を表明。他方,「ラ」大統領は,警察権限・土地権限を州議会に移譲するつもりはない,と伝達。

(5)日本
●東日本大震災への支援への感謝: 8日,高橋在「ス」日本国大使は,東日本大震災の災害救援として派遣されたスリランカ瓦礫除去チーム15名及びジャヤスーリヤ陸軍司令官他を大使公邸の晩餐会に招聘し,同チームに感謝状を手渡した他,「ラ」大統領に謝意を表明。
小和田ICJ所長訪「ス」: 6月27日~7月1日に亘り,コロンボで第50回アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)年次総会開催,小和田恆国際司法裁判所所長も出席。


スリランカ内政・外交(2011年5月1日-5月31日)

1 内政

(1)民族問題の解決・和解
●政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議:
12日,政府代表団(N.S.デシルバ大臣,G.L.ピーリス外相ほか)は,TNA議員団と直接協議を実施。政府は第二院の設置及び構成を提案したところ,TNA側は,むしろ第13次憲法修正の完全実施に向け権限移譲を進めるべき,と反論。同日,政府は別途EPDP(TNAとはライバル関係にある北部タミル政党)とも会談。会談後,ランブクウェラ報道大臣は記者会見において,「TNAとの協議は続いているが,我々はTNAを唯一のタミル政党の代表と考えている訳ではなく,他のタミル政党とも協議していく」と発言。また政府とTNAは,25日にも再度協議。協議後,スマンディランTNA議員は,「我々は政府に提案した権限移譲案に関する政府側の反応を待っているが,回答がいたずらに延期され続けており,落胆している」と発言。
●過去の教訓・和解委員会(LLRC): 9日,LLRCは6ヶ月の任期延長を政府に要請。翌10日,「ラ」大統領はLLRCの任期延長について,「(自分からLLRCに要請したのではなく,)LLRCが延期を要請してきたので,それを承認したまでである。時間をかけて報告書を仕上げるのは良いこと」と発言。
新たな人権調査機関設置か: 25日,プリヤンタ・ペレーラ「ス」人権委員会(HRC)委員長は,政府はHRCの下に,北・東部州の人権・基本的権利侵害状況の調査機関を新たに設置し,6月にも活動を開始する予定である,と発言。他方,29日,政府軍も,戦闘末期の状況に関する調査委員会を新設し,戦闘末期に前線で戦った政府軍兵士たちからの証言を聴取した旨明らかに。
元LTTE要員の解放: 17~18日,政府は釈迦生誕2600周年にあたるウェサックに際する恩赦として,元LTTE要員850名が追加解放。
緊急事態令: 5日、国会での緊急事態令を巡る討議において,ジャヤラトナ首相は,「緊急事態令は既に最大限緩和されている」と述べ,これ以上の緩和措置については触れず。
北部州議会選挙: 10日,「ラ」大統領は記者団に対し,「北部住民の再定住プロセスと有権者登録が完了すれば,北部州議会選挙を間もなく実施する」と発言。

(2)終戦2周年
政府軍は,5月19日から6月19日までの1ヶ月間を「戦争英雄記念月間」に指定。27日にはコロンボ中心部のゴールフェイス・グリーン広場でラージャパクサ大統領出席の下で戦勝記念セレモニーを実施。当日は雨天となり,昨年に比べ国会議員の出席者は減少したものの,報道では祝勝ムード演出。大統領演説では,民族問題の解決の上で外国からの介入を拒否し自前で問題解決すべき,と主張。

(3)市民による抗議デモ・ストライキ
●全国大学教員によるストライキ: 
5日,全国の大学教員らは,200%の昇給等を求めてストライキ実施。大学幹部の90%以上が辞表を提出し受理され,全国の大学は機能不全に。これに対し,10日,「ラ」大統領は,200%の昇給要求を拒否。また25日,「ラ」大統領は大学教員連盟(FUTA)と直接協議。協議は平行線に終わり,FUTAは今後も抗議行動を続けていくと宣言。こうした中,政府は,全国の大学新入生約1万2千人を対象に全国28箇所の軍施設で3週間に亘るリーダーシップ訓練を開始(23日)。
●労働組合による抗議デモ: 24日,コロンボ国際空港近辺の自由貿易区の私企業労働者たち約2万人が,「非関税地域労働組合(FTZTU)」の指導の下,政府の提案する年金制度法案に反対し抗議活動を実施した。参加者の多くはアパレル産業の労働者であった。治安部隊も出動し,15名逮捕。


(4)最大野党UNPの動向
3日,UNP諮問委員会は,党6役の一ポストであるナショナル・オーガナイザーに,カルナナーヤケUNP国際部長(ウィクラマシンハ総裁の側近の一人)を選出。これに対し,「ウィ」総裁派と対立する党改革派のサジット・プレマダーサUNP議員らは,「カ」議員の選出は違法であるとして地方裁に提訴。

(5)在外LTTE残党の動向
●ネディヤワン氏逮捕: ノルウェー・オスロにおいて,「ノ」在住のLTTE残党の中心的人物の一人であるW.ネディヤワン氏(通称,注:本名はペリンパナヤガム・シワパーラン。在外LTTE残党の中でも最も過激・暴力的な派閥と言われる)が逮捕され,18~19日にオスロ裁判所に出頭。
●国際警察(インターポル)がKPを再指名手配: インターポルは,ラジブ・ガンディー元印首相殺害事件にLTTEが関与していたと証言したKP(通称,注:プラバーカランLTTE指導者死亡後,LTTEの新指導者として名乗りを挙げたが2009年にマレーシアで逮捕)を,再度,指名手配する手続き実施。

2.外交

(1)国連: 専門家パネル報告書の公表後の動向
●国連本部とのコミュニケーション: 5月1日(メーデー),与党連合UPFAはラージャパクサ大統領出席の下,国連専門家パネル報告書に対する抗議を大々的に打ち出した大規模な集会をコロンボ市内で開催。同日,G.L.ピーリス外相は訪問先のオマーンからバン国連事務総長に電話をかけ会談し,「ス」政府の戦後の努力を認めてもらうよう書簡を書く旨伝達。4日,バン国連事務総長はコホナ国連代表部大使と会談し,「「ス」政府には専門家パネル報告書の勧告を真剣に捉えてほしい」と伝達。10日,「ラ」大統領は記者団に対し,「(国連報告書への対応について,)LLRCの報告書が提出されるまで,誰も口出しすべきでない」と発言。20日,ネシルキー国連報道官は,「「ス」政府或いは政府間機関からの要請がない限り,バン事務総長は独自に戦争犯罪調査を開始することはない」と発言。他方,10日,紛争下の文民の保護に関する安保理公開討論において、エイモス人道問題担当国連事務次長は,戦闘末期の一般人の死者数統計について国連報告書で言及された4万人という数字を引用。
●ジュネーブ第17回国連人権理事会(UNHRC): 30日,UNHRC開始。ピライ国連人権高等弁務官は,「国連専門家パネル報告書の勧告を完全に支持する。「ス」戦闘末期の人権状況に関する国際調査メカニズムが設置されるべき」と発言。これに対し,訪寿したサマラシンハ・プランテーション大臣(人権担当)は,「国連は客観性を欠き偏見に満ちた専門家パネル報告書を受理し,マンデートを超えて公表するなど,中立性・独立性を欠いている。政府はLLRC等の国内プロセスを進めており,その結果を待たずして報告書を出すのはおかしい。他方,国連とは今後も建設的な対話を続けていく」と発言。なお,27日,クリストフ・ヘインズ国連特別報告者は,「超法規的殺害,即決・恣意的処刑に関する報告書」を提出。英テレビ局チャンネル4が報道して物議を醸した「ス」政府軍によるタミル市民処刑動画を分析した結果,「真正である」との結論を発表。

(2)西側諸国との関係
●米国:  4日,訪「ス」したブレイク米国務次官補は声明を発表し,戦後復旧・復興の進展状況を具体的に列挙するなど,「ス」政府への配慮を前面に。また国連専門家パネル報告書のように「ス」国内の取り組みである「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」の意義を否定するのではなく,「LLRCは重要な役割を担っている」とし,その活動を支持・慫慂する立場を改めて示唆。これに対し,「ス」政府は国連との対話が重要,との米国の見解に合意。
●EU: 10日,アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表は声明を発し,「「ス」に関する国連報告書の公表は,「ス」の説明責任にとって重要な進歩。EUは,「ス」政府が同報告書における建設的な目的を理解し,国連事務総長と協力していくことを期待する」と発言。また12日,ストラスブールで開催された欧州議会総会で「ス」に関する緊急討議を開催。「ス」政府に対し国連専門家パネル報告書の勧告に基づき措置を取るよう求める修正決議(an ammended resolution)を採択。

(3)アジア諸国との関係
●インド: 16日,G.L.ピーリス外相が訪印し,シン印首相,クリシュナ印外相らとそれぞれ会談。翌17日には共同声明を発表。印政府は「ス」に対し,真の民族和解の実現に向け,IDPの再定住,緊急事態令の早期撤廃,人権状況調査の実施,戦争被災地の平常化,を要求した旨記載。また13日,印タミル・ナドゥ州議会選挙の結果が発表され,ジャヤラリータ元TN州首相率いるAIADMKを中心とする政党連合が圧勝。州首相に返り咲いた「ジャ」AIADMK党首は,「「ス」大統領をジェノサイド及び戦争犯罪の容疑で国際裁判所の裁きにかけるよう,印中央政府に強く働きかける。また経済制裁等,他の手段を講じ,「ス」に外圧をかけていく」と発言。これに対し,「ス」政府は,「「TN州政府が代わっても,印中央政府の政策に変更はないはずである。印・「ス」関係は友好的である」と反応(15日)。
●中国: 23日,「ピ」外相は,中国北京を公式訪問し楊潔チー(注:竹冠に虎の字)中国国務院外交部長らと会談。「ピ」外相は,国連専門家パネル報告書に関する「ス」政府の見解を説明し,支援を要請。これに対し,楊外交部長は,「中国としては「ス」政府・国民が,自らの問題を解決出来ると確信している。中国は「ス」が和解と復興の実現に向け,「ス」と共にある」と発言。
●日本: 3~4日,日本の菊田外務政務官が訪「ス」し,「ラ」大統領,「ピ」外相らと会談。また12日,側嶋外務副報道官はデイリーミラー紙の電子メール・インタビューに応え,「日本は「ス」政府が国連と緊密な協力関係を持ちつつ,国民和解と説明責任の課題に取り組むことを期待。また国内プロセスであるLLRCの活動を通じて,国民和解に向けた具体的な措置を期待する」と発言。
●非同盟諸国: 26日,G.L.ピーリス外相は第16回非同盟諸国外相会議に参加するため,インドネシア,バリ島を訪れ,NAM議長国エジプトのナビル・アル・アラビ外相と会談。
●パキスタン: 3日,ジャヤラトナ首相は,「(ウサマ・ビン・ラーディン氏殺害について,)一国の軍隊が別の主権国家内で勝手に活動し,人を殺害することが何故許されるのか理解できない」と発言。
(了)  


スリランカ内政・外交(2011年4月1日-4月30日)

1 内政

(1)民族問題の解決・和解
●政府と最大タミル政党連合TNAの直接協議: 7日,政府はTNAとの第4回直接協議を開催。両者は戦後の課題への取り組み(北部住民の人道問題,復旧・復興問題)を協議。会談後,セネティラージャTNA議員は「第13次憲法修正では民族問題の解決としては不十分であり,権限移譲を実質的に行える新たな政治メカニズムが必要」と発言。また30日には,第5回直接協議開催。民族問題の政治解決の問題,及び権限移譲に関する基本理念等に関し協議された他,国連報告書に関するTNAの声明に関し激しい議論が行われた模様。本協議後,ウィクラマナヤケ前首相(統治向上・インフラ整備担当上級大臣)は,「「ス」への戦争犯罪容疑をかける報告書を支持するような政党とは最早交渉はできない」として,今後の直接協議には参加しない意向を表明。しかし「ウィ」前首相の辞意にも拘わらず,政府・TNAともに協議を続けていく意向を表明。


●過去の教訓・和解委員会(LLRC): 20日,LLRCは,「5月15日までに最終報告書を完成させ,大統領に提出する予定」と発表。


●緊急事態令緩和へ: 24日,ジャヤラトナ首相は国会において,「政府は法律家や関係政党との協議を進めた上で,緊急事態令を来月にも緩和する」と宣言。


●元LTTE要員の解放: 1日,北部の元LTTE要員社会復帰施設から新たに206名が解放。23日にも480名解放。7日,「ジャ」首相は国会において,「全体の70%にあたる6,000名以上の元LTTE要員が既に解放され,社会復帰を果たした。残る30%についても,本年中にはすべて解放予定」と発言。


●国防費削減へ:ラージャパクサ大統領発言: 6日,「ラ」大統領は,「これからは戦争に関する国家支出を,貧困と苦境の削減に関する研究開発に向けるべき。単に紛争を終わらせるだけでなく,戦争経費を,福祉や開発分野に転換させることも,我々「ス」政府の人道政策の一部。国防費を開発に転換していく決意を世界に示したい」と発言。

(2)地方行政改革
●地方議会選挙法改正案
5日,地方議会法特別法案及び選挙法改正法案が国会に提出され,第二読解まで可決。更に最終読解の段階に達した際,同法案はシンハラ語版のみが提出され,タミル語版が提出されなかったことが問題となり,最終投票は後日延期に。


●コロンボ市議会の機能縮小か
野党UNP筋によると,政府はコロンボ都市圏の5つの地方議会(コロンボ市議会,マウントラヴィニヤ=デヒワラ市議会ほか)の行政機能を,コロンボ市公営社(Colombo Metropolitan City Corporation: CMCC)に移し,CMCCに一括運営させる方向。UNPはこれを違法として,提訴する構え(5日)。

2.外交

(1)国連: 専門家パネル報告書の提出・公表
●公表の経緯: 12日,スリランカ内戦末期の人権問題を扱う国連専門家パネルは,バン国連事務総長に対する助言を目的とした報告書を提出。翌13日,この要旨部分(Executive Summary)が「ス」メディアに漏洩。25日,国連は自ら報告書全文(2011年3月31日付,196頁)を公表。なお,報告書の背景には,英・米国内のタミル・ダイアスポラ団体(「グローバル・タミル・フォーラム(GTF,注:親LTTEのタミル人ダイアスポラのグローバル・ネットワークの一つ)」や「在米タミル人政治行動評議会(USTPAC,注:2009年設立)」)からの強い働きかけがあったとの説も。


●報告書内容: 「ス」政府への配慮が少なく,極めて批判的な内容。「ス」政府とLTTEによる戦争犯罪の可能性を示唆する説が並べられ,国際法違反に値する可能性があるとの解釈。更に,国連との共同声明の内容に反して,人権状況への説明責任が果たされていないとし,特にLLRCは国際基準を満たさないとして意義を否定し,新たに独立した国際的な調査メカニズムを新設すべき,と提案。


●「ス」国内の反応: 「ラ」大統領をはじめ,「ス」政府関係者は本報告書の内容は事実ではないと一同に否定し,国連・欧米側の認識を問題視する姿勢。G.L.ピーリス外相は,「本報告書は事務総長個人への助言のためのもののはずであり,この公開はマンデートを超えた行為。国連とは協力し合う用意ができているが,報告書を受け入れることはできない(21日,記者会見)。」,「ダルスマン報告書(注:パネルの中心メンバーであるダルスマン氏の名前を,揶揄的に付した呼び名)」は,欠陥が多く,情報源にバイアスがかかっており,証拠もない(27日,外務省声明) 」との見解。政府に限らず,最大野党UNPも批判的な見解を示したが,例外的に最大タミル政党連合TNAのみが歓迎声明。報告書提出当初は,祝日(シンハラ・タミル正月:13~14日)であったことから,抗議活動等の騒ぎは起きなかったものの,大統領自身が5月1日のメーデーに国を挙げて抗議活動を行うと宣言。他方,20日,治安当局は,「5月1日の国連に対する抗議集会では,当地国連職員には決して危害を与えさせない」と発言するなど,慎重な姿勢も。総じて,「ス」政府の反応は,表向きは反発・抗議の姿勢を示しつつも,その半面で,緊急事態令の緩和を宣言する等,国連・欧米に配慮し,柔軟な姿勢を見せるようになっているとの見方も。


●国外関係者の反応: 27日,英国・米国はそれぞれ歓迎声明を発出。他方,露・中国が「ス」政府支持を表明。30日,ミハイロフ当地露大使は,「もし国連安保理で「ス」を取り上げようとする決議が出ようものならば,露は反対し,拒否権を行使するだろう」と発言。同日,Hong Lei中国外務省報道官は,「「ス」政府と国民は,内戦の問題に必ずや適切に対応できると信じている」と擁護。

(2)西側諸国との関係
●米国:  ブレイク米国務次官補が,親LTTEのタミル・ダイアスポラ・グループの代表格と言われるGTFのエマニュエル師,及び英BTFのスレンディラン代表らと,国務省内で会談した事実が明らかに(4日付)。また6日,「ブ」次官補は米下院議会下の外交委員会で発言し,「「ス」における人権状況と戦闘末期の状況,民主的な組織の弱体化及び運用状況等,を憂慮している。今後の米と「ス」の協力関係は,「ス」側がどれだけ人権状況の改善を行い,内戦末期の状況についての説明責任を果たすかにかかっている」と発言。また8日,米国務省は,国別報告書を発表し,「ス」の人権状況や親族支配を巡り「ス」政府の対応を批判。


●英国: 3月30日より英国を公式訪問したG.L.ピーリス外相は,フォックス国防大臣,バート外務次官らと会談(ヘーグ外相との会談は実現せず)。その後,「ピ」外相は約1週間に亘り,私的に英国滞在。


●SAARC: 5日,コロンボ市内のホテルで第9回SAARC警察関係者会合が開催。加盟国7カ国が出席(「ス」からはゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官)。同次官は,「南アジア地域の国際法を強制できる機関として,SAARCPOL新設を提案。


●国際人権団体: 9日,ヒューマンライツウォッチ(HRW)は声明を発し,「「ス」政府は,戦闘末期に拘束されたLTTE要員の情報を隠蔽したまま,説明責任を果たしていない。特に政府軍が拘束したはずの20名ほどのLTTE幹部の行方が分からない」と主張。

(3)アジア諸国との関係
●日本: 11日,菅首相は,「ス」が東日本大震災に際して支援をしてくれたことに対する感謝のメッセージを発表。


●インド: 2日,印ムンバイにおいて,クリケット・ワールドカップ決勝戦(スリランカ対インド)が行われ,接戦の末,印が勝利。ラージャパクサ大統領及びナマル・ラージャパクサ議員(大統領の長男)がパテル印大統領と共に観戦。5日,ソニア・ガンディー印コングレス党指導者は,チェンナイでの選挙集会において,「印政府は「ス」政府に対し,タミル人の平等な権利と社会的地位の保証に向け,憲法を改正するよう圧力をかけている」と発言。13日,印タミルナドゥ州議会選挙実施。


●バングラデシュ 18日,バングラデシュを初めて公式訪問した「ラ」大統領は,ハシーナ「バ」首相と会談。両国は,農業,教育,家畜,情報・商業の各分野において,協力関係を強化すべく,5つの覚書に署名。同行したG.L.ピーリス外相はモニ・「バ」外相と会談。

(1)選挙
●全国約7割の地方議会で選挙実施: 17日,全国335の地方議会の内,約7割にあたる234議会(3市議会,30 町議会,201村議会)で選択的に選挙実施(有権者数: 9,813,365名)。与党連合UPFAが234議会中,205議会で勝利し,各紙とも「与党圧勝」と報道(ただし,得票率で見ると,2大政党の勝差は約21ポイントで,昨年の総選挙での勝差とほぼ同じ)。野党各党は完敗ムード。特に最大野党UNPは伸び悩み,第一党となれた議会が僅か9と極めて少ない結果に終わったことから,党内のリーダーシップ問題が再燃。野党JVPは1議席も抑えられず完敗。最大タミル政党連合TNAは,北・東部で健闘。18日午後,ディサナヤケ選管委員長は選挙プロセスに関する声明を発し,「過去の地方選挙と比べると,良い雰囲気の中で投票が行われたが,一部の政党・団体の選挙キャンペーン期間中及び投票日におけるマナーは,国営メディア等の国有資源の濫用も含め,遺憾である」と発表。なお,警察によると,選挙キャンペーン期間中の死亡者数は2名,逮捕者140名,不満件数162件。


●最大野党UNPの動向: 地方選挙での惨敗を受け,UNPは21~23日に亘り党作業部会を開催し,党リーダーシップ改革を巡り協議。その結果,現職のウィクラマシンハ総裁が満場一致で改めて再選。また党副総裁ポストは1名から2名に増員され,現職のカル・ジャヤスーリヤ副総裁の他に,党改革派のサジット・プレマダーサ議員が就任する運びに。3名を中心とした寡頭体制となるも,リーダー間の力関係に大きな変化はないまま。24日,「ラ」大統領は,再選を決めた「ウィ」氏に祝辞を発信。


●選挙管理委員長の交代: 24日,「ラ」大統領は,D.ディサナヤケ選挙管理委員長の同職退任の希望を受け入れ,後任にデシャプリヤ氏を任命。新選管委員長となった「デ」氏は,1983年より選挙管理委員長補佐,2006年より選管副委員長を歴任。

(2)民族問題の解決・和解
●過去の教訓・和解委員会(LLRC): 25~27日,LLRCは追加の公聴会を東部州アンパーラ県等で追加実施。30日,LLRCはこれを持って公聴会を終了し,最終報告書を5月に大統領に提出する旨発表。


●政府と最大タミル政党連合TNAの協議: 18日,最大タミル政党連合TNAは大統領府を訪れ、G.L.ピーリス外相ほか政府幹部らと協議。今後も協議を続け、次なる憲法修正も含めた協議を行っていくことで合意。セナティラージャTNA議員は,TNAとして今後,4月7日及び27日に政府と協議を行う予定であり,7日の会合で高度警戒地域(HSZ)の縮小問題及び元LTTE要員の解放と社会復帰に関する問題を協議し,27日の会合までに権限移譲に関する提案を纏め,提出したい考えを明らかに(26日)。また「セ」議員は,「TNAは北部州への警察権限,土地権限,森林保護の権限の移譲を望んでおり,今後,「ラ」大統領との協議の中で提案していく」と発言。本年2月にクリシュナ印外相が訪「ス」した際,「ク」外相から「ラ」大統領に対して第13次憲法修正を超えた措置を要求すべきであると助言された」と発言。


●政府軍の北部プレゼンス縮小の兆候: 4日,政府軍は過去16年間に亘り政府軍51師団が占拠していたジャフナ市内の「スバシュ・ホテル」を,今般元の所有者に引き渡すと発表。また17日にはジャフナ市内のヴィクトリア・ロードを開放し、ジャフナ市内からすべてのHSZの除去が完了したと発表。


●北部における政府軍による住民登録問題: 最大野党TNAの議員らは,政府軍が北部州ジャフナ県・キリノッチ県の住民らに対し,登録を強要し,彼らの顔写真を撮って回っているとして,これを即時に停止するよう求める基本的人権訴訟を最高裁に提訴。3日,検察も本問題の所在を認め,軍に対しこうした措置を即時停止するよう勧告。

(3)国内NGOへの懐疑論
国内の平和関連NGOに欧米からの経済支援を疑問視する論調高まる。特に,大手政策提言型NGOである「代替政策センター(CPA)」,「国民評議会(NPC)」,トランスパレンシー・インターナショナル(TI)」の3団体には,過去3年間で合計6億ルピー以上の資金が,ノルウェーら欧米から流入した由。こうした報道に続き,犯罪捜査局(CID)は,最大の被供与団体の一つとされる国民評議会(NPC)を含め,海外ドナーから経済支援を受けてきたNGOを対象に資金運用に関する捜査を進めている旨明らかに。本件に関し,26日,「ラ」大統領も記者団に対し,「野党や一部のNGOが真実を歪めて国際社会に伝えるなど「ス」国民の利益に反する行為を行っており,憂慮される。一部のNGOに使途不明な資金がある疑いがかけられていることによる捜査である。説明責任の問題は,NGOにも問われるべき」と発言。

(4)コロンボ市公営社(CMCC)の新設
24日の閣議において,政府はコロンボ市議会をはじめ,コロンボ地域の5つの地方議会による開発プロセスを支援する機関として,「コロンボ市公営社(Colombo Metropolitan City Corporation: CMCC)」の新設を決定。CMCCは大統領によって任命される任期6年の市知事(Governor)によって運営され,コロンボ市議会ほか関係地方議会と並存する由。

2.外交
(1)アジア諸国との関係
●日本: 東日本太平洋沖地震災害の発生を受け,被災者への哀悼の声多数。11日,「ラ」大統領は日本の天皇陛下宛に書簡を発し,地震・津波の被災者への哀悼の意を表明。また「ラ」大統領は高橋邦夫在「ス」日本国大使に架電し,「ス」として津波災害に対する支援を行う用意がある旨伝達。また13日,「ラ」大統領は100万ドル相当の支援を実施したいとの意向を発表。16日以降,「ス」政府要人が当地日本大使館を訪れ,弔問記帳を実施(「ラ」大統領(18日),「ピ」外相(18),ウィクラマシンハ最大野党UNP総裁(16日))。また27日午後6時より,大統領官邸において,「ラ」大統領の主催により,追悼仏教式典が開催され,式典の模様は同日テレビでも全国放映。全国の寺院でも追悼式開催。


●インド: 9日、国会討議において,ジャヤラトナ首相は「LTTE残党のプガレンドランという人物が,印タミルナドゥ州内3カ所で秘密裏にテロリスト養成訓練を行っているとの情報があり,印政治関係者が標的とされる恐れがある」と発言。これに対し,10日,当地印大使館は声明を発し,「ジャ」首相の発言は事実ではないと否定。本件に関し,野党UNP議員は「「ジャ」首相は国会の場で証拠のない話を述べ,印との関係を悪化させた。「ジャ」首相は直ちに辞任すべき」と非難。新聞各紙も「ジャ」首相を批判的な論調。また29日,ウヤンゴダ外務次官補が訪印し,印政府との間で,漁業資源の持続性及び両国の漁民の生活・安全・安全保障に関する指針(roadmap)に合意。


●リビア:  4日,リビアのガダフィ大佐は「ラ」大統領に電話会談を持ちかけ,リビア国内の情勢について説明。これに対し,「ラ」大統領は,一刻も早くリビアに平和がもたらされることを願うと伝えた他,リビア国民の命を守るよう要請。また22日,ピーリス外相は国会において,「「ス」とリビアの関係は親密であり,それ故,リビアを危機に貶めるような空爆は容認し難い。国連安保理決議の目的は市民の命を守ることにあり,今回のような行動はマンデートを逸脱している。リビアでの暴力を停止する必要があり,平和的に解決されることを願う」と発言。


●中国: 17日,北京を訪中したシランティ・ラージャパクサ大統領夫人は文化展で講演を実施。22日,北西部州ノロッチョライにおけるラク・ウィジャヤ火力発電所建設(中国による経済支援)第一工程の完了式典が開催。ただし,本件報道では,中国の存在は前面に出ず。


●ブラジル: 7日,パトリオータ・ブラジル外相が訪「ス」し,「ラ」大統領ら,政府要人と会談。

(2)西側諸国との関係
●国連: 4日にバン国連事務総長に提出予定であった国連専門家パネルの最終報告書は,数週間遅延されるとの報道。本件に関し,8日,サマラシンハ・プランテーション大臣(政府人権担当)は,ジュネーブ国連人権理事会(UNHRC)から帰国後の記者会見の中で,「国連専門家パネルはバン事務総長に報告を行うにあたって,手続き的な問題を抱えているようである。そもそも国連専門家パネルは安保理との相談もなしに設置された経緯があり,国連人権理事会にも提出されなかった」と発言。また26日及び28日,「ラ」大統領は記者団に対し,「国連専門家パネルの報告書は,LLRCのような広い見地に基づく内容にはならず,一つの見解を述べる程度のものとなるだろう。国連パネルが訪「ス」を希望しLLRCで証言したいというなら歓迎するが,調査目的での訪「ス」は許されない」と発言。


●米国:  米上院議会は,「ス」政府に対する戦争犯罪調査を巡り独立した国際調査を求める決議を可決。これに対し,4日,「ス」外務省は声明を発し,「米国は「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」の成果を軽視しすぎている」と反論。8日,ブテニス当地米国大使は大統領府にて「ラ」大統領と会談し,紛争後の開発プロセスへの支援の意志を改めて表明した他,「ス」政府と最大タミル政党連合TNAとの協議の進展,戦後の民族和解プロセスの進展等につき協議。


●EU: 9日,当地EUは声明を発し,「地方議会選挙前に発生している暴力を懸念している。既に死者2名を記録しているほか,負傷者も大勢いる」と非難。26~30日,G.L.ピーリス外相はチェコを公式訪問し,シュワルツェンベルグ・チェコ副首相兼外相らと会談。


●英国: 外交筋によると,G.L.ピーリス外相は4月上旬の訪英を希望しているが,ヘーグ英外相がこれを許可していない模様。


●アムネスティ・インターナショナル(AI): 9日,AIはジュネーブ国連人権理事会(UNHRC)の場で発言し,「「ス」政府はキャンプに拘束中の人々を即時解放すべきであり,国際基準に則り抑圧的な反テロ法を改正すべきである」と主張。


●ICRC: 27日,ICRCが北部州ワウニヤ事務所の活動を終了し,北部から撤退。

 (了) 


スリランカ内政・外交(2011年3月1日-3月31日)

1 内政

(1)選挙
●全国約7割の地方議会で選挙実施: 17日,全国335の地方議会の内,約7割にあたる234議会(3市議会,30 町議会,201村議会)で選択的に選挙実施(有権者数: 9,813,365名)。与党連合UPFAが234議会中,205議会で勝利し,各紙とも「与党圧勝」と報道(ただし,得票率で見ると,2大政党の勝差は約21ポイントで,昨年の総選挙での勝差とほぼ同じ)。野党各党は完敗ムード。特に最大野党UNPは伸び悩み,第一党となれた議会が僅か9と極めて少ない結果に終わったことから,党内のリーダーシップ問題が再燃。野党JVPは1議席も抑えられず完敗。最大タミル政党連合TNAは,北・東部で健闘。18日午後,ディサナヤケ選管委員長は選挙プロセスに関する声明を発し,「過去の地方選挙と比べると,良い雰囲気の中で投票が行われたが,一部の政党・団体の選挙キャンペーン期間中及び投票日におけるマナーは,国営メディア等の国有資源の濫用も含め,遺憾である」と発表。なお,警察によると,選挙キャンペーン期間中の死亡者数は2名,逮捕者140名,不満件数162件。
●最大野党UNPの動向: 地方選挙での惨敗を受け,UNPは21~23日に亘り党作業部会を開催し,党リーダーシップ改革を巡り協議。その結果,現職のウィクラマシンハ総裁が満場一致で改めて再選。また党副総裁ポストは1名から2名に増員され,現職のカル・ジャヤスーリヤ副総裁の他に,党改革派のサジット・プレマダーサ議員が就任する運びに。3名を中心とした寡頭体制となるも,リーダー間の力関係に大きな変化はないまま。24日,「ラ」大統領は,再選を決めた「ウィ」氏に祝辞を発信。
●選挙管理委員長の交代: 24日,「ラ」大統領は,D.ディサナヤケ選挙管理委員長の同職退任の希望を受け入れ,後任にデシャプリヤ氏を任命。新選管委員長となった「デ」氏は,1983年より選挙管理委員長補佐,2006年より選管副委員長を歴任。

(2)民族問題の解決・和解
●過去の教訓・和解委員会(LLRC): 25~27日,LLRCは追加の公聴会を東部州アンパーラ県等で追加実施。30日,LLRCはこれを持って公聴会を終了し,最終報告書を5月に大統領に提出する旨発表。
●政府と最大タミル政党連合TNAの協議: 18日,最大タミル政党連合TNAは大統領府を訪れ、G.L.ピーリス外相ほか政府幹部らと協議。今後も協議を続け、次なる憲法修正も含めた協議を行っていくことで合意。セナティラージャTNA議員は,TNAとして今後,4月7日及び27日に政府と協議を行う予定であり,7日の会合で高度警戒地域(HSZ)の縮小問題及び元LTTE要員の解放と社会復帰に関する問題を協議し,27日の会合までに権限移譲に関する提案を纏め,提出したい考えを明らかに(26日)。また「セ」議員は,「TNAは北部州への警察権限,土地権限,森林保護の権限の移譲を望んでおり,今後,「ラ」大統領との協議の中で提案していく」と発言。本年2月にクリシュナ印外相が訪「ス」した際,「ク」外相から「ラ」大統領に対して第13次憲法修正を超えた措置を要求すべきであると助言された」と発言。
●政府軍の北部プレゼンス縮小の兆候: 4日,政府軍は過去16年間に亘り政府軍51師団が占拠していたジャフナ市内の「スバシュ・ホテル」を,今般元の所有者に引き渡すと発表。また17日にはジャフナ市内のヴィクトリア・ロードを開放し、ジャフナ市内からすべてのHSZの除去が完了したと発表。
●北部における政府軍による住民登録問題: 最大野党TNAの議員らは,政府軍が北部州ジャフナ県・キリノッチ県の住民らに対し,登録を強要し,彼らの顔写真を撮って回っているとして,これを即時に停止するよう求める基本的人権訴訟を最高裁に提訴。3日,検察も本問題の所在を認め,軍に対しこうした措置を即時停止するよう勧告。

(3)国内NGOへの懐疑論
国内の平和関連NGOに欧米からの経済支援を疑問視する論調高まる。特に,大手政策提言型NGOである「代替政策センター(CPA)」,「国民評議会(NPC)」,トランスパレンシー・インターナショナル(TI)」の3団体には,過去3年間で合計6億ルピー以上の資金が,ノルウェーら欧米から流入した由。こうした報道に続き,犯罪捜査局(CID)は,最大の被供与団体の一つとされる国民評議会(NPC)を含め,海外ドナーから経済支援を受けてきたNGOを対象に資金運用に関する捜査を進めている旨明らかに。本件に関し,26日,「ラ」大統領も記者団に対し,「野党や一部のNGOが真実を歪めて国際社会に伝えるなど「ス」国民の利益に反する行為を行っており,憂慮される。一部のNGOに使途不明な資金がある疑いがかけられていることによる捜査である。説明責任の問題は,NGOにも問われるべき」と発言。

(4)コロンボ市公営社(CMCC)の新設
24日の閣議において,政府はコロンボ市議会をはじめ,コロンボ地域の5つの地方議会による開発プロセスを支援する機関として,「コロンボ市公営社(Colombo Metropolitan City Corporation: CMCC)」の新設を決定。CMCCは大統領によって任命される任期6年の市知事(Governor)によって運営され,コロンボ市議会ほか関係地方議会と並存する由。

2.外交
(1)アジア諸国との関係
●日本: 東日本太平洋沖地震災害の発生を受け,被災者への哀悼の声多数。11日,「ラ」大統領は日本の天皇陛下宛に書簡を発し,地震・津波の被災者への哀悼の意を表明。また「ラ」大統領は高橋邦夫在「ス」日本国大使に架電し,「ス」として津波災害に対する支援を行う用意がある旨伝達。また13日,「ラ」大統領は100万ドル相当の支援を実施したいとの意向を発表。16日以降,「ス」政府要人が当地日本大使館を訪れ,弔問記帳を実施(「ラ」大統領(18日),「ピ」外相(18),ウィクラマシンハ最大野党UNP総裁(16日))。また27日午後6時より,大統領官邸において,「ラ」大統領の主催により,追悼仏教式典が開催され,式典の模様は同日テレビでも全国放映。全国の寺院でも追悼式開催。
●インド: 9日、国会討議において,ジャヤラトナ首相は「LTTE残党のプガレンドランという人物が,印タミルナドゥ州内3カ所で秘密裏にテロリスト養成訓練を行っているとの情報があり,印政治関係者が標的とされる恐れがある」と発言。これに対し,10日,当地印大使館は声明を発し,「ジャ」首相の発言は事実ではないと否定。本件に関し,野党UNP議員は「「ジャ」首相は国会の場で証拠のない話を述べ,印との関係を悪化させた。「ジャ」首相は直ちに辞任すべき」と非難。新聞各紙も「ジャ」首相を批判的な論調。また29日,ウヤンゴダ外務次官補が訪印し,印政府との間で,漁業資源の持続性及び両国の漁民の生活・安全・安全保障に関する指針(roadmap)に合意。
●リビア:  4日,リビアのガダフィ大佐は「ラ」大統領に電話会談を持ちかけ,リビア国内の情勢について説明。これに対し,「ラ」大統領は,一刻も早くリビアに平和がもたらされることを願うと伝えた他,リビア国民の命を守るよう要請。また22日,ピーリス外相は国会において,「「ス」とリビアの関係は親密であり,それ故,リビアを危機に貶めるような空爆は容認し難い。国連安保理決議の目的は市民の命を守ることにあり,今回のような行動はマンデートを逸脱している。リビアでの暴力を停止する必要があり,平和的に解決されることを願う」と発言。
●中国: 17日,北京を訪中したシランティ・ラージャパクサ大統領夫人は文化展で講演を実施。22日,北西部州ノロッチョライにおけるラク・ウィジャヤ火力発電所建設(中国による経済支援)第一工程の完了式典が開催。ただし,本件報道では,中国の存在は前面に出ず。
●ブラジル: 7日,パトリオータ・ブラジル外相が訪「ス」し,「ラ」大統領ら,政府要人と会談。

(2)西側諸国との関係
●国連: 4日にバン国連事務総長に提出予定であった国連専門家パネルの最終報告書は,数週間遅延されるとの報道。本件に関し,8日,サマラシンハ・プランテーション大臣(政府人権担当)は,ジュネーブ国連人権理事会(UNHRC)から帰国後の記者会見の中で,「国連専門家パネルはバン事務総長に報告を行うにあたって,手続き的な問題を抱えているようである。そもそも国連専門家パネルは安保理との相談もなしに設置された経緯があり,国連人権理事会にも提出されなかった」と発言。また26日及び28日,「ラ」大統領は記者団に対し,「国連専門家パネルの報告書は,LLRCのような広い見地に基づく内容にはならず,一つの見解を述べる程度のものとなるだろう。国連パネルが訪「ス」を希望しLLRCで証言したいというなら歓迎するが,調査目的での訪「ス」は許されない」と発言。
●米国:  米上院議会は,「ス」政府に対する戦争犯罪調査を巡り独立した国際調査を求める決議を可決。これに対し,4日,「ス」外務省は声明を発し,「米国は「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」の成果を軽視しすぎている」と反論。8日,ブテニス当地米国大使は大統領府にて「ラ」大統領と会談し,紛争後の開発プロセスへの支援の意志を改めて表明した他,「ス」政府と最大タミル政党連合TNAとの協議の進展,戦後の民族和解プロセスの進展等につき協議。
●EU: 9日,当地EUは声明を発し,「地方議会選挙前に発生している暴力を懸念している。既に死者2名を記録しているほか,負傷者も大勢いる」と非難。26~30日,G.L.ピーリス外相はチェコを公式訪問し,シュワルツェンベルグ・チェコ副首相兼外相らと会談。
●英国: 外交筋によると,G.L.ピーリス外相は4月上旬の訪英を希望しているが,ヘーグ英外相がこれを許可していない模様。
●アムネスティ・インターナショナル(AI): 9日,AIはジュネーブ国連人権理事会(UNHRC)の場で発言し,「「ス」政府はキャンプに拘束中の人々を即時解放すべきであり,国際基準に則り抑圧的な反テロ法を改正すべきである」と主張。
●ICRC: 27日,ICRCが北部州ワウニヤ事務所の活動を終了し,北部から撤退。


スリランカ内政・外交(2011年2月1日-2月28日)

1 内政

(1)大雨洪水災害第2波
2月2日から全国的に降り続いた大雨の影響で,東部,北中央州・北部州を中心に洪水災害が拡大し,124万人以上に影響。3日午前中までの一日間の降雨量は,東部州各県で160mm~187mm,北中央州ポロンナルワ県で161.4mmを記録。全国の被害状況は,死者11名,全壊家屋1,161件,半壊家屋8,412件,一時避難者250,501名,一時避難所653カ所,決壊貯水池約500カ所,田畑の被害約30万エーカーとなり,被害は特に東部州・北中央州・北部州に集中。政府は,大雨洪水災害の被害総額は約330億ルピーと見積もり,本額を大雨洪水災害に対する支援に割り当てる計画を発表(12日)。他方,国連も,「大雨洪水災害第二波は,1月の第一波よりも大きな被害をもたらした」との見解発表(7日)。

(2)民族問題の解決・和解
●ラージャパクサ大統領発言: 4日,「ラ」大統領はカタラガマで開催された独立記念式典で演説。何よりも経済開発に邁進するとの姿勢を強調するも,民族問題の政治的解決・権限移譲には全く触れず。噂される「ラ」大統領の健康問題について初めて触れ,自ら健康である旨アピール。


●政府と最大タミル政党連合TNAの協議: 3日,最大野党タミル政党連合TNAは政府幹部と会談。TNA側は「憲法修正や民族和解等の課題について,今後とも政府と協議していくことが合意された」との見解(3日)。他方,「ラ」大統領は3月1日実施予定の政府とTNAとの再協議について,「LTTEが戦闘中追求してきたような(民族問題の)解決方法は決して認めない,解決方法についての時間的期限は設けない,現在は北・東部地域住民への支援や開発が何よりも重要」と発言(22日)。


元LTTE要員社会復帰問題: 政府は「過去の教訓・和解委員会(LLRC)」からの勧告を受け,LTTE元兵士等関係者の拘留について協議する為の検事副総長等4名から成る特別委員会を設置。同委員会はブーサのLTTE関係者拘留キャンプの視察を行い,今後,彼等に対する然るべき措置を講じていく予定(21日付)。


北部州のハイセキュリティゾーン(HSZ)問題: 政府情報局は声明を発し、政府は目下、戦争被災地における「土地返還制度」の立ち上げを検討中であり、LLRCからの最終勧告を待って,実施に移す方向である旨明らかにした。また同声明では,HSZ問題にも触れ,「HSZに指定されている土地の解放を進めている,既に2,500ha(2,392世帯)の土地が返還された,パライ地区では,HSZ周辺の土地が元の所有者に返還された」と述べた(20日付)。


タミルダイアスポラとの和解: 2月上旬,独・豪・米・加・英からのタミル人ダイアスポラの代表団が訪「ス」し,ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官と会談。

(3)地方議会選挙は一部延期
20日,ディサナイケ選挙管理委員長は,政府与党を含む各政党より立候補受付プロセスにつき異議が申し立てられ,裁判で係争中となっている60の選挙区につき,3月17日に選挙を行わず,延期する方向である旨明らかに。また24日,裁判所は,政府与党UPFAからの異議申し立てを受けて,選管に対し裁判結果が明らかになるまでは同地域の地方選挙を実施しないようにすべきとの命令を発出。


(4)印漁民拿捕問題
15日,北部ジャフナの海域において,「ス」領海内で印漁民たちが漁を行っているとして,腹を立てた「ス」漁民たちが,108名の印漁民を乗せた複数の漁船を一挙に拿捕し,「ス」警察に引き渡す事案が発生(なお16日にも更に印漁民26名を拿捕)。現場には,「ス」海軍の船舶も居合わせていたが状況を傍観していた由。本事件を巡り,16日,カニーモジ印タミルナドゥ州DMK議員(注:カルナーニディ印TN州知事の娘)は,事件には「ス」海軍が関与していると非難すると共に印漁民の釈放を求め,1,000名の群衆とともに在チェンナイ「ス」領事館に向け抗議の行進を行おうとしたところ,チェンナイ警察に逮捕された。これに続き,16日,シン印首相は,「我々は非常に深刻な問題と捉え,「ス」政府側と協議をしている。隣国であっても,このような行為は容認できない」と発言。また17日,クリシュナ印外相はG.L.ピーリス外相と電話会談を行い,印漁民釈放に向け「ス」政府が全力を尽くすことを願う,との希望を伝達。18日,「ス」当局は,印・「ス」海峡で「ス」漁民らにより拿捕された印漁民136名を釈放。印漁民らは,「ス」海軍の護衛の下,印海上保安警備隊に引き渡された。21日,ジャフナのインド領事館前において,「ス」漁民のグループが,インド漁民の密漁に反対する抗議の座り込みを実施。22日,ラージャパクサ大統領は,当地メディア関係者との会談の際,遅滞なくインドと「ス」との間で懸案となっている漁民問題を解決する為に,インドと「ス」との間の共同委員会(2006年に設立)を再活性化させ,本件を平和裡に解決すると発言。

(5)クリケット・ワールドカップ
17日,バングラデシュでクリケット・ワールドカップの開会式開催(インド,スリランカ,バングラデシュの共催)。20日には,本ワールドカップに合わせて建設された南部ハンバントタの「マヒンダ・ラージャパクサ・スタジアム」がお披露目され,初試合開催。

(6)サーラット・フォンセーカDNA指導者に関する動向
8日,「フォ」前国防参謀長(現野党DNA指導者)の逮捕・拘留から1周年。「フォ」が拘留されているウェリカダ拘置所の前では,アノマ・フォンセーカ夫人,アマラシンハJVP指導者ら「フォ」支持者による座り込みの抗議活動実施。

2.外交
(1)アジア諸国との関係
●インド: 12日,メイラ・クマール印ローク・サバー(下院議会)議長が訪「ス」し,コロンボで開催された第3回英連邦議員連盟アジア地域会議に出席した他,「ラ」大統領ら政府要人と会談.。22日,故プラバーカランLTTE指導者の母親の葬儀に参加しようとしたティルマバラン・タミルナドゥ州議会議員他3名のインド人が,コロンボ国際空港において,入国管理局により強制退去処分に。24日,シン印首相は,印国会において,「ス」との間の漁民問題に触れながら,「ス」政府に対し,「ス」で生活するマイノリティであるタミル人に対し快適な環境を提供する義務があると発言。


●パキスタン: 13日,ミルザ・パキスタン国会議長が訪「ス」し,「ラ」大統領を表敬訪問。


バングラデシュ: 23日,アブドゥル・ムディーン・バングラデシュ陸軍司令官が訪「ス」。


●中国: 24日,ランブクウェラ報道大臣は閣議後の記者会見において,「「ス」は間もなく中国から5000万元相当の経済・技術協力の無償資金援助を得られる予定である」と発表。


●韓国: 24日,パク・ユンジュン韓国大統領特使が訪「ス」し,「ピ」外相と会談した。「ピ」外相は,「韓国の代表団は「ス」への投資増大に高い関心を示してくれた」と発言。


●カタール: 16日,カタールを訪問した「ピ」外相はアール・サーニ・カタール国首長と会談。


●SAARC: 13日,ブータンを訪問した「ピ」外相は第13回SAARC閣僚会議に出席。

(2)西側諸国との関係
●国連: 23日,ジャヤシンハ外務次官,モハン・ピーリス検事総長,コホナ国連大使らは,「バ」事務総長を表敬し,最近の「ス」情勢,特に,国民和解に向けた動きとしてLLRCの中間勧告を受けて,「ス」政府としての取組みにつき説明。他方,27日,第16回国連人権理事会(UNHRC)年次総会(2月28日~3月25日)に出席するためジュネーブを訪問したサマラシンハ・プランテーション大臣(政府人権担当)は,ピライ国連人権高等弁務官と会談し,「ス」の人権状況に関するブリーフィングを実施。翌28日には,「サ」大臣はUNHRC年次総会開会式において 「緊急事態令の必要性如何については,「ス」政府が然るべきタイミングでどのようにするか決定する(注:暗に将来的には緊急事態令を廃止することを暗示)。IDPについては再定住は進み,キャンプの残留者は1万2,000名となった。タミル政党との対話も進展している他,タミル政党らは新たな政党フォーラムを結成するなどして課題に取り組んでいる。LLRCからの勧告を受け,政府は最近,676名の元LTTE要員を解放した他,ハイセキュリティゾーンも縮小化され,元の土地所有者に返還中」と発言。


●EU: 23日,EU議会は包括的な検討を実施した結果,LTTEを外国テロ組織として再び認定し,関係団体の活動禁止,資産凍結等の措置を継続する方針を決定。25日,訪「ス」したジャン・ランバートEU議員を中心とするEU議員団は,「今回の訪「ス」は戦争犯罪調査とは何ら関係ない。またEU内でのLTTE取り締まり問題とも何ら関係ない。「ス」政府の話では,最早EUからの特恵関税措置GSPプラスの供与如何については既に結論が出ている話であり,今後新たに再申請する意志はないとのことであった。政府の北部州開発の努力には感銘を受けたが,開発は住民参加を規範として行われる必要がある。政治的課題は未解決のままであるが,TNAとの対話の開始は歓迎している」と発言。


●英国:  「タミル人のための全政党議員連盟(APPGT)」に所属する41名の英国会議員は,キャメロン英首相宛に書簡を発し,「ス」戦争犯罪への国際的な独立調査を要求。本書簡では,「「ス」が戦争犯罪を犯した可能性が高い。米国務省,EC,ICG,国連も確かな証拠を集めており,我々英国会議員にとっても重要な問題」と言及。21日,バート英外務・連邦省南アジア担当次官が訪「ス」(~22日)。

  (了)  


スリランカ内政・外交(2011年1月1日-1月31日)

1 内政

(1)ラージャパクサ大統領発言・動向
●年頭所信表明(1日): 「国のレベルを上げることこそが最大の課題であり,開発に向け,政府として大がかりな対策を取っていく。経済的恩恵を平等な分配を通じ,「ス」社会が失ってきたものを早期に取り戻していく。母国を統一し,発展させていく上で,国家の統一(national unity)こそが鍵である。」
●外国メディア駐在記者らと会談(14日): 「民族問題の政治的解決については,全ての政党からの提案を聞いた上でコンセンサスを取っていく方針である。」

(2)東部州を中心とした大雨洪水災害
●被害状況: 東部,中央州,北中央州を中心とした大雨洪水災害により,108万人以上に影響。全国の被害状況は,死者23名,負傷者36名,全壊家屋2680件,半壊家屋16,274件,一時避難者325,000人,決壊貯水池400箇所,水没した田畑40万エーカー。被害は特に東部州に集中(東部州バティカロア県では,過去42日間だけでほぼ年間降雨量と等しい降雨量(1,602mm)を記録)。13日,アマラウェラ災害管理大臣は,「2004年の津波以来,最大の自然災害となった」と発言。深刻な食糧不足に陥る恐れを指摘する声も。スリランカ政府は,支援対策局を設置し,1億4,000万ルピーの緊急支援予算に充当。 政府軍は17機のヘリコプターを動員して食糧・医療等の支援物資を空輸。15日には,バジル・ラージャパクサ経済開発大臣が東部州バティカロア県を訪問し,被害状況を視察。なお,大雨は16日までに概ね収まり,最大時で39万人を記録した一時避難者も帰宅を始め, 17日までに5万人まで減少。
●国際社会による支援: WFP,印,カナダ(24万米ドル相当),日本(200万円相当)がいち早く緊急支援を実施。続いて,米(30万米ドル相当), EU(200万ポンド相当),ノルウェー(1億6,500万ルピー相当),英,独,中国(152万米ドル相当)も支援表明。また19日には,国連が5,100万米ドル相当の支援を国際社会に求めるフラッシュ・アピールを発表。なお同日,ブラッグ国連事務次長補佐(人道問題担当)が来「ス」し,東部州バティカロア県を訪れて大雨洪水の被害状況を視察。

(3)民族問題・解決
●過去の教訓・和解委員会(LLRC): 27日,LLRC事務局は,一般国民からのレポートの受け取り及び公聴会は1月末日をもって終了する意向を表明。LLRCは5月の最終報告書の提出に向け,これより3ヶ月間,報告書の取り纏め作業に移る由。
●白旗事件を巡る裁判
25日,コロンボ高等裁判所は,フォンセーカ前国防参謀長(現:野党DNA指導者)の白旗発言疑惑(注:大統領選挙戦期間中だった昨年12月に「フォ」氏が、ゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官がLTTE指導部が白旗を持って降伏してきたにも拘わらず、これを全て殺害するよう命じたと当地英字紙サンデーリーダー紙に述べていた件)に関して,ゴタバヤ・「ラ」国防次官に対する証人喚問を実施。ゴタバヤ・「ラ」国防次官は,「「フォ」氏の発言は全く真実ではなく,意図的な欺瞞である」と述べ,事実関係を否定。本証人喚問には「フォ」氏自身も傍聴のため出席。
●北部IDP,元LTTE要員,在印難民の状況: 5日,政府発表によると,北部IDPキャンプの残留者数は2万名を切り,元LTTE要員社会復帰センターの滞在者も11,500名の内,既に5,500名が解放済み。また在印タミル人難民の状況について,6日,当地UNHCR代表は,「「ス」への自発的帰還者数は,2009年843名,2010年2,054名と増加中であり,殆どが印タミル・ナドゥ州からの帰還者であった」と公表。
●北部州の治安悪化か: 北部州で殺人・失踪・誘拐事件の報告相次ぐ。4日,デーワーナンダ伝統産業・小規模企業振興大臣(注:北部ジャフナを拠点とする与党タミル政党EPDPの指導者)は国会において,「北部州では犯罪の波が押し寄せ,人々の間で恐怖意識が拡がっている」と発言。これに対し,政府軍は「デ」大臣の発言は事実ではないと否定すると共に,これらは一般犯罪であると主張(5日,M.ハトゥルシンハ・ジャフナ県政府軍司令官発言)。他方,市民団体「我らスリランカ人同盟」によれば,殺害された者の多くが政府批判を行った人間であり,例えば,昨年12月26日のジャフナ県教育局副局長のシワリンガム氏は,シンハラ語での国歌斉唱規則化について公に政府批判を行ったことに関連して殺害された由。犯罪多発地域は,治安当局の管轄下にあるが,警察は事件を一向に捜査しようとしない」と政府を批判。本件について,20日,国会でもウィクラマシンハ最大野党UNP総裁が取り上げ、「北部ジャフナでは最近,僅か8日間の間で10名もの殺害事件が発生したとの報告がある」と政府側に質問。一連の犯行が誰の仕業であるかを巡り,EPDP説,政府関係者説,LTTE残党説が入り乱れる状態。なお,29日,北部州ジャフナ県ポイント・ペドロにおいて,与党EPDPの活動家1名が路上で死亡。
●北部州インフラ開発: 17日,北部州ジャフナ半島と南部を結ぶA32号線に位置するサングピディ橋(全長288m,建築費10億ルピー,英国の低利借款)が完成し,「ラ」大統領が式典に出席。

(4)地方議会解散・3月に全国一斉に選挙実施へ
6日,政府は北部州・東部州を含め全国各地の地方議会の解散を宣言。選挙管理委員会は解散された地方議会については,3月17日に一斉に選挙を実施すると発表。全国335件中301で実施される(市議会4(総数23),町議会39(総数41),村議会258(総数271)。なお今次北部州で行われる町議会・村議会選挙は,1987年以来24年ぶりとなる。政府は今回解散しなかった残る地方議会の任期を3ヶ月間延長する旨発表。本年4月以降には解散され,選挙が実施される見込み。選挙の最大の焦点は,現与党の勢力状況如何。

(5)野党の動向
●最大タミル政党連合TNAの動向
10日,TNA議員団はタミル民族問題の政治的解決を巡り,政府幹部(G.L.ピーリス外相,ウィクラマナヤケ統治向上・インフラ整備担当上級大臣ら)と協議。またTNAは次期地方選挙に向け, TULF,PLOTE,EPRLFスレシュ派,TNLAは,最大タミル政党連合TNAの下で選挙戦に臨む方針を決定。
●サーラット・フォンセーカDNA指導者に関する動向
6日,JVPは記者会見を開き,地方議会選挙に向け,JVPは最早DNA(注:サーラット・フォンセーカ前国防参謀長率いる野党・野党連合)とは同盟は組まないことを決定した旨明らかに。また6日,T.アレスDNA議員も,DNAとしては次期地方議会選挙に出馬しない考えを表明。これにより,拘束中の「フォ」にとっては厳しい痛手となり,DNAと「フォ」の政治生命は,最早「死に体」も同然との見方も。

2.外交
(1)アジア諸国との関係
●インド: 12日,印漁師3人を乗せた漁船が印南部を航行中銃撃を受け,1人が死亡。「ス」海軍による攻撃との見方も。16日,P.V.ナイーク印空軍司令官が訪「ス」。また30日には,ラオ印外務次官が訪「ス」し,印・「ス」間で「ス」海軍による印漁民殺害を防止するための覚書を「ス」側に提案。
●パキスタン: 10日,チャマル・ラージャパクサ国会議長を中心とした「ス」政府代表団がパキスタンを訪問し,ザルダリ「パ」大統領と会談。16日には,F.H.ナエーク上院議長と会談。19日,A.カヤーニ「パ」陸軍司令官が3日間「ス」に滞在。
●中国: 25日の閣議において,コロンボ中心部のゴールフェース・グリーンを「シャングリラ・ホテル(香港)」及び某中国ホテル企業の2社に売却する旨決定。

(2)西側諸国との関係
●米国: 18日,私的に訪「ス」したアーミテージ元米国務次官補が「ラ」大統領を表敬訪問。19日,「ラ」大統領はG.L.ピーリス外相とともに米国に出発。大統領府によると,今回の訪問は私的なもの。しかし,目的があまりにも不透明であるため,「私的」以上の意図があるのではないか等,関係者間で様々な憶測も。なお「ラ」大統領の訪米を受けて,20日,アムネスティ・インターナショナルは声明を発し,戦争犯罪容疑者である「ラ」大統領を米国滞在中に逮捕・捜査すべきと主張。また,ブルース・フェイン米元検事副総長はタミル人ダイアスポラらとともに,「ラ」大統領が違法殺人を行ったとして3,000万米ドルの損害賠償を求めワシントン地方裁に提訴(29日付)。
●EU: 10日,EU人権小委員会において,「ス」の戦争犯罪容疑及び戦後の人権状況展に関する討議実施。本討議は,昨年12月6日に国際NGO2団体(「国際危機管理団体(ICG)」,及び「恒久的人民裁判(Permanent People's Tribunal)」)による報告書提出を受けて行われたもの。
●ノルウェー: ソルハイム「ノ」環境・国際開発大臣(元「ス」和平特使)は,「「ノ」にはもはや特別な役割はないが,在外コミュニティも含め「ス」の人々と政府の対話を進める上で建設的な役割が果たせる」と発言。これに対し,某「ス」政府幹部は「「ノ」には最早何ら役割はなく,タミル人ダイアスポラとも直接交渉する」と発言(27日付)。
●国連: 14日,ネシルキー国連報道官は「「ス」戦争犯罪に関する国連専門家パネルは当初の活動任期(2011年1月15日終了)を2月末日まで延長する」と発表。17日,ブラッグ国連事務次長補(人道問題担当)・副緊急援助調整官が訪「ス」。大雨洪水災害現場を視察した他,北部州人道状況も視察。
●カナダの動向: カナダ連邦裁判所は,加ケベック州を拠点とする「世界タミル運動(World Tamil Movement: WTM)」に対し,「WTMの所有財産はテロリストによって所有・管理されている」として,没収するとの判決。これにより1986年から活動を続けてきたWTMは,事実上終了に(23日付)。

(3)ウィキリークス情報漏洩問題
10日~14日付当地英字紙は,当地米国大使館からウィキリークスに漏洩した電報に関し報道。内容は,米国への直接的な批判は少なく,むしろ和平プロセスに関しノルウェーを中心とした西側諸国・共同議長国(ただし「日本は除く」とされる傾向顕著)の外交姿勢への非難・暴露(例:ノルウェーがLTTEにラジオ機器を供与した過去に対する批判,西側諸国が故プラバーカランLTTE指導者を戦争に引き戻したとする話等)を指向。
(了)  

 

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